雪道のチェーン装着法

この時期、降雪による交通機関の大きな乱れがときおり報道されます。

本日夜からあさってにかけて、関東南部でも雪の予報が出されているため天候を心配している方も多いのではないでしょうか。

お寺の入口の坂が急なこともあり、私はもう当然ながら四輪駆動+スタッドレスタイヤ+状況によってはチェーン装着ですが、当地のような北部でも時折二輪駆動車の方を見かけます。ましてや関東南部の方となれば、数年に一度の降雪のためにわざわざ四輪駆動車を選んだりはしないでしょうし、またノーマルタイヤしか持っていない方も多いことでしょう。

そうした雪対策が不充分な方に対して「雪国をなめるな!」などと叱るつもりはありません。数年に一度の降雪のために対策コストをかけるのははっきりいえば割に合いませんから。
同じ車種で、二輪駆動タイプではなく四輪駆動タイプにするだけで20~50万円はアップしますし、四輪駆動車は燃費がかなり落ちます。そのためエコカー主流の現代ではそもそも四輪駆動車の設定自体がない車種も多いのです。そしてスタッドレスタイヤは3年ほどで買い換えなくてはならず、またその保管場所も必要です。
ですから結論としては、めったに雪が降らない地域に住んでいる方は、もし降ってしまったら車で外出しないこと、またはどうしても外せない用事が重なってしまったらタクシーやレンタカーを使う、これが最高の対策だと思いますね。そもそも、ほとんど経験がない雪道を自分で運転しようという時点で危険度マックスですから。

ただそうはいっても、現実社会では二輪駆動+ノーマルタイヤで雪の日にでかける人が少なくありません。事情があってのことだというのはわかりますが、あまりにも無謀な装備での運転は自分だけでなく周囲にも大きな迷惑となってしまいます。どうぞ、よく考えてから公道に出ていただきたいと思います。

私などはもう雪が降った日には、対策は充分であっても、大げさでは無く命の危険を感じながら運転していますからね・・・

シーズン始めに、乾いた道路の上にふわふわの雪が積もっただけ状態の場合なら、まあそれほど心配しなくてもゆっくり走ればまず大丈夫です。

滑るかどうかは、結局は摩擦の問題です。もしタイヤが減って溝がほとんどなければ摩擦が生じないため(つまりグリップできずに)滑ってしまいますが、ふつうはタイヤの溝の間に水分や雪などの異物がうまく逃げてくれ、またその溝が歯車のような役割を果たし、地面とグリップして(摩擦を生んで)スリップを防ぎます。

しかし、下の写真を見て下さい。

シーズン途中には、降った雪が昼間の日差しで溶けて、その水で路面が濡れ、それが夜間などに急激に凍ると、まるでスケートリンクのようにツルツルの氷面になります。その上に更に雪が積もると、見栄え上はわからないのですが道路の表面が完全に凍っていることになりますね。こうした道路を運転した場合、道が平らでまっすぐならば良いのですが、坂だったりカーブだったりすると、摩擦が起きない状態ですから、滑ってしまうのです。

最も怖いのが下り坂です。たとえ四輪駆動車でスタッドレスタイヤを装着していても、ある程度急な下り坂で、下の写真のようなツルツル路面だったら、まず90%の割合で制御不能になりますね。ABSやら運転補助装置のついた高級車でも、ラリーなどで活躍した高性能四輪駆動車でも関係ありません。もうこれは摩擦力の問題なので。人間ならばこの坂道にはまともに立っていられない状態なほど、絶望的に摩擦力がないのです。

そして地方にはこうした坂道は避けて通れないのです。市や町が手配した業者さんが、氷をとかすための塩カルを撒いてくれますので、氷が溶けて路面が見えていれば安心です。ただそれも全ての路面にいつでも行き渡っているわけではありませんから・・・

