さつまいもの蜜煮

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さつまいもレシピ第二弾はさつまいもの蜜煮です。いわゆる普通の煮物とはちょっと違い、ひと手間かけた和食の技術を紹介します。ただ煮汁で煮ただけの煮物も家庭味があって良いのですが、やはりここぞという場面では見栄えも良く格調高く仕上げる手順も知っておくと良いと思います。

一枚目の写真でわかるとおり、ツヤと照りが仕上げのポイントで、美しい蜜の光沢がさつまいもの風味を引き出し、口中で幸せと満足感が大きく広がります。また素朴な中に自然の美を感じる黄金の色あいにも先人が工夫した伝統のひと手間が隠されています。

1 さつまいも200gの皮をたわしでこすり、汚れた部分や凹凸などを落とします。皮自体はあまり削らずに残すように気をつけます。

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2 厚さ3センチ程度の輪切にし、フチを面取りします。水に5分ほど浸けてアク抜きします。

さつまいもの蜜煮 さつまいもの蜜煮

3 2で浸けたアク抜き水は捨てて、米のとぎ汁を鍋のさつまいもが浸るくらいに注ぎます。なるべく研ぎはじめ最初の、濃くて白いとぎ汁を使います。

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4 とぎ汁で研ぐことでアク抜き効果と色を良くする効果があります。泡が浮いてくるのでこまめに取り除きます。この泡がアクを吸い取ってくれているのです。

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5 色つけのために「くちなしの実」を使います。

くちなしの実は古来繊維や料理の色付けとして重宝され、漢方薬としても用いられています。

香りの強い花が咲きますが、花言葉は「幸せ」で、縁起のよい植物とされる一方、古来、ヘビのことを朽ちた縄の姿にたとえてクチナワと呼びますが(クチナワで変換すると蛇が出ます)クチナワ=朽ち縄=蛇さえもよりつかないほど誰も見向きもしない果物=クチナワさえ食べない実=クチナシと呼ぶようになった、とされるくらい実は食用には向きません。

ちなみに今何かと注目が集まっている将棋ですが、本式の対戦で用いる立派な将棋盤の足は、くちなしの実をかたどっているといわれます。将棋の対戦を見物すると、「あーこっちの方がいいだろ!」「それじゃだめだねー」などとおせっかいなアドバイスをしたくなるものですが、「クチナシ」=「口無し」=「部外者は黙って見てなさい」という意味なのだそうです。小学生のころ将棋が流行った際、ルールや基本が書かれた本に豆知識として書いてあったのを今も憶えています。当時は薄い板に自分で線を書いて使っていたため分厚い板の足付き盤にあこがれたものです。ちょっと脱線すると、その足がついている裏面の中央にはヘソとよばれる穴のようなへこみが刻んであり、これは見物者がアドバイスや口出しをしたら首を切り落とされて盤の裏に晒される掟があり、その血をためるための「血だまり」の意味がある、ようなことがその本に書いてありました。まあ本当かどうかわかりませんが・・・それくらい、勝負に口出ししたり、教えたりしたらいけない、というルールは小学生ながらに良く理解できました。

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くちなしの実1個または1/2個をふきんまたはガーゼに包みます。

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6 さきほどのとぎ汁を捨て、鍋に昆布だし200ml、酒大さじ2、みりん大さじ1、砂糖小さじ1を加えて加熱し、沸騰したらコトコトするくらいの弱火に落としてさきほどのクチナシの実を浮かべて15分ほど煮ます。火加減が強いと皮と実の境目が剥がれたり、煮崩れたりしやすくなるので火加減に注意します。また煮汁がさつまいもにかぶるように、分量にあったサイズの鍋を使います。

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砂糖はできればザラメ砂糖がおすすめです。

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煮ているうちにクチナシの実からきれいな黄金色の色素が煮汁にしみ出てきます。なかなかしみ出てこない場合は箸でつついたりもんだりして加圧すると良いでしょう。

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このような自然由来のきれいな黄金色の煮汁になります。この煮汁によって、きれいな色に染めることができます。

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串がスッと刺さる程度の柔らかさを確認し、火を止めて一旦冷めるまで待ち、色を馴染ませます。クチナシの実は入れたままです。この時点で煮汁が鍋の1/3くらいになっていれば、冷える過程でさつまいもが吸水してさらに煮汁が減ってちょうどよい残量になります。

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7 冷めるとこのように煮汁の色が中まで浸みます。そして煮汁をさつまいもが吸水し、鍋の底に指の太さくらいの量まで減っています。

再度加熱し、仕上げにみりん大さじ2としょうゆ小さじ1、塩少々を加えて中火で短時間煮詰め、煮汁を蜜状に調えます。みりんはみりん風ではなく本みりんを使うか、あるいは水飴でも良いでしょう。しょうゆは香りをつけ風味を良くするためのものですが、せっかくの色が少し犠牲になってしまうので、色合いを重視したい場合は加えずにその分塩を増やしても良いです。

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煮汁が少量になっているため、鍋を傾かせて全体に煮汁が行き渡るように転がしながら加熱します。シンプルな料理だけに奥が深く、色合い良く、また煮崩れず、かつ口中で柔らかくほぐれる絶妙のホクホク感に仕上げるには経験が必要です。何度か試してタイミングや加減をつかんでください。

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