精進料理のダシについて 4 だし昆布の種類

 一口に昆布といってもいくつかの種類があり、その特徴を理解して、用途に応じて使い分けることが大事です。青森、岩手、宮城の太平洋岸でもわずかに収穫されますが、国産の9割以上が北海道産です。 昆布はおよそ3年かけて成長します。初冬に昆布の葉から胞子が出され、岩場に付着した胞子が成長して昆布になります。翌年の夏に3メートル以上に成長しますが、冬には根だけを残して流れてしまいます。これを「水昆布」といいます。
岩場に残った根がさらに翌年成長し、いわゆる昆布になります。初夏には成長を助けるため、間引きをしますが、間引いた未成熟の昆布を「棹前昆布(さおまえこんぶ)」といい、柔らかいため佃煮や煮物用、昆布巻き用に使われます。(だしには向きません)7月後半~9月前半くらいに収穫した昆布が最も状態が良く、だしに向いています。秋以降に収穫されたものはアクが強くなり、だしに向かないとされます。
精進料理のダシについて 4 だし昆布の種類

↑柔らかく煮物向きの「棹前昆布」

生産方法としては、「全くの天然もの」、「胞子を人工的に付着させるが、そのほかは天然ものと同じく2年間かけて自然に育てる養殖もの」、「特殊な培養法により1年で育てる促成栽培もの」に分けられ、前者ほど高級かつ高価ですが、信用できる販売店で購入しなければそこまではわかりません。実際にだしの違いとなると微妙で、おそらく目隠ししたら私は見分けることができません。それよりも保管状態や収穫時期、保存期間などの方が味に影響するように思います。

また、産地での乾燥方法には「天日で干す自然乾燥」と「工場内で人口的に温風をあてる機械乾燥」、またその併用とがあり、じっくり自然乾燥させた方がうま味成分が多くなると言われますが、正直言ってとくにラベルに書かれていなければ見分けることは難しいと思います。

○「真昆布」(まこんぶ)

函館から東部に突き出した亀田半島東沿岸で収穫される昆布です。切り口によって白と黒に別れ、白の方が質がよいとされます。さらに産地の中でも、収穫する浜によって特徴が違い、こだわる調理人はワインのように「○○浜産の○年もの」と指定して購入するほどです。尾札部(おさつべ)浜でとれる白口昆布は古くから宮中に献上されていたほどの高級品で、そのため「献上昆布」という人もいます。


精進料理のダシについて 4 だし昆布の種類

↑最高級の「真昆布」別名「山だし昆布」「献上昆布」

色は褐色で、身は厚く、葉脈が2本あります。

山を越えて函館に出荷されたことから、別名「山だし昆布」とも呼びます。(山のようにだしが出るからという説もあります)

だしの色自体は非常に薄い色で、香りも良くくせがない、まろやかなだしが取れます。そのため、あまり色をつけず調理する、吸い物などのだしが主役となる調理に向いています。

だしをとったあとのだしがら昆布も、煮物としてもおいしく食べることができます。値段も高価ですので特別な調理の際に用いると良いでしょう。

○「利尻昆布」(りしりこんぶ)

北海道の最北端、宗谷岬の西に浮かぶ利尻島、礼文島などで収穫される昆布です。稚内周辺から網走近辺までの陸地沿いでも収穫されますが、島でとれるものと陸地沿いでとれるものもおなじ利尻昆布とよばれるものの、厳密には区別して扱われ、島で採れるもののの方が高級とされます。


精進料理のダシについて 4 だし昆布の種類

↑関西風のだしに欠かせない「利尻昆布」別名「だし昆布」

真昆布に似ていますが、色が少々黒く、関西では「だし昆布」といえば利尻昆布のことを指す場合が多いようです。利尻島は火山灰で構成されており、雨水は全て地表に吸収されるため利尻島には川がありません。そのため島の沿岸は川の水が流れ込まないため他の産地より塩分濃度が高く、少々塩味が強い昆布となります。

真昆布のように清んで薄色のだしがとれます。おぼろ昆布などの加工品にも使われます。

記事が気に入ったら是非SNSでアクションをお願いします☆