とにかくこの状態の路面の下り坂はほんとうに危険なのです。

平成29年1月の大雪と対策法

さて、そんなときでもどうしても出かけなくてはいけない状況の場合は、四輪駆動・スタッドレスに加えてチェーンを装着します。それでも滑るので運転上のコツや注意点もあるのですが、チェーン装着による安心感は絶大です。

めったにない降雪のためにスタッドレスタイヤを用意しておくのは難しくても、チェーンなら購入費用や保管場所もそれほど負担になりませんし、雪国にさしかかってから装着することも可能なので大変便利です。

最近は脱着しやすい樹脂製のチェーンやスプレー式の簡易チェーンというのもあります。

たとえば高速道路で、冬タイヤ装着規制がかかってしまったとき、ノーマルタイヤでは通過させてもらえません。しかし高速道路はよほどのひどい日でなければすぐに対処されて路面が出るため、金属チェーンで時速30kmで走るというはかなり苦痛です。樹脂製チェーンの中には、けっこう速いスピードで走っても問題ない製品もありますのでそうした状況下ではお薦めです。

速度など問題ではないからとにかく事故を起こさないように、という極限の状況下ではやはり金属製品が頼りになりますね。金属チェーンで3千円くらいの安いものがありますが、これは切れやすいのであまりお薦めできません。実際には雪道だけが続くわけではなく、たとえばトンネルに入るとその中には雪がありません。そこでいちいち外してまたトンネルをでたら取り付けるわけにはいかないので、チェーンをつけたままアスファルトの上を走ることになりますが、安物の細いチェーンだとすぐに傷んで切れてしまうのです。また、雪国の道路には融雪のための塩カルがまかれますが、これが鉄を錆びさせます。やはり長く使うには1万円弱のしっかりしたチェーンがいいでしょうね。まあ、事故を起こすことを考えたら3000円のチェーンより1万円のチェーンが良いと思いますよ。スタッドレスタイヤを買えば数万円ですからね。なおチェーンの価格は、タイヤサイズが大きくなるとその分高価になります。自分のタイヤサイズと合わないチェーンは緩くてダメです。

また金属チェーンの中には、亀甲形というか、タイヤに対して縦に金属チェーンがレイアウトされている製品もあります。横線タイプに対してとてもすべりにくいのですが、振動が増えて乗り心地は下がりますし、またスピードを上げにくく、切れやすいのが難点です。亀甲形の場合は耐久性が高い高額なものがよいでしょう。なお亀甲形チェーンはスタッドレスタイヤには装着をおすすめできないものもありますのでご注意ください。

さて、チェーン装着の手順を紹介します。

チェーン購入と同時に、かんたんに装着するための便利グッズとして、補助踏み台のような道具が売られていますのでこれをつかいます。チェーンによっては、同様のものが付属しますが、まあ付属品は携帯性は良いのですが使い勝手としては別売り品の方が遥かに良いですよ。

なお自宅ガレージで装着するなら、ジャッキでタイヤを持ち上げてしまえば楽に取り付けることができます。しかしなかなか屋外でジャッキアップするのは難しいため、この踏み台が役立ちます。

なるべく平らな場所で、タイヤのすぐ前にチェーンを広げます。このとき、踏み台補助具を左右同じ場所にセットし、へこんだ部分にチェーンのまんなかあたりの横線が載るようにします。チェーンに外側内側の差がある製品の場合は、向きにもご注意を。私のチェーンはわかりやすいように外側になる方が黄色く着色されています。このセットの様子で装着時間がだいぶ変わるため、あわてず丁寧にセットします。

なお要注意ポイントとして、駆動するタイヤに取り付けないとあまり意味がありません。つまり前輪駆動車なら前輪にチェーンを付けるのです。よくネット上でプリ○スの後輪にチェーンをつけている画像が話題になっていますが、自分の車の取り扱い説明書で確認してください。私の車は四輪駆動車ですが前輪に取り付けるように指示されています。

