梅干しに焼酎を使うかどうか

読者さんから質問メールが届きました。
主旨を要約すると以下の通りです。

「梅干し漬けのブログ記事みました。私が持っている梅干し作りの本には、梅を漬ける際に、塩の他に焼酎を加えるように書かれています。今はもう高齢で作っていない母に、昔はどうしていたか聞いてみたところ、やはり焼酎を使っていたと言っています。ご住職さんの方法では焼酎を使っていないようですが、使わなくても良いのでしょうか?それとも書き忘れや、隠し味的な目的で内緒なのでしょうか。もしよろしければ、焼酎を入れない場合と入れる場合でどう違うのか、何のために入れるのかを教えていただけるとありがたいです」(関西方面・Sさん)

他の方にも役立つ質問だと思いますので、Sさんの許可を得た上で公開回答致します。

確かにいろいろな漬物の本を見ると、焼酎を使うように書かれているものがたくさんあります。
特に昔は焼酎を使うのが定番だったようで、Sさんのお母さんのやり方は伝統的な方法だといっていいでしょう。
ただ、内緒とか書き忘れではなく、私は焼酎は使いません。

もう20年くらい前に、梅干しを自分で漬けはじめた頃、昔のやり方をまねて焼酎を使ったことがありました。
当たり前のことですが焼酎を使うと仕上がった梅干しに「焼酎の味」がついてしまうんですよね。
私にとってはこの「焼酎の味」が梅干しには邪魔でした。焼酎を加えない梅干しの方が雑味がなく、梅の純粋な味だけを味わうことができ、精進料理に使いやすいと思うのです。

漬けてからある程度時間が経てば、焼酎のアルコール分は無くなるのだと思いますが、それでも精進料理に使う際には、運転する方や子供さんも食べるわけですから少しでもアルコール分が残っていないか心配になります。

もちろん人それぞれですから、焼酎を使った梅が好きな人もいるでしょう。焼酎を使った梅干しの方がコクがあって良いという人もいますから、それこそ人それぞれです。
結局は自分の好みで決めて良いと思います。自由が利くのが手作りの良さですから。

ところで、どうして焼酎を使うかというと第一の理由は「殺菌」です。
梅干し漬けで失敗する最も大きな理由は、漬かる前に「カビ」が生えてしまうことです。
手順のポイントごとに、焼酎を使って消毒殺菌することでカビの原因となる悪い菌を減らすのです。
梅を洗ったあとに焼酎を霧吹きでふいて表面の菌を殺し、また使う容器なども同様に焼酎で拭いて殺菌します。

第二の理由は、「早く梅酢が上がるようにするため」です。
梅干し漬けの失敗の第二は、梅と塩を混ぜてから梅酢がなかなか染み出てこないと梅が傷んでしまいます。できるだけ早く、できれば2日くらいで梅酢がたっぷり出て梅全体が漬かるのが理想です。
ところが梅に塩をまぶして重しを載せる際、乾いた梅にそのまま塩をふっても、サラサラと下部に塩が落ちてしまい、中段~上段の梅には塩がまぶされていない状態になりやすく、それでは梅酢が上がるのが遅くなってしまいます。最悪の場合梅が傷むだけでなくカビが生えて全滅してしまいます。
そこで梅に焼酎をふりかけて湿らせ(ると同時に殺菌し)塩を加えれば塩が梅全体にからんで、下に落ちずに保持されるので、下段だけでなく中段上段からも同時に梅から梅酢が染み出てくるため、早く梅酢に漬かることができるのです。

ただ問題なのは、殺菌するためにはアルコール濃度が濃い35度の焼酎を使う必要があります。薄い焼酎だとそれ自体の水分がカビの原因になる可能性があるからです。
そのため、どうしても35度の焼酎がやはり梅干しの味に影響を与えてしまうように私は感じるのです。

私は「殺菌」については、熱湯消毒と、食品にも使えるアルコールスプレーを使って器具に味が残らないように殺菌しています。35度の焼酎をスプレーして殺菌する方法もたまに行いますし、過去にブログで紹介したこともありますが、その場合スプレーしてしばらくしたらクッキングペーパーで拭き取って、焼酎の味が残らないようにしています。
また湿気がカビの原因になるため、梅を漬けはじめたら梅酢が上がるまでは台所に除湿器をかけて湿気を下げるようにしてクリアーしています。
また「梅酢を早く上げる」ためにはよく熟した梅を使い、重しを重めにし、梅にからみやすいあら塩を使うようにしています。
この2点でだいぶ焼酎を使わなくてもなんとかなっています。

ただ梅干し作りに慣れていない初心者の場合は、味がどうこうではなくまずは失敗しないことが第一です。また、1~2kgだけのように、ごく少量だけを漬けるような場合も失敗しやすいため、焼酎を使って殺菌しつつ作業を進める事をお薦めします。

以上が私流の梅干し漬けです。ご参考になれば幸いです。
もし他にも疑問点等あればどうぞ。

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