したがって、今回から「酒」について解説します。
和食の味付けには酒が欠かせませんが、何のために使うのかを知らない方が多いようです。確かに、書店では色々なレシピ本が売られていますが、その理由まで書かれている本はあまり多くありません。別に理由を知らなくても良いのですが、料理教室で生徒さんに聞いてみると、意味を知らないがために、残念ながら誤った酒の使い方をしている人が非常に多いのが現状です。ぜひご一読下さい。
まず酒を味付けに使う意味をまとめると、およそ以下の通りになります。
1 素材の味を引き出す。
2 味にコクが出る。
3 酒に含まれるうま味成分のおかげで味が良くなる。
4 香りがよくなる。
5 素材が柔らかくなる。
6 味が素材に染みこみやすくなる。
7 素材の臭みを消す。
8 殺菌作用により、保存性が良くなる。
これを見るとなんだかものすごくすばらしい効果を得ることができる魔法の液体のように思われてしまうかもしれませんが、ビックリするほど格段の効果が出るというわけではなく、現実にはそれぞれわずかな違いが発生する程度です。あまり味に興味がない人にしてみれば、気がつかない程度かもしれません。しかし「味」というのはそうしたわずかな差が大事なのです。
例えばビール。お酒が嫌いな人にしてみれば「どのメーカーのビールも全部苦い味しかしない」と思うでしょうが、「オレは○○社の○○ラベルしか飲まないぞ」とそのわずかな味の違いにこだわるビール党が多いことからもわかります。
特に、微妙で繊細な味を売りとする精進料理にとっては、上記の各項目は非常に重要な要素となります。昆布と同じように、ぜひ調理酒についても詳しい知識を身につけていただきたいと思います。
次回から各項目について詳しく解説していきます。