秋田県鹿角市 精進料理教室開催

去る2月28日、秋田県鹿角市(かづのし)にて「癒しの食講習会」と題した精進料理教室を行って参りました。
昨年の秋頃に、秋田県の機関である鹿角市振興局から依頼を受け、半年近くも準備と打ち合わせを何度も行ってきた精進料理教室です。何度もメールや書類をやりとりする中で、担当者の熱い意気込みが伝わってきたため、私もいつも以上に張り切って準備をしました。

鹿角市では、行政と民間が一体となって知恵を出し合い、地元を盛り上げようと努力している地方で、「かづの『癒しと体験の里づくり』プロジェクト」という各種の事業が進められています。

たとえば、鹿角市周辺には、良い温泉がたくさんあり、温泉のより良い入り方を教えてくれる、「温泉入浴指導員」(財団法人日本健康開発財団認定の資格)名付けて「温泉(ゆっこ)の案内人」というエキスパートが各ホテルや旅館に配置されていることでも有名です。

そんな実績からもわかるとおり、いわゆる事なかれ主義の「お役所仕事」ではなく、とても情熱的で、人情深い行政を行っているすばらしい地域です。

前日27日は、大雪のため、新幹線が心配になったので、朝4時に起床して5時に家を出発。予定より1本早い新幹線で、盛岡へ。
いつもはこういう料理教室の時、鍋やらうつわやら、道具が多いのでほとんど車で移動するのですが、この雪では高速道路もあてにならないし、危険なので今回は新幹線です。宿泊のための衣類などが入った大きなボストンバッグを担ぎ、右手には紙袋、左手には重たいカートを引っ張って新幹線に乗車。あらかじめ一番後ろの座席を予約していたので、席と壁の間のすきまに荷物を挟んで移動。

一番上の黒いビニール袋には、胡麻豆腐30人分が。くずれないように大きなタッパに水を入れ、その中に胡麻豆腐をバッドごと浮かべてあるので、重いのなんの。
一番下の段ボール箱には著書が20冊。
乗り換えの時は重すぎて階段を降りることができず、ホームの端にあるエレベーターを初めて利用しました。
胡麻豆腐を運ぶ

当日は朝7時に会場入りして下準備、9時開始。
今回の参加者は地元のホテルや民宿でふだんお客様に料理をお出ししているプロの方がほとんどだったので、内容もハイレベルに設定。いつもよりも手間のかかる献立を、各班ごとに調理。
お昼には、各調理台で6品づつ作った料理を皆で頂きました。もちろん禅宗式の略作法で、合掌してお唱えごとをしてから頂戴しました。普段なかなかこうしてあらたまって食べる機会が減ってきた今、新鮮だなあ、とおっしゃていた参加者もおられました。

調理風景

鹿角市精進料理 お昼の献立

休憩の後、精進料理~伝えていきたい心と技~と題して、1時間ほどのお話。
パソコンのパワーポイントを利用し、スライドで資料や写真などを示しながら、精進料理の基本的な技術や、今忘れられつつある手作りの食事のすばらしさなど、仏教食育的なお話をさせていただきました。
スクリーンに資料を写しながらお話しするのは、今までにも何度か行っているスタイルなのですが、どうしても料理に関する話の場合、言葉だけではイメージが伝わらない(まあ、私の話術が未熟なせいもあるのですが)ため、言葉+視覚効果が得られるので非常に効果的だと思います。
当地で今も行われている、昔ながらのお葬式の進め方を紹介する中で、手作りの精進料理の良さをお話いたしました。
お葬式のやり方は地域によってだいぶ違いますが、昔ながらのお葬式をみて、驚いている若い方や、懐かしんでいる年配の方もおられました。

精進料理 講演

講演後も再び調理実習を行い、午後4時には一日の日程が終了しました。
法話だけ、講演だけのスタイルも良いのですが、やはりこうして、話を聞くだけでなく、実習が伴うと精進料理を理解しやすいと思います。
特に今回はプロの方々が対象だったため、皆さんそれぞれの調理技術が光っており、私の方も勉強させていただきました。
本当に、料理教室を行うたびに思うのですが、皆さんに教えることを通じて、実は自分が一番勉強になっております。本当にありがたいことです。

なんとか無事に終えることができ、関係者ならびに参加者の皆様に深く御礼申し上げます。ただ一点、今回当方が用意したうつわに予期せぬトラブルがあってご迷惑をかけてしまいました。参加者の皆様には、当方の不手際に対しましてあらためましてお詫び申し上げます。

精進料理教室 食事風景

追伸 終了後ごちそうになったきりたんぽ鍋、とてもおいしかったです。
おいしくておかわりしましたが、実はもう2杯、いやあと2杯くらいは
おかわりしたかったのですが、「まー和尚さんが3杯もおかわりしたわ!」
と思われるとまずいので我慢しました。今回は初対面でしたから。
しかしまた次のご縁があれば、今度は遠慮なく大きなお椀を持参して
おかわりしたいと思います。(鹿角のきりたんぽ鍋は最高です)

翌日、地元新聞に大きく記事が掲載されました。

精進料理教室 新聞に掲載されました

「精進料理教室に参加したいが、定期的に開いていないの?」というご質問やご要望を、当サイトを通じてけっこうたくさんメールなどで頂戴しております。
残念ながら、当方お寺の住職ですので、なかなか定期的に行うのは難しいのが現実です。お葬式がいつ入るかわからないからです。
また、道具や食材の準備や、必要経費などのコストもけっこう大変です。

ですが、今回のように、まとまった人数で料理教室を企画して当方に依頼してくだされば実現は簡単です。お住まいの自治体などに企画立案をお願いしてみるのも良いでしょうし、または近くのお寺さんに提案して企画してもらっても良いでしょう。または希望者が何人か集まって、地域の集会所など調理ができるところを借り、代表者が連絡する形でもかまわないと思います。
どうぞ、またのご縁をお待ちしております。

ちなみに鹿角のスーパーでみかけたおもしろい野菜
「作って、買って、食べて えがった菜」
(えがった菜→良かったな、という意味の方言だと思います)
なんともハイセンスなネーミングに脱帽です。

えがった菜

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コメント

  1. 聖者ぼんちリンポチェ より:

    私が和尚さんだったら、
    「和尚さんが○杯もおかわりを!」と言わせたさに、
    限界でおかわりするだろうと思いますが・・・。(笑)

    さて、精進料理の勉強は大変に役に立ちます。
    独身の男女などが、何か良い料理はないかなあ、と言ってたら、
    迷わず、「精進料理の本を読むといい」と勧めています。
    個々の料理のレシピをコツコツ仕入れていくよりも、
    精進料理から「工夫」ということを吸収できるから、と。
    およそ「商売っ気」という意識が料理人より希薄なので、
    秘伝とか奥義だとかいって包み隠すことなく、
    基本と応用がもったいぶらずに書かれているのが、
    精進料理の本(特に寺院関係者の著書)の強みだと思います。

    私の知り合いの板長さんが、もと居たお店を退職し、
    別の会社の、とある料亭を任されたのですが、
    そのオーナーの意向で、精進料理と紙一重のメニューのお店に。
    肉類はほとんど使わず、水中の生き物も川魚ばかり、
    それも積極的な使用ではない、というメニューなのですが、
    着任して数ヶ月して行ってみると、
    驚くほど料理の質が向上していました。
    食材に制限がある分、吟味し、応用する力が
    相当についたようです。
    まさに現成公案に他ならないと思いましたね。