平成29年1月の大雪と対策法 平成29年1月の大雪と対策法

車をゆっくり前進させ、踏み台の上に載ったらストップし、パーキングブレーキをきつくかけて動かないようにします。万一この状態から車が動き出すと危ないのでなるべく平らな場所で行いましょう。平らならなんの問題も無いです。なお、この踏み台の上に載ると、運転席からはっきりと感覚でわかります。付属品の小さい補助具だと、載ったかどうかわかりにくい場合がありますが、まあ同乗者がいればみていて合図をおくってもらうとよいでしょうね。

写真を見てわかるとおり、チェーンのだいたい中央部分を補助具の溝にセットすると、つなぐ接続部分がタイヤの上のあたりになるわけで、そこに手をつっこんでカギのような端の部品をひっかけてつなぎます。ダウンサス車などで、タイヤの上部に空間がすくなくて手が入れにくい場合は、チェーンの両端近くを補助具にセットすれば、タイヤの横部分や、下に近い方でつなぐことができます。まあでも一番やりやすいのは上部分ですね。両手で、均等にチェーンの端を持ち上げて上でつなげればいいので、目線的にも自然です。

平成29年1月の大雪と対策法

タイヤの向こう側をまずフックにかけ、次に手前をかけます。手前はまあ簡単なのですが奥は少々見えにくいため慣れないとかけにくいかもしれません。はじめに奥をかけるときは手前を一度たるませて奥にゆとりをもっていき、かけたら手前に引っ張りなおして奥と手前のバランスを調えるとよいでしょう。私のチェーンは引っかける部分がわかりやすいように赤く着色されています。外すときもこの赤が目印なので便利です。なお奥側は手前の赤と同じ裏側にあるということになります。

平成29年1月の大雪と対策法

このとき、タイヤとセットしたチェーンがほぼピッタリなのが良く、ゆるゆるだと効果が落ちたり騒音が大きくなったりします。そのため、フックにかける際になるべくきつくなるように詰めてかけます。下の写真では、黄色いわっかが一つ余るようにしてきつく赤いフックにかけてあるのがわかると思います。

タイヤチェーンの装着法

次に、付属のゴムバンドをチェーンの周囲にひっかけます。これにより、チェーン全体を中央にひっぱって、ゆるみを解消させるのです。そのためこれをひっかけるのはけっこう力が必要です。私は年老いて力がなくなってきたので、最後の数カ所は手製のオリジナル道具で引っ張ります。まあただの棒の先に、壁にものをつり下げるL字金具を刺しただけですがこれがとっても便利なのです。特許とろうかな。

なおこのゴムのフックはタイヤが傷まないように外側に向けて取り付けます。そしてゴムは劣化しますので、保管状況にもよりますが5~7年ほどで交換します。ゴムフックは数百円です。

平成29年1月の大雪と対策法

なおこれは昔ながらのチェーンですが、最近の製品はゴムフックのかわりにZ型の金属部品で引き締める製品もありますね。

平成29年1月の大雪と対策法

ここまでできたらゆっくりバックし、補助具を回収して終了です。ここまで慣れていれば5分以内でできます。結局は経験なので、一度晴れた自宅で練習しておくとよいでしょう。現場では雪がふっていて指先が震えたり・・いきなり現場でやると30分かかることもありますよ!

なお、チェーン装着は安全な場所で行って下さい。多くの雪国では、ここから先に行くならチェーンの準備をして下さいね、というための場所が路肩などに設けてあります。くれぐれも、道のど真ん中に停車して作業しないでください。後続車はそれをよけるためにものすごいストレスですし、ヘタすると追突しかねません。

また、チェーン装着時は車速は早くても30kmくらいで走りましょう。慣れれば一時的に60kmまで出せなくはないですが、チェーンが切れたり、振動で操作が難しくなりますし、そもそも緊急避難としてチェーンを付ける状況なわけですから通常時のスピードを求めてはいけません。

平成29年1月の大雪と対策法

まあ一番良いのは、心配な方はこういう日に車に乗らないことですね。事故を起こすとほんとうに大変ですから。まずは命と身体を大切にすることが一番です。

      

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