年賀状の準備進んでいますか

 今年もあと2週間となりました。

12月を「師走(しはす・しわす)」といいますが、その語源は年末になると普段は威厳をもってゆっくり道を歩いている僧侶(師)でさえも忙しくせかせかと走り回ることからついたといわれます。平安時代末の『色葉字類抄(いろはじるいしょう)』という書物にそうした注釈が記されているそうですから、かなり昔からの言葉のようです。

確かに、年末になると、今年のうちに済ませておきたいたくさんの雑事に追われて忙しい毎日が続きます。お寺の年末といえば大掃除、一年のホコリと汚れを落として清浄な道場で新年を迎えるため、いつも以上に丁寧な掃除を行います。掃除の他にも新年の諸準備、お歳暮・お年賀の用意など、しなくてはいけないことが山積みです。

一般の方も、特にお仕事を持っている方は年末は特別忙しいことと思います。そんな中、どうしても後回しになってしまいがちなのが年賀状の準備です。

ある老師は、年賀状がこないくらいで壊れてしまう関係であれば壊れてしまっても良いとおっしゃいました。確かにそうかもしれません。本当に心の底からつながっている間柄であれば、年賀状がこないくらいで揺るがないでしょう。

ただ、私はこう思います。深い関係であっても、浅い関係であっても、この世でいただいた尊いご縁を大切にする意味で、新年の挨拶である年賀状は大切にしたいと思っています。自慢するわけではありませんが、当方小学校高学年ではじめて年賀状を出して以来、毎年必ず元日に届くように、年内には発送準備を終えています。

本来、新年を迎えたならば縁ある方には直接出向いて年賀の挨拶をすべきところなのですが、全ての方に挨拶に行くわけにはいきません。ですから、ちょっとした手間を惜しまなければ出すことができる年賀状を大切にしたいと思うのです。

新年を迎えて、清々しい気分で受け取る年賀状は、なんとも嬉しいものです。ふだんなかなか連絡を取れない方の近況もわかりますし、書き手の個性あふれるデザインも楽しみのうちです。逆に、年賀状をもらったから仕方なく返事を書き、お正月7日過ぎに相手に届くのではなんとも興ざめなものです。

曹洞宗で良く読む『修証義(しゅしょうぎ)』というお経に、「面(むか)いて愛語を聞くは面(おもて)を喜ばしめ心を楽しくす、面(むか)わずして愛語を聞くは肝に銘じ魂に銘ず」とあります。相手を思いやった、まごころこもった言葉は、直接面と向かって聞いたときでも、あるいはそうでないときでも、相手のこころに深い感動と喜びを与えます。年賀状をもらって、相手の顔が思い浮かんで嬉しい気分になるのは、まさしくこの「むかわずして愛語を聞く」であると思うのです。

どんなに忙しくても、そのほんの一手間を惜しまない心がけは、精進料理を作るときの心構えに通じるものがあります。忙しさを言い訳にしていてはなにもできません。

忙しい年末ではありますが、パソコンの宛名ソフトを使ったり、市販の文面印刷済みのものを利用したりして、ぜひ今年中に年賀状の準備を済ませて欲しいと思います。そしてできればハガキの余白に、数行でもかまいませんから手書きで近況などを書き添えることができれば言うこと無しです。あなたの「愛語」を、新年の挨拶とともに縁ある方に届けて頂きたいと思います。

まだ準備していない方、いまならまだ十分間に合います。ネットする時間を減らして準備してはいかがでしょうか・・・。

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