文化講演会を聴いてきました

6月15日、東京世田谷区にある駒澤大学の百周年記念講堂で、永平寺主催の文化講演会が開かれました。これは永平寺の3代住職、徹通義介禅師の700回御遠忌にあたって企画された「禅に学ぶ食育 いただきます ごちそうさま」という題の講演会です。

4月の記事にも少々書きましたが、永平寺の3代住職、徹通義介禅師は、かつて道元禅師のもとで修行をしていた折、禅師様から直々に典座の役を拝命し、毎日その教えを忠実に実践したことで有名です。そのご縁もあって、今回永平寺では「禅と食育」をテーマにした布教に力を入れているのです。

この講演会は全国主要都市で開催され、永平寺の地元福井県を皮切りに、2回目の北海道に続く3度目の開催が今回の東京会場でした。
おもに3部構成で、前半が服部幸應氏の基調講演、間に「永平寺からのメッセージ~三心に学ぶ」と題されたビデオ上映、そして後半が服部幸應氏、作曲家の千住明氏、NHKディレクターの若山慧子氏の3名による「作ることの楽しさ 食べることの大切さ」と題した鼎談です。

文化講演会 食育

かなり前からチケットを申し込み、楽しみにしていた講演会でした。
当日は開場一時間前に着きましたが、すでに10人ほどが並んでおり、ちょっと早かったかな、と思いましたがすぐに行列は長蛇の列となり、結果的には早めに並んで良かったです。会場はほぼ満席の大盛況。
非常にためになり、また考えさせられる内容でした。

その内容をあまり詳しく書くことはできませんが、一番心に残った服部氏のことばを一つだけ紹介します。
「人間の脳は10代には基本ができあがるので、子供の頃の教育や習慣は一生ついて回る。そのため、食事習慣や作法などのほとんどが幼少期をどう過ごすかによって決まる。つまり食育は本来家庭教育の中で行われることが望ましい。しかし残念なことに現在の家庭環境は、食育を行うに十分とはいえない。ある調査では、親を尊敬しますか、というアンケートに、ハイと答えた子供は2割強だった。これは他国と比べて非常に低い結果である。尊敬されていない親が、子に対してどんな食育ができるというのか」

・・・まことに厳しいお言葉が胸に刺さりました。
この話を聞いたとき、今の子供が2割しか親を尊敬していないというデータが事実であるならば、食育の話は別として、その子供が壮年になる頃になってもその意識が変わらなかったとしたら、もはや現在のお寺はこのままでは成り立たないだろうなあ、とあらためて危機感を覚えました。
尊敬していない親の葬儀や法事を熱心に行うでしょうか?これは今後研究していかなくてはならない大問題です。

さて話を食育に戻すと、そのデータに従うかぎり、食育より先にまずは親自身の反省が必要なのかもしれません。しかし、食育というのは何も子供だけを対象にしたものではありません。親自身も、至らぬ点を反省しながら、子供とともに歩む姿勢で良いのだと思います。
他人に何かを教えるとき、他人を指導すると同時に自分自身を教えることになるのです。
また、私自身は、子供は完璧な親を求めているとは思っていません。それよりも、一生懸命な親を求めているのではないでしょうか。たとえださくても、抜けていても、自分のために一生懸命な親であれば、おのずと尊敬される結果につながると思うのです。
ですから、まずは自分のため、そして家族のために食育を推進していく必要があると思います。

とてもよい講演会だったのですが、あえて言うならば残念だった点がいくつかあります。第一部でマイクの設定がかなり悪く、よく聞き取れない箇所がいくつかありました。第3部も、冒頭は同じく悪かったのですが、すぐに調整してくれて、途中からはよく聞き取れるようになりました。
特に私の隣の席に座っていた御年輩の方が、聞こえない、聞こえない、とずっとおっしゃっていました。
今回の場合は、服部氏の話し方や声量に問題はなく、完全にマイクセッティングの問題だったと思います。調整後はよく聞こえましたから。
話をするときには、皆さんに聞こえるような声量で話すことの大切さ、マイクを使う場合はその調整の大切さをあらためて肝に銘じました。

また、この講演会自体はとても完成度が高い内容だったのですが、回りで聴いていた一般聴衆が話していた声によると、もう少しお寺の食事や食に関する教えを前面に出した内容を聴きたかった、という意見が耳に入ってきました。
確かに、聴衆の反応が一番良かったのは第2部の永平寺ビデオ上映で、永平寺の台所や、食事作法、典座和尚の話などに反応する歓声などが大きくおこりました。
もちろん、今回はあえてそうした内容を前面に出さず、誰にでもわかりやすい内容を中心とした講演だったのでこれはこれで良いのですが、やはり聞きにきた方々は、「仏教ならではの食育」に興味関心があるのだなあ、と再確認できました。
手前味噌ですがどうぞそういう方は機会があれば当方の食育説法に是非お越し下さい。

文化講演会パンフレット

さて、当日聴講者には永平寺から「坐禅ひとすじ」と題された文庫本が謹呈されました。これは700回御遠忌を記念して出版されたもので、道元禅師が永平寺を開いて以降、主に永平寺の3代住職、徹通義介禅師の御生涯が小説風に描かれています。
難しい学術書ではなく、おはなし風に進むため、気軽に読むことができます。
道元禅師さまの伝記は、多くの方が概要をご存じだと思いますが、3代住職の伝記を知る人はあまり多くないように思います。ぜひ、道元禅師の仏法がどのように伝わっていったのか、初期の永平寺を知るために最適なおすすめの1冊です。
「坐禅ひとすじ」 角田泰隆老師著 角川ソフィア文庫

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Posted by 管理主宰者・典座和尚