先日の換気扇と並んで、調理場で日常最も酷使されている器具の一つがガス台です。
あらためて考えてみれば、常に高温の火で熱せられているのですからどこかしら傷んでくるのは当然です。特に、火に最も近い部品であるゴトク(鍋をのせる飛び出た鉄製の部分)はどうしても寿命が短く、本体より先にまずダメになってしまいます。
油が飛んだり汁がこぼれたりして一番汚れやすいので、こまめに洗剤で磨いて洗うのですが、鉄なのでほっておくと錆びてきます。永平寺や永平寺別院での経験上、錆びたゴトクを使っているとやがてゴトク部分の鉄がはがれてきてそのうち大きく欠けたり真っ二つに割れたりしてしまいます。何度か経験がありますが、買い換えるとかなり高額です。そこで私はある程度錆びてきたら耐熱スプレーという特殊な塗料を塗ってメンテナンスしています。おかげで今のガス台のゴトクはかなり長く使っていますが今もまだまだ大丈夫です。
※誰に教わったわけでもなく、自分で考えて実行している個人的な方法です。不充分な知識の方が真似をして何か事故等あっても一切責任をとれません。分解時はガスの元栓を閉めてからどうぞ。
ゴトク部分全体に油用の洗剤をかけてしばらく置き、汚れや油を浮かします。その後ブラシやたわしでしっかりこすってから熱湯で流し、ピカピカにします。
内部のバーナー部分も取り外して同じように洗います。最終的に火が出る細かい穴があいた皿の部分は詰まりやすいので竹串でしっかり掃除します。
使うのは600度に耐える耐熱スプレー。
この時期気温が低くてうまく塗れないため、お湯にしばらく浸けて暖めます。(爆発しても責任持てません)その後何度も何度もこれでもかというほどシェイクして中身を混ぜます。
屋外に新聞紙を敷いてゴトクやバーナーを並べ、スプレーします。一箇所を長くスプレーするとムラになるので、かなり早いテンポで動かして全体をまんべんなく塗ります。一度に厚く塗るのではなく薄く何度も重ねる方がキレイに仕上がります。まあこればかりはセンスと経験がないとうまくしあがらない場合もあるでしょう。
乾いたらゴトクの向きを変えて別方向からスプレーして塗り重ねます。特にゴトクの先端部分は入念に塗り重ねます。
スプレーなのですぐに乾きますが、この時期は気温が低いので触っても大丈夫なくらい乾くまでには少々かかります。その間、ガス台本体を清掃しておきます。鍋が吹きこぼれて濃い汁が台に付着した場合、毎回しっかり拭き取ればいいのですが、裏側などの見えない部分にこぼれ残っていると長い時間加熱されて固着してしまうため、こういう完全分解の機会に細かい所まで清掃します。
新品同様にキレイになりました。
私の場合、2年に一度のペースで塗り重ねます。これにより、ゴトクが錆びて割れてしまうことなく長持ちしています。たいしたメンテナンスもせず、油でギトギトになったガス台を使い続け、限度まで酷使したら買い換えるという使い方もあるでしょうが、やはり一つの台をずっとキレイに保って大切に使い続ける方が精進料理にはふさわしいのではないでしょうか。今年も衛生的なガス台で気分良く料理したいと思います。