典座和尚的・除雪用具と使い分けのコツ

最近道具の紹介ばかりしているように受け取られるかも知れませんが、道具のセレクトというