縁起もののクワイ 精進料理レシピ2点

今回はおせち料理に欠かせない食材、「くわい」です。
くわいはオモダカ科の水生植物で、昔は田んぼの周りに生えていました。

歴史的にはかなり古く、室町時代の書物にすでに記載されています。しかしそのころの品種はまだ積極的に食べられてはいなかったようで、江戸時代になり、中国産のくわいがわが国に根付いてから、一般に食べられるようになったといわれます。
しかし最近はくわいを知らない若い人が多いようで、精進料理のお膳でお出ししても、「何これ?」と不思議そうな顔をする方がたくさんおられます。
しかしくわいの形を見ればわかるとおり、丸い玉の部分から芽がにょきっと出ております。これが「めでたい」とか、芽がぐんぐん伸びて「出世する」「家が繁栄する」という縁起ものとして長らくおせち料理の定番だったのです。また、時期的にもちょうど今頃から旬になるため、永平寺でもこの時期来客膳などの献立に良く使われます。

おせち料理を自宅で作らなくなりつつあるこの時代、くわいを知らない若者が増えているのは残念なことです。ぜひこのブログのレシピを読んでめでたいくわいを食べて欲しいと思います。

くわい

くわいは漢字で書くと「慈姑」。いろいろな説がありますが、最も一般的なのが、その形が女性の乳房に似ており、慈悲深い女性が子に乳をあげている姿にちなんで慈姑とよぶという説です。「姑」は、今ではふつう「しゅうとめ」のことを指すので、「なんでしゅうとめが子供に乳をあげるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。しかし漢和辞典を引いてみればわかりますが、「姑」という文字には「婦女の通称」という意味もあるのです。ようするに昔は女性一般をさして「姑」と言っていたわけで、したがって「慈悲深い女性」の乳房の意味が通るのです。
ほかにも、くわいの葉が農作業に使う「クワ」に似ているからとか、「いぐさ」に似ているので「食えるいぐさ」という意味でくわいになったともいわれます。

くわいはその小さなみかけに似合わずとても栄養豊富な食材で、中国ではかつて漢方薬にも用いられていたともいわれます。豆類に匹敵するほどのタンパク質、カリウムやマグネシウム、リンや鉄などのミネラル類、またビタミンEなど多くのビタミン類も含みます。そのため糖尿病・便秘に効果的で、美しいお肌を保ち、ストレス防止にも役立ちます。

くわいはそのまま食べるとアクで苦いので、江戸時代になって煮たり揚げたりという調理法が庶民に普及したことも、食材として一般化する要因となったのではないかと思います。今出回っているくわいは野生ではなくほとんど栽培ものなので、アクも弱いのですが、それでもしっかりあく抜きをしないと苦みが感じられます。わたし的には、あのうっすら残る苦みがたまらなく好きなのですが。
また、デンプン質が多いため、調理法によって独特のモチモチ感やシャクシャク感が楽しめます。

なお、市販されているおせち料理に盛られているくわいの煮しめは、色よく見せるためにクチナシの実や着色料などで黄色く仕上げてあることが多いのですが、わたしは特に黄色くする必要もないだろうと思います。自然のままのほうが美味しそうに見えます。特に黄色く仕上げたい場合には、まず米のとぎ汁で下ゆでし、その後くちなしの実を煮出して作った黄色い汁を使い、しょうゆを使わずに塩で味付けして仕上げます。

精進料理 くわいの煮物

○くわいの煮しめ
1 くわい6個の皮をむき、下部を平らにして、十字に隠し包丁を入れる。
芽の先の部分は適当な長さを斜めに切り落とす。
2 多めの水に20分くらい漬けてアクを抜く。
3 水気を切ったくわいを鍋に入れ、濃いめの昆布だし150ml、酒25ml,みりん25ml、
砂糖5ml、しょう油5ml、塩少々で弱火で火が通るまで煮て、
その後20分くらい煮汁にひたしておく。
(煮しめ用に濃いめの味付けになっているが、おせち用ではなく
すぐ食べる時には砂糖を入れない)
4 うつわに3を盛り、ほうれんそうなどのおひたしを添え、煮汁をそそぐ。

精進料理 くわいの素揚

○くわいの素揚
1 上記レシピの2まで進めてアクを抜いたくわいを、良く水気を切って
油で素揚げして、熱いうちに塩をふりかける。
☆なかなか火が通らないので、170~180℃くらいの低温でじっくり揚げる。
☆皮をむくとき、間違えて芽がとれてしまったり、大きすぎて素揚げには向かない
くわいの場合は、皮を向いた後薄くスライスして素揚げして塩をふれば、
「クワイチップス」ができます。

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コメント

  1. より:

    恥ずかしながらクワイを最近まで知らなかった者のひとりです。
    お節料理を作る習慣がない土地で育ったので・・・なんてちょっと悪あがきを・・・(笑)

    私が買い物に行く時間が遅いからか、未だに金柑に出会えず、甘露煮に挑戦できていません。

    クワイならすぐに出会えそうなので、試してみたいです。
    美しいお肌と書かれては、ますます気になります。

    余談ですが、最近、過去の記事にありました大根の皮の一品(塩もみをして、ごま油で和える)をよく作っています。

    最初は苦くて苦くて食べきれるか心配でしたが、ゴマをたっぷりふりかけて食べるうちに段々美味しく感じるようになり、ハマりつつあります。

    エコで簡単なレシピをありがとうございます。

  2. 参禅居士 より:

    はじめまして。定年後に坐禅をはじめてからお寺に通うようになった老爺です。宿泊坐禅会などに参加すると精進料理が出て和尚さんが食事のありがたさについて説法してくれます。そこで精進料理に興味が出たので検索してこのブログをみつけました。たくさん記事があるので少しずつよんでみたいと思います。なお僕は出版社に勤めていたので文章や写真を見る目が多少はあるつもりですがこの本文は管理者の方(何とお呼びすればよいのか?_)が書いているのでしょうか。とても丁寧でわかりやすく良いブログだと思います。写真はプロの方が撮影していると思いますが著作権の関係でブログの文字がかぶせてあるのだと思いますがとてもきれいでおいしさが伝わってきます。これが無料で読めてしまうのだから出版社が苦労するのも無理はないです。またお邪魔します。

  3. 典座和尚(管理者) より:

    凜様こんばんは、コメントありがとうございます。

    金柑は時期的にはすでに出回っていると思います。大きめのスーパーならあるかな、と思っても、大きいスーパーだと商品管理や消費者動向がしっかりしているため、置いてもその地域で売れないと判断される品は入荷しない場合があります。小さめのスーパーとか八百屋さんの方が季節モノを多く置いている場合もあります。

     また、もしかしたら果物コーナー(みかんとかと一緒に)並べてある場合もあるので探してみてください。

     たぶん、クワイの方が見つけにくいと思いますが・・・。
    この時期からの大根は、寒さにあたって甘みが増しますので、皮の塩もみがよりおいしくなってきます。消化の良い大根を食べておなかをスッキリさせてください。

     参禅居士様はじめまして、コメントありがとうございます。

    お寺での参禅会に通われているとのこと、良いご縁をお持ちですね。禅寺では特に、冬の時期は静かに坐禅をするのに適しているため、摂心といわれる集中坐禅を行います。坐禅会でいただく食事というのはなぜかとても美味しいんですよね。

     文章は私が書いております。誉めていただきまして恐縮です。しかし商用原稿と違い、思いつくままの書き殴りブログですので、読みにくい部分も多いかと思います。おかしなところがありましたらどうぞご教示下さい。

     なおブログ写真も自分で撮影しております。さすがにプロにいちいち頼んで撮影してもらうのは経費的に無理です。どなたかスポンサーがつけば良いんですけど(笑)ちなみにブログ写真について少し記事を書いてみますのでお読み下さい。
     
     ちなみに、私(管理者)のことは「管理者さん」「和尚さん」「住職」「典座和尚」「典座さん」などなどどう呼んでいただいてもかまいません。今後ともよろしくお願い申し上げます。

  4. より:

    典座和尚様

    クワイの方が見つかりにくいのですね。
    お節の定番なら出回るかな?と単純に思ってしまいました。

    今日も20時過ぎにスーパーに行き、ぐるりと探しましたが、金柑もクワイも見当たりませんでした。残念です。

    前回書き損ないましたが、大根皮の塩もみだけでなく、土鍋で炊くおかゆも良く作るようになりました。
    おかゆってこんなに美味しいものだったんだ!と感動しています。

    おかゆは味がないから嫌いだと思ってましたが、病気で味覚が狂ってるときぐらいしか食べたことがなかったからなのかな?と思いました。

    普段は精進料理にはほど遠い食生活ですが、こうして少しずつお気に入りレシピを増やして行きたいと思います。

  5. ぴーすけ より:

    くわいのことを調べていてここにたどりつきました。

    くわいの芽の処理の仕方について教えていただきたいのですが、
    幼き頃、実家でおせちづくりを手伝っていた頃から斜めに切るよう教えられていましたが、これはなぜなのでしょう?
    何も考えずにそうしていたのですが、
    縁起物として「芽が出るように」というものを摘んでしまうようで
    今年、そのまま素揚げにして並べたら、その写真を見た母からさっそく
    「芽はななめに切って!」と注意されました。

    いろいろ調べてみたのですが、
    確かにどのサイトでも本でも斜めに切るとあるものの
    その理由をかいているところが見当たりません。
    ご存じでしたら教えていただけないでしょうか。

    どうぞよろしくお願いいたします。