漆器のメンテナンス~湯通し

漆器の湯通し
精進料理には欠かせない漆器、うるしのうつわをメンテナンスしました。

漆器は格調高く、プラスチックにはない味わいの良さがあるのですが、その分取り扱いには注意が必要です。プラスチックのようにほったらかしでも良いというわけにはいきません。

長期間使わない漆器は和紙や新聞紙で包んで保管するのが基本です。たとえば年に1度だけ、決まった行事や法要の時だけ使うような場合はそれでも良いのですが、いつ使うかわからなかったり、量が多い場合はいちいち新聞紙で包んでいたのではいざという時役に立ちません。
そこで私はざっくりと風呂敷などの大きな布で包んでコンテナに入れて膳椀蔵に保管しています。
だいたい二ヶ月に一度くらいのペースで使っていれば問題ないのですが、漆器にも色や種類がたくさんあり、用途が違うのですべてのうつわをバランス良く使い回すというわけにもいきません。
どうしても長期間使わないうつわが一部出てしまいます。

また今年は寺の事情があって大人数に出すような精進料理の依頼をだいぶ減らしていたので、なおさら使わない漆器が出てしまいました。

その上今年の猛暑が漆器蔵の湿度を激増させたため、ああ今年はちょっとやばそうだなあと気にしていました。予想通り、8月上旬ごろに漆器の一部に初期のカビが発生しはじめました。
一年ほど使っていない漆器の、一番上に重ねていたものがほとんどです。
どうしても湿気が多い日が続くと漆にはよくないのです。

そこで全てのうつわをお湯で洗って良く乾燥させる「湯通し」を行いました。

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見えますか、しばらく使わなかった漆器に細かいカビのもとができはじめています。

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これはかなり激しいです。ここまでカビが出はじめたのは1000枚以上ある漆器のうちのほんの数枚だけですが、これをほっておくと伝染して大変なことになります。
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カビが生えたお椀は特に入念に洗います。
カビが出ていなくても、しばらく使わなかった漆器はこうして定期的に湯通ししてあげることが長持ちさせるコツです。

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良く乾して風を通し、すぐにしまわずに丸一日さらします。

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昭和初期のお椀。この一式は専用の木箱に収納されていますが、このお椀はカビたことはありません。やはり木箱と和紙の力はすごいです。おそらく湿気調整をしてくれるのでしょう。
こうしたしっかりした木箱が全部のお椀にあれば良いのですがそうはいかないのでマメに洗うしかありません。
念のためこの箱の漆器も洗って乾し、ふたたび和紙に包んで保管します。

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洗った漆器はこうして種類ごとにコンテナに整理し、膳椀蔵で保管します。

上にかぶせてあるのは、本来法衣を包むためのウコン染めの風呂敷です。ウコンというのは最近二日酔い防止ドリンクで有名なアレです。ウコンの色と香りには防虫殺菌効果があり、虫がよりつかなくなるといわれ、古来大切な着物や衣類はウコンで染めた風呂敷で包んで保存するのです。

このウコン染めの風呂敷をかぶせることで、せっかく洗った漆器に虫やホコリがつかないようにしています。
今回8コンテナ分の漆器を洗いましたがまだまだ膳椀蔵にはたくさん漆器が保管されています。
ここ数年の夏はかつてない高温多湿が続いているため、今年は残りの分も全ていったん洗わないと安心できません。あとは秋に時間をみつけて洗うしかないですがかなり苦労しそうです。

これも修行だと思って頑張ります。

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