道場への恩返し

さて、前回は永平寺東京別院の御征忌法脈会大法要で、私が担当した高僧のためのお膳を紹介しました。しかしなんといってもこの法要期間中、台所の中心は約400人分の精進料理弁当です。


朝昼晩と三食精進料理の献立で、飽きさせずまた栄養バランスも考えてバラエティ豊かな献立を立てるのは非常に大変です。
台所に配属された修行僧だけではとても手が足りませんので、全国から台所を手伝うために集まった和尚さん方が力を合わせて料理を行います。

400人分ともなると、材料を切るだけでも一苦労で、一つ一つの料理が山のように大量なため時間がかかります。上の写真は下味をつけた麩をフライ粉で揚げている様子。一人二個なので400人分×2個で800個を揚げます。最近は衛生面を重視するため、業務用のフライヤーが導入されて作業効率が格段に上がりましたが、それでも油で揚げるだけで2~3時間近くかかります。
俗に「油に酔う」といいますが、高温の油から立ちのぼる湯気にさらされての3時間はかなりきつく、揚げおわった後は気分が悪くなるほどです。

こうしてようやくできあがった料理、盛りつけるのも一苦労です。一人分の量を考えながら盛りつけないと、最後の方で足りなくなったり余ったりしてしまいます。また見栄え良くきれいに、なおかつ衛生的にもりつけるのは大変です。しかしせっかくおいしく味付けした料理でも、盛りつけが雑で見栄えが悪いとなんだかおいしく思えません。きれいな盛りつけも料理のうちなのです。細心の注意を払って丁寧に作業を行うため、だいたい400人分で1時間半~2時間くらい盛りつけにかかります。

こうして手間を惜しまず、丁寧に作られた精進料理弁当。
上の写真は、最終日のお祝いのお弁当ですので、特別にいろどりの良い容器に盛りつけられています。
今回も、多くの方が「おいしかったよ」と言ってくださいました。料理長もきっとホッとしていることと思います。作った私たちのまごころがたっぷり込められているから、おいしく感じるのだと思います。

今回ご紹介したように、永平寺東京別院の御征忌法要の精進料理弁当は、たくさんの修行僧、そして手伝いの和尚さん方の力が結集されてできあがっています。全国から手伝いに集まった和尚さん方は、若い人から年配の人まで、年齢はさまざまです。
しかし共通しているのは、みな自分の寺に帰れば住職や副住職をつとめている忙しい方ばかり。
自分の寺では、葬儀や法事の導師をつとめる位の高い和尚さんも大勢います。

そんな忙しい和尚さん方が、どうして時間をやりくりして、わざわざ台所の手伝いをするために集まり、芋や大根の皮を延々と剥いたり、3時間もフライを揚げたり、ほとんど休憩時間もとらずに朝から晩まで台所で汗を流すのでしょうか。

もちろん、料理をすることもお経を読むのも、どちらも差をつけることなき大切な修行だから、ということは禅僧として言うまでもないことですが、皆が苦労して日程を調整し、大法要を手伝うには理由があります。

それは、自分がお世話になった修行道場への「恩返し」なのです。
私たちはそれを「報恩・恩に報いる(むくいる)」といいます。
仏教を開いたお釈迦様や、曹洞宗の両祖に対する恩返しはもちろんのこと、自分が学び、育ててくれたありがたい道場へ感謝し、恩返しをするのです。

一般世間でも、自分の母校に対してそうした感謝の念や恩返しの気持ちを持つことはあるでしょう。しかしちょっとそれとは違い、我々の場合は、恩返しをする場は自分が修行した道場に限らないのです。もちろん永平寺東京別院で修行したOBも集まりますが、總持寺や永平寺など、他の道場出身者もたくさん集まります。自分の母校だけという限定した気持ちではなく、わけへだてなくお手伝いするのが報恩です。

全国から集まった、年齢も出身地も性格もバラバラな和尚さん方が、すぐに気持ちを一つに団結して料理を手伝うことができるのは、きっとそうした「報恩・恩返し」という強い共通の気持ちを持っているからなのだと思います。

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Posted by 管理主宰者・典座和尚