包丁選びとお手入れの基本9 包丁選びの重要ポイント_素材

○3 包丁の素材について

※ここまで書いた内容も私の主観に基づいていますが、中でも今日書く内容は人によって意見が大きく異なると思います。私個人の今までの経験上、確信を持ってお薦めできる内容ですが、まあ信じる信じないは皆さんのご判断にお任せします。


毎日豆腐のようなとても柔らかいものだけを切っているなら別ですが、カボチャやゴボウ、人参のように固い野菜を切っていると、包丁の先端が削れて丸まってきます。刃先が丸まっていくということは、要するに切れ味が落ちるということです。
食材だけでなく、包丁の刃がまな板に当たることでも削れてしまいます。現在一般家庭でよく使われているプラスチックのまな板は、木よりも堅いので意外と刃先の負担になっています。
まあカッターの刃なども同様ですので、包丁の刃先がだんだん削れて丸まっていくというのは皆さんもイメージ的によくわかると思います。

ここからが包丁選びの核心部分です。
そこで、丸まった刃をふたたび尖らせるために砥石で研ぐ作業が欠かせません。同じ金属でも、硬いのと柔らかいのといろいろありますが、硬い金属で作った包丁ほど、たくさんの食材を切ってもなかなか刃先が丸まらないかわりに、研ぐのが大変になってしまいます。だからといって柔らかい金属だと研ぐ作業は楽にできますが、それは裏を返せばちょっと堅いものを切っただけですぐに刃先が削れて丸まってしまい切れ味が落ちてしまうことになります。
この意味がわかりますか?

柔らかければ研ぎやすいかわりに刃先がすぐに丸まって切れ味が落ちてしまいやすく、逆に硬ければ切れ味が長持ちするかわりに研ぎにくいということです。

たとえば先にお薦めできないと書いた量販店のセラミック包丁は、そもそも研がない=使い捨てを前提に作られているので、研ぎやすい柔らかさははじめから想定せず、刃の硬さに重点を振って作っているわけです。とてつもなく硬い素材なので、なかなか刃先が削れて丸くならないのが売りです。
まあでも半年とか一年使えばいくら硬くてもどうしても削れて丸まってくるわけですが、そしたらもう事実上研げません。また、鉛筆でも2Hとか4Hの硬い芯は、2Bなど柔らかい芯に比べてちょっと力を入れるとポキッと折れてしまいますが、包丁も同じで、材質を硬くすると柔軟さが失われて衝撃に弱く折れやすい包丁になってしまいます。

したがって、良い包丁というのは「適度な堅さの素材」で作られた包丁ということになります。
ある程度堅いものを切っても先が丸まりにくい=切れ味が落ちにくい素材で、なおかつ研ぐ際に苦労しない程度の柔らかさの金属というバランスの問題なのです。

それを良いバランスでクリアーしている素材は、わが国で古来刃物の素材として使われてきた「ハガネ」です。
昔の包丁はほとんど全てこの「ハガネ」でした。
切れ味もほどよく長続きし、しかも研ぎやすい。非常にバランスが良い素材です。

※ここでいう硬い柔らかいは単なる素材的な硬度でなく、包丁を使う上での感覚的な硬さのことです。また当然ながらステンレスにも硬い柔らかいいろいろありますが、ここではわかりやすくするために一般論を書いています。

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