精進料理のダシについて 3

 昨日ご紹介した他にも、いくつかのだしの取り方があります。

 まず、沸騰させてだしをとる方法です。昆布は昨日と同様にあらかじめ水にひたしておきます。そして点火したらそのまま強火で沸騰させ、沸騰したらボコボコするくらいの弱火~中火に落とします。そのままアクをとりながら2~3分加熱して火をとめ、昆布を取り出します。

昨日の方法は沸騰しないように火力を調節しなくてはいけないのですが、手間がかかる代わりに、昆布の香りが非常に良く出ます。そのため吸い物などに向いています。

上記の方法は、沸騰させることによってかなりだしの色が濃く出ます。その反面、昆布の臭みも多少出るように思います。そのため、沸騰状態を続けることによってその臭みを飛ばす必要があるわけですが、その時昆布の香りもある程度飛んでしまいます。また、アクがかなり出るのですが、私見ではその取り除いたアクに、せっかくの昆布の成分がかなり含まれているのではないか、と思います。

したがって、大きな鍋で大量にだしをとる場合は、火力の調整が難しいのでこの方法が向きます。また、煮物などのように、しょう油などの味を加えてさらに加熱する料理の場合も、だしの色や昆布の香りの重要性は低いため、こちらの方法が向いています。

総合的に見ると、沸騰させる方法だと色が濃く深みがあるだしが出て、沸騰させない方法だとあっさりした香り高いだしが出ます。その特徴を把握して用途によってだしの取り方を変える必要があるのです。

またさらに別の方法として、「水出し」といわれるだしの取り方があります。

昨日同様、昆布の汚れがあれば落とし、同じ割合で保存用の容器などに水と昆布を入れ、そのまま一晩放置します。(夏は冷蔵庫に入れておく)朝になったらかなりだしが出ているので、容器のまま冷蔵庫に移します。


精進料理のダシについて 3

だいたい半日~一日以上経つといたみ始めるので、早めに使い切る必要があります。

加熱しないのであまりだしがでないような気がしますが、だし用の良い昆布ならば水出し法でも十分にだしがとれます。むしろ、半日くらい経つとかなりの粘り気が出て香りも良くなります。

ただし衛生面を考え、加熱する調理に用いた方が無難です。

「水出し」でだしをとった場合には、その昆布はさらに別の鍋と水を使って加熱し、「二番だし」をとることができます。その場合、同じ昆布(20g)に対して水は1リットル~1.5リットルくらいが良く、沸騰させる方法が適します。

ところで、昨日紹介した文中の、「水2リットルに対して昆布20gが標準」という箇所について多少補足します。

実際に計量してみると、昆布を20gというのはかなり多い量で、おそらくふだんあまり昆布でダシをとったことがない方は「こんなにたくさん使うのか??」と驚くことと思います。

しかし吸い物ののように、だしで味が決まってしまう献立の場合は昆布を惜しんではいけません。精進料理に限らず、本格的な和食では、だしをとる際に非常にたくさんの昆布とかつお節を使います。もったいないからということでその量を減らすと、「精進料理=味がしない単なる薄味の料理」になってしまうのです。

(もちろん精進料理はなにがなんでも常に昆布をたくさん使わなくてはいけない、というわけではなく、あくまで吸い物を作る場合のベストのだしの取り方を紹介しているという点をお忘れなく。なければないように工夫するのもまた精進料理ですから)

また、「昆布20gにしては昨日の写真に写っている昆布は長さが短くないか?」と思う方もいるでしょう。実は昆布にはたくさんの種類があり、種類によって厚さが全然違うのです。良いだし昆布はかなり厚いので、同じ20gでも長さは短くて済みます。また、薄い昆布であればその分長さが必要になるというわけです。したがって、g数で表すのが適当で、長さでは表現できないのです。もちろん、その用途によって昆布を選ぶ必要があり、必ずしも「厚い昆布=良い昆布」というわけではありませんが、だしに用いるのであれば一般的に厚い昆布の方が良いだしが出ます。昨日の写真に写っているのはだし用の高級昆布ですので、20gでも長さが短いというわけです。

ということで次回からは昆布の種類について解説致します。

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