当地ではワラビが名残の時期を迎えています。
ではじめの頃はおひたしがよく合いますが、私はこの時期のワラビを使った味噌汁が大好きです。
わらびは下処理が面倒だというイメージが強いのか、他の山菜と比べて特に初心者には敬遠されがちです。先日も近くの直売所でわらびを選んでいたら、観光客のおばちゃん達が「あら、わらび。ずいぶんお安いわね!でもこれいつも下ごしらえで失敗しちゃうのよね、やめとこ」みたいな会話をしてるのが聞こえてきました。
確かにわらびはそのままではおいしく食べることはできませんが、手順を守って処理すれば特別難しいことはありません。
まずはゴミをさっと落とし、耐熱の容器やパット、なければ鍋など熱湯で変形しない材質の容器にワラビを並べます。
次に灰を全体にまぶします。灰の量はそれほど厳密でなくても大丈夫ですが、だいたいわらび100グラムだったら灰大さじ2杯くらい、わらび300グラムで大さじ4杯くらい、わらび500グラムの場合は大さじ7杯くらいが目安です。
「100グラムで大さじ2杯なら500グラムの場合大さじ10杯じゃないの」と思うでしょうが、正確に比例させる必要がないという個人的な経験です。
わらびが100グラムのような少ない量の場合は大さじ2なのですが。まじめに比例させて500グラムで大さじ10だと多すぎて後でわらびに灰の臭いがついてしまうのです。
また灰にもいろんな灰がありますし、わらびのアクの量や硬さ、またこのあとかけるお湯の量も、100グラムの場合と500グラムの場合で5倍のお湯をかけるわけではないので、それほど灰の量にこだわっても仕方ありません。まあお湯に溶けずに灰が沈殿するほどたくさんかけすぎて灰臭くなったり柔らかくなりすぎたりしない限り、灰の量で失敗することはまずないのでいい加減で大丈夫です。
塩やしょうゆの量と違って、直接味に関わる部分ではないのでアバウトでかまいません。
もしわらびに灰が小袋で付属していればそれを使います。
要するに
・わらび100グラム=あく抜きの灰大さじ2くらい
・わらび500グラム=あく抜きの灰大さじ7くらい
写真ではわらび300グラムなので灰が大さじ4灰です。
そこにアツアツに沸騰した熱湯を全体にまぶすようにしてふりかけます。
量はわらびが充分にかぶるくらいです。
自然と灰が混ざるので、無理にかき混ぜる必要はありません。このとき下に5ミリとか灰がつもるほどだと灰が多すぎです。
熱湯が冷めないうちにすぐにラップで容器をグルグル巻きにして、そのまま放置します。
だいたい夕方処理したら翌日午前中までほっておくのでおよそ半日ほどおけば良いのですが、アクが強いわらびの場合は丸一日漬けておくと良いでしょう。あまり濃い灰汁に長く浸けすぎると柔らかくなりすぎる場合もありますので心配ならたまに柔らかさをチェックします。
ラップをとりはずし、きれいな水で良くすすいで灰を洗い流します。先端の方はやさしく扱わないと巻き芽のあたりがバラバラになってしまうのでそっとすすぎます。
できれば流水にしばらくひたして残ったアクを流すようにするといいのですが、出しっ放しは水道代がかかるので、ある程度水を流してすすいだ後、多めの水に2時間ほどひたし、水を取り替えてさらに2時間ほど漬け、アクが強ければもう一度繰り返します。
わらびが多い場合は使う分だけ取り出してすすぎ、後はパットの灰汁に漬けておくという方法もありますが、何日も漬けておくとやはり灰臭くなったり溶けてきたりするので要注意です。
この状態で、ほどよい長さに切れば再度煮ることなくおひたしにでも何でも使えます。
ふつうの量なら、ビニール袋やタッパに移して冷蔵庫で保存すれば3~4日は持ちます。
なお灰のカスが排水パイプに詰まったりする場合もあるので、庭に水道がある場合は庭の水道ですすぐとか、灰の粒が大きかったり多い場合は最初に灰だけを庭などに捨ててから細かい部分を水道で洗うなどすると良いでしょう。
「そもそも一般の家に灰がないよ」
それはごもっともです。
うちはお寺の囲炉裏の灰を使いますが、ふつうの家にはイロリはないですし、最近はco2削減目的の野焼き禁止のご時世で田舎の家でも灰は身近でなくなっています。
仏壇のお線香立てには灰があると思いますが、それを使ってはいけませんよ!
お香の香りのわらびになってしまいます。
で、その場合に使うのは「重曹」です。
重曹は一袋100~200円くらいだと思います。「山菜あく抜き用」と書かれたものもありますが中身は同じです。重曹は物を柔らかくする効果があり、豆などを早く煮たい時などにも使いますから用意しておくと良いでしょう。
ただし灰と違って、量が多いと柔らかく溶けるような感じになって崩れてしまうので入れすぎには要注意です。
いろいろな配分量をみかけますが、私の場合はお湯2リットルに対し重曹小さじ1です。そして沸騰直後の熱湯ではなく、沸騰してからフタをあけて5分ほどおいて多少さました湯をまぶし、箸でよくかき混ぜて重曹をまんべんなく溶かし、湯気がある程度収まってからラップをします。
そして3~5時間経ったら1時間おきにわらびをさわってみて柔らかくなりすぎていないかチェックし、ちょうど良い状態で取り出してよくすすぎます。灰の場合と違い、数時間長くひたしただけで溶けてしまうこともあります。
灰よりもかなり気を使いますが、重曹の場合柔らかくなりすぎて溶けてしまう失敗があるので仕方ありません。入手が面倒でも灰を用意しておおざっぱにするか、簡単に用意できる重曹を使って細かく確認しながらあく抜きするか、そのどちらかですね。
さて、やっとあく抜きしたわらびを味噌汁にします。
1 里芋100gの皮をむき、乱切りにする。多めの水に漬ける。
2 わらび50~100gを5センチほどに切る。
3 昆布だし2カップ、酒大さじ1、1の里芋を加熱し、沸騰したら
弱火に落として里芋に火が通るまで煮る。
4 わらびを入れて1分ほど煮たら味噌大さじ1~2を溶く。
わらびのトロっとした舌触りが里芋のぬめりとよく合います。
好みで山椒の粉をふると最高です。
他にもきのこ類や牛蒡などの根菜類もよく合います。
手間はかかりますが、自然の恵みであるわらびの味噌汁をすすれば、きっと日本人ならではの贅沢を感じることができることでしょう。