ぬか漬けのススメ 4 いよいよ完成

さて、一晩経って美味しいぬか漬ができました。
野菜をぬか床から取り出し、野菜に付着したぬかをなるべく取り除いてぬか床に戻します。
(その際、次の分の野菜を下ごしらえして漬け込むことを忘れずに)
できれば、クッキングペーパーできれいに残ったぬかを拭き取り、水で洗わずに切った方が風味が良いのですが、大根や人参は比較的簡単にそうすることができますが、ミョウガなどのように複雑な形をした野菜は、入り込んだぬかを完全に拭き取るのは難しいので、サッと水で洗ってもかまいません。

そして野菜を食べやすい大きさに切り、いろどりよくうつわに盛りつければ完成です。

ぬかの香りがほんのり漂う、栄養たっぷりのぬか漬けをお楽しみ下さい。
食欲が落ちがちな夏ですが、おいしいぬか漬けがあればご飯がすすみます。やはりメインの料理を引き立てるには、こうした実力派の脇役が演技を支えないと。
特にミョウガや人参、キャベツ、ナスなどはもはや脇役というよりメインディッシュといっても良いほどの深い味わいです。

今は真空パックになった漬け物がたくさん販売されていますが、ぬか漬けだけは、空気に触れると半日くらいで味が変わってしまうため、自家製の漬けたてにかなう製品はないと思います。ぜひ、手作りの美味しいぬか漬けを味わって欲しいと思います。

独り暮らしで、あまり一食にはたくさん食べない、という方の場合、食べる分だけぬか床から出すのが一番良いのですが、なかなか毎食そんな時間は無い方も多いでしょう。
その場合は、朝なり夜なり時間のあるときに1日分まとめてぬか床から取り出し、包丁で切ってうつわやタッパに盛りつけ、ラップをして冷蔵庫に入れておけば、3食分くらいならそれほど風味も落ちずに食べることができます。

夏野菜のぬか漬

それでは、ぬか漬けの栄養についてご紹介します。
ぬかは、たんぱく質、脂質、繊維質、カルシウム、リン、鉄、ビタミンA、B1、B2、ナイアシンを豊富に含んでいます。これほど色々な栄養素を含んでいるのは希有なのですが、残念ながらぬかを直接食べるわけにはいきません。そこで私たちの偉大なご先祖さまが考え出したのが、だったらぬかに野菜を漬けて染みこませればいいのでは、という名アイディアなのです。唯一ぬかに不足しているのがビタミンCですが、それは夏の野菜にたくさん含まれているので、夏野菜をぬか漬けにすればとってもバランス良い栄養素を摂取することができるのです。

そうした豊富な栄養素により、ぬか漬けには以下の効能があるといわれています。

・ビタミンBが豊富なため、糖尿病患者が陥りやすいビタミンB不足に効果があります。
・ビタミンB,ビタミンEがコレステロールを減少させ、またカルシウムが血管の組織を強化し、
動脈硬化や脳卒中を予防します。
・野菜の食物繊維が整腸効果を発揮し、便秘を解消し、大腸ガン予防効果があります。
また胆石を防ぐ効果もあります。
・ビタミンB2が代謝機能を活性化させ、脂肪の沈着を防ぎ、脂肪の燃焼を助け、
肥満の解消をうながします。
・カルシウムにより、骨や歯が強くなります。

それから、ぬか漬けが一番効果を発揮するのは、すでに一般社会ではほとんど見られなくなった、脚気(かっけ)という病気です。
脚気になっているかどうかを検査するために、むかしは膝を木づちのような?道具で叩いてその反応を見たのです。
脚気になると、頭がボーッとして、記憶があいまいになり、トイレが近くなりがまんできなくなって失禁してしまったりします。脚がむくんできて、指で脚の肉を押しても弾力がなくなって戻らなくなります。

どうして医者でもない私が脚気の症状についてそんなに詳しいかといいますと、実は禅寺で厳しい修行を積む雲水にとって、脚気は大敵なのです。
修行道場に入門し、質素な食事で急に栄養バランスがくずれ、とくにビタミンBが不足するために起こるといわれています。
私が永平寺に入門したとき、同じ年に120人くらいの仲間が上山しましたが、そのうち半分以上の雲水が脚気に苦しんでいました。いや、軽い症状の者も含めれば2/3くらいはいたかもしれません。
修行を続けることができないほどの重傷者もいて、数十人が入院しました。私自身はかかりませんでしたが、目の前で仲間が苦しむのを間近に見た実体験ですから、脚気のつらさはよくわかっています。
入門当初はただでさえ寝不足で頭が働かない中、脚気になった仲間は、今説明したばかりの鐘の叩き方を、5分後には忘れてしまうのです。それで発生した大失敗も数知れず。
あのとき私のぬか漬けがあれば・・・

そこまでわかっているなら永平寺でも食事にぬか漬けを出せば良いのに、と思うのですが、残念ながら1食300人分のぬか漬けは、かなり工夫しないと難しいと思います。
そうした事情もあって、私は永平寺東京別院の料理長時代には、修行僧の健康のために、特に新入門者が上山する時期にはぬか漬けを必ず食事献立に加えていました。永平寺に比べて所帯が小さいので、ぬか漬けを献立に加えること自体は難しくありませんでしたから。
そのおかげもあり?東京別院では、永平寺ほどは脚気は問題にならず、特に入院するような雲水はいませんでした。

修行僧の脚気に効く妙薬、ぬか漬け。生の野菜も、ぬか漬けにすればビタミンB2は3倍以上、ビタミンB1は10倍以上に増加します。雲水だけでなく、ビタミンやカルシウムが不足しがちな現代人、特に育ち盛りのお子さんにも、もっと食べていただきたい伝統食なのです。

次回ももう少しぬか漬けの話題が続きます。漬け方の補足などを少々ご説明したいと思います。

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Posted by 管理主宰者・典座和尚