包丁選びとお手入れの基本4 研げない包丁?

どうしてホームセンターで1000~3000円で売っているステンレスの包丁を買ってはいけないかというと、「研げない」からです。
無理して研げないこともないのですがとても大変で、実質研げないと言って良いでしょう。

そもそも、包丁を買う際にどの程度の期間使うつもりで買いますか?
まさかたった2ヶ月で買い換えることは想定していないですよね。
しかし、実際この価格帯のステンレス包丁はわずか数ヶ月で切れなくなってきます。となると3ヶ月とか半年に1本買い換えることになりますが、それってとても無駄な気がしませんか?
数年繰り返せばそのお金で良い包丁が買えてしまいます。
研ぎ専門業者に出せば切れ味は復活しますが、1000円の包丁を研ぎ代1000円払って研いでもらうというのはナンセンスですよね。

それに気軽に捨てることができる消耗品ならまだしも、包丁をホイホイ捨てるわけにもいきませんし。
短期間切れれば良い人もいるでしょうから絶対に買ってはダメとは言いません。はじめから数ヶ月で切れなくなるということを理解した上で使い捨て前提で買うなら止めませんが、通常は包丁を買う際にそんなに早くダメになる消耗品だなんて思わずに買っている人も多いように感じます。

当然ですが、「使い捨て」とは書いていません。中にはパッケージに研ぎ方の図が載っているものもありますが、これを研ぐのは相当の時間と技術が必要で、正直いって実質使い捨てに等しいです。

ところで、ホームセンターなどで売っている商品は、顧客のニーズを徹底的に調査して売れすじ品を置いているのは常識でしょう。
個人的な予想ですが、「ホームセンターで包丁を買う消費者層はそもそも砥石で包丁を研がない」という市場調査のもとで販売戦略が立てられているのではないかと推測します。
つまり売っている側も、「切れなくなったら使い捨て」を前提に品揃え設定しているのではないか、と思うのです。
まあ確かに自分で包丁を研ぐ人って今の時代少ないようなのでこの市場調査は合っているとは思いますが。

こうした包丁売り場には「簡易研ぎ機」または「簡易研ぎ棒」が置いてある場合が多く、砥石までは買わなくてもこれなら手軽なので売れるのでしょう。実際に料理教室参加者と話をすると、切れなくなると簡易研ぎ機にかけている、という人がけっこういます。

ただし簡易研ぎ機や研ぎ棒を使うといったんは切れ味が復活したように感じますが、新品同様には戻らず、すぐまた鈍ってきます。そして何度も繰り返すうちに包丁の刃の部分の形が崩れ、やがて使い物にならなくなってしまいます。その場しのぎにしかなりません。

なお最近見かける2000円前後の「セラミック製」包丁などは、パッケージに「この包丁は普通の砥石で研ぐことはできません」と銘記してあるものもあります。もうはじめから使い捨て前提なのですね。
その他にも、一度は誰でも聞いたことがあるような有名な?包丁メーカーの製品で、1本5000円以上の価格がついているにもかかわらず、実際はホームセンターで1000~3000円で売っている使い捨て前提のステンレス包丁と同レベルの品が出回っているのがまた困ったものです。
ブランド名を信頼して購入し、なんだか思ったほど切れないけどおかしいな?と疑問を感じて相談を受けることがあるのですが、「こういう包丁は、はじめは良く切れますがあとで研ぎにくいのですよ」と説明すると「え!でも○○○○(ブランド名)の包丁ですよ?結構イイ値段なんですよ?そんなはずは!」と困惑なさる方がおられます。

購入者の心理として、たとえ1000円の包丁でも、簡単に買い換えたり捨てるのはもったいないと思ってしまうでしょうから、切れなくなった包丁で我慢しながら料理を続けることになってしまいます。
切れない包丁でごまかしながら料理をすると、とてもストレスが溜まります。ですのでそうした包丁ははじめから選ばないことをおすすめするのです。

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