仕事始めは朝日新聞の精進料理連載

今年の精進料理布教活動、仕事始めはおかげさまで長年続けさせていただいております朝日新聞土曜版be「もてなし流」の連載です。


一月四日、十一日、十八日、二十五日の4回掲載で、すでに去る土曜日に初回分「黒豆と献餅のおかゆ」が掲載されました。

一月七日に七草粥を頂く風習は皆さんよくご存じだと思います。
かつては風邪をひきやすい寒い時期に、雪の下から芽生えた大地の息吹、春の七草を頂いて栄養とビタミンを摂取することが大きな目的でしたが、現代にあってはもう栄養もビタミンも充分足りていて、むしろ年末からお正月にかけて豪勢なご馳走が続いて栄養過多となり、胃に大きな負担がかかっている中でこの時期を迎える方も多いことでしょう。

そんな状況下で、現代の七草粥は栄養を補うというより、食べ過ぎた胃を消化の良いおかゆで休めるような?少々本来の主旨とは異なった方向性で受け取られているような面もあるように感じます。

そこで、今回はあえてこの時期に七草粥ではなく「黒豆と献餅のおかゆ」をセレクトしました。
お正月に神仏にお供えしたお餅(献餅)を鏡開きの日にお下げし、それを工夫していただくのもまた古来からの日本の風習です。
神仏にお供えした尊いお餅を、ポイッとゴミ箱に捨ててしまうなんてもってのほかです。
神仏の威徳を授からんとし、また食べ物を粗末にしないようにありがたくいただくことで神仏とのご縁が深まります。
ただ実際やったことがある人はわかりますが、一週間近くお供えしたお餅は乾燥してしまいカチコチで、部屋の環境によっては乾いて割れてしまったりします。それを通常の方法で食べるというのはなかなか難しいものです。先人が工夫した献餅のおいしい頂き方はたくさんありますが、比較的簡単でポピュラーなのがお餅を焼いてお粥に加える方法です。

オーブンなど焼く道具がなければ、お餅を小さめに切ってお粥の炊きはじめにバラして加えても良いでしょう。
同じくおせち料理で残りがちな黒豆も加え、無駄を出さず食材に感謝する精進料理のこころを実践して下さい。

今年度の朝日新聞be料理面のテーマは「もてなし流」ですが、なんだかそんなリサイクル料理のような本来身内や裏方で食べるべき料理を「おもてなし」にするのはどうなの?
と疑問をお持ちの方もおられるかもしれません。
しかし現代人がおろそかにしがちな、神仏を崇め、まごころをお供えし、その品を無駄にせずありがたく頂くというわが国古来の伝統をお客様とともに大切にしていくことは紛うこと無き「おもてなし」だと私は思います。

ちなみにお寺では暮れも押し迫った時期に、お餅を搗く日が決められています。しかし今回は新聞の取材が十二月初旬だったため、それに合わせて一部のお餅を早めに用意しました。搗いてからだいぶ時間が経ったのでお餅がカビてしまわないか心配でしたが、今年は寒いためかカビは生えずおいしく頂きました。ですから厳密には年をまたいでの仕事始めになりますね。

「もてなし流」あと3回、是非ご覧下さい。

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