◇馬鈴薯の南蛮炒めの特徴と魅力
「南蛮」という調理名はもともと16世紀頃に日本に渡来したスペインやポルトガルなどの南蛮人が行っていた調理法を総じて呼んだもので、特定の料理というよりもそれまで日本になかった西洋文化の調理法全般を呼んでいました。それが次第に変遷し、スペインポルトガルからもたらされた胡椒などの香辛料を使う料理、ネギや肉を使う料理、唐辛子などの辛い食材を使う料理などを指すようになりました。
今回は馬鈴薯を使った2つの南蛮炒めバージョンを紹介します。一つは、香辛料ということでカレーパウダーを使います。もう一つは胡椒を使い、また唐辛子に類するシシトウガラシを使うことで南蛮炒めと称します。
馬鈴薯とカレーパウダーの相性はみなさんよくご存じでしょう。精進料理でカレーパウダーの使用の可否は意見が別れるところですが、カレー粉だと玉葱粉末や肉由来のエキス等、動物性食材が含まれる場合が多いので不可だと思いますがカレーパウダーは純粋にはスパイスの部類とみなすこともできるため、例外的に精進料理にもかなりの隠し球として使うことがあります。これだけ暑い夏、激減した食欲を刺激するためにもカレーの風味を利用してみるのも一案です。ただし多用しすぎると他の料理の繊細な味のバランスを壊してしまいます。パウダーは少なめに使うのがコツです。また厳格な精進料理にこだわるならばカレーパウダーを使わずにしょうゆと胡椒で炒めると良いでしょう。2バージョンとも紹介しますのでご確認下さい。なお多めに作って常備菜的に作り置きしておくこともなにかと忙しいお盆には適しています。
この時期の馬鈴薯は収穫されて間もないものが多いため、皮が柔らかいので無理に皮をむく必要はありません。たわしできれいにこすって泥や汚れをよく落とせば、皮のまま調理することができます。その方が野性味溢れる見た目となりますし、またせっかくの皮付近の濃い味を無駄にせず楽しめます。
なおこの時期の馬鈴薯にはまだ芽は少ないはずですが、有害物質ソラニンを含みますので特に緑がかった芽はしっかり取り除いて調理して下さい。
◇馬鈴薯の南蛮炒めの調理手順とレシピ
1 馬鈴薯3個(400g)の皮をたわしでしっかり洗って泥汚れなどを落とします。
芽があれば有毒物質ソラニンを含むため包丁の角やピーラーの芽取りなどを使って取り除きます。
2 皮ごとくし形に切ります。
3 生椎茸4本50gの石突部分を取り除き、縦に半分に切ります。
4 ししとう10本のヘタを取り除き、身に包丁で切れ目を入れておきます。これをしておかないと加熱時に中の空気が膨張して破裂することがありますのでご注意下さい。
5 フライパンに油大さじ1を敷いて加熱し、2を中火で炒めます。
6 油が全体に回ったら昆布ダシ(または水)200mlと酒大さじ2を加え、中火のまま煮るようにして馬鈴薯に火を通します。
時折木へらで馬鈴薯をひっくり返して均等に火が入るようにします。
7 馬鈴薯の色が変わり、口中でほぐれるくらいの柔らかさにゆであがったら火を止め、残った煮汁を半量ほど残してゆでこぼします。
8 椎茸とししとうを加えてさらに2分ほど炒め、ほとんど煮汁がなくなってきたらカレーパウダー大さじ1~2を加えてよく混ぜます。
なお他の料理との兼ね合いなどでカレー粉を使いたくない場合は胡椒としょうゆで味をつけます。
8の行程までは同じで、しょうゆ大さじ2とあらびき胡椒少量を振り混ぜます。