包丁選びとお手入れの基本1 前書きその2

昨日書いた三つの例は、すべて店員さんの知識不足によるものですが、中には知っていてあえてベストではないものを薦めてくる店員さんも少なからずいます。

経営上成り立ってこそのお店ですから、売れ残りが出ないよう、また利益率やメーカーマージンなどを考慮し、巧みな話術で誘導するのが店員さんの業務です。家電量販店や携帯電話ショップなどでよくわかっていない素人に「これがおすすめですよ!」と、あまり良さそうに思えない型遅れの品をイチオシしている場面を見かけますし、その場でゆっくり比較検討していると「早く決めてくれよ」みたいな顔を露骨にする店員さんも残念ながらおられます。
「これは型遅れ品ですがデザイン以外の中身は現行と変わりませんし、その分値段もお得です。こちらは現行品のかわりに値引きはできません、どちらにしますか?」というような充分な説明があった上で客が選べるのであればどちらを選んでも自分の責任ですが、そうでなく店員さんの誘導にのせられて、欲しくもない品を買わされたのではたまりません。

もちろん言うまでもなく、立派で信頼できる店員さんもいますしそういう方とは永くおつきあいしたいと思いますが、実際には世の中の役に立つ良い物だけが、良心的で顧客本位の店員さんによって売られているわけではないことは皆さんもよくおわかりでしょう。

ですから高価な買い物をする際は自分自身でよく下調べをして買わないとあとあと後悔することになってしまうのです。

たとえば家や自動車などの高額な買い物をする際は、みなさんしっかり下調べをなさるでしょうし、購入のための専門誌もたくさん売られています。またパソコンや家電製品についてはネット上の価格サイトなどで細かな口コミが感想がやりとりされ、選択材料にすることができます。

ところが包丁については、それほど詳しくチェックして買っている方はまだまだ少ないようです。実際私の料理教室に参加なさる方の持参する包丁をみると、ある程度料理に興味がある方でもあまりにも使いにくい包丁を使っている方が大勢おられます。そうした方に話を聞くと、そもそもどういう包丁が良い包丁で、どんな包丁が悪い包丁なのかということ自体を知らない場合がほとんどです。
また精進料理業界の後輩をみても、明らかに偏った包丁選びをしている者も少なくありません。

市販の専門書も大分昔に数冊読みましたし、ネット上には包丁店のサイトにとても詳しい解説が載っています。しかし専門書は一般人が実践するには少々難しすぎますし、包丁店の解説もそれぞれ独自の見解がありさまざまです。当たり前のことですがともに自店の商品や協力店舗の品を中心に解説されているため、どれも微妙に主張が異なり、全て読んでもどれが正しいのかかえって迷ってしまいます。
そんな中で、本からの知識、ネットの情報、また直接包丁店や研ぎ師の話を聞き重ねる中で、現実的に可能な範囲で、自分で日々実践している内容を書いてみたいと思います。

私自身、この二十年の料理修行の中で今も試行錯誤している最中なので、完成した知識ではないことは承知の上ですが、それでも少しは皆さんの役に立つはずです。私がこれまで蓄積してきた包丁についての現時点での見解を次回以降何度かに分けて紹介致します。

長文失礼しました。
出版物では文字に制限があるためとうていこれほど長くは書けませんが、いくらでも書くことができるのがブログの良いところです。お読み下さりありがとうございます。m(_ _)m

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