お香について その2

前回の続きです。
お香にも色々ありますが、我々僧侶が使う天然物の多くは東南アジア諸国が原産です。木の樹脂が様々な作用の末、長い年月をかけて生み出す物で、香りの宝石ともいわれます。一例を挙げると、倒れた木や切られた木が自分を守るためになんらかの樹脂を分泌し、これが微生物などの影響を受けて凝固してできあがったりするんだそうです。

まさに自然からの贈り物ですね。
元の形はまさに木そのものなのですが、これを小さい板型にカットしたり、粉末状にして抹香にしたり、色々合成して練り上げ、線香などにするのです。
そのため、線香は各種成分をまぜこむことが簡単にできるので、その組み合わせにより何種類もの香りが生み出されます。抹香も、何種類かの香を混ぜたものもあります。

お香の原木は主に三つに分類できます。
いきなり値段に関する話をするのも無粋ですが、安価な順に紹介します。

●白檀 びゃくだん 白っぽい色をしていて、火にくべなくてもかなり強く臭います。そのため、白檀を加工した仏像なども作られています。香りを表現するのは難しいですが、甘くソフトな香りがします。

●沈香 じんこう 黒っぽい色で、種類によっては木目がはっきりしています。ある程度の高温にならないと香らないかわりに、長く保存しても香りが失われることはありません。香りは同じく甘い香りなのですが、白檀よりも重厚で、格調高い香りがします。しかも残り香が長く続きます。余談ですが、漢方薬としても用いられ、鎮静効果があるそうです。確かに沈香を炊くと非常に心が落ち着きます。さすがにこのクラスになると高価になってまいりますが、十分価格にみあうだけの価値はあります。

●伽羅 きゃら 沈香の一種なのですが、ごく限られた地域で、一定の条件下でしか生み出されない、非常に貴重なお香です。そのため、極上中の極上、という意味で伽羅の語が使われることもあります。私自身、今まで数度しか焚いたことがないくらいの貴重品で、値段は目が飛び出ます。香りはもう、私のヘタな文章では表せません。

この三種が純粋に使われているお香ならば、まず皆さん満足されるはずです。
漂う香りに思わずうっとりしますよ。
しかし、実際には安価なお香には、これ以外の様々な成分が合成されています。
なかには化学成分が混ぜてある物もあります。
まあ、香りの好みは人それぞれですからあまり断定したくありませんが、焚いて目にしみるような香りがするもの、ほとんど香りがせず煙だけ出るもの、ツーーンとくるもの、むせるもの・・・こういうお香はできれば避けたいところです。
そりゃあ、そんなにお香ばかりにお金をかけることはできませんから、普段使いのものは安価な物でも良いと思うのですが、大切な人の命日とか、切なる願いを祈願する際には、秘蔵の銘品を焚いてみてはいかがでしょうか。おそらくその香りが最高の供養となり、また焚く人に心のゆとりと平安をもたらすことでしょう。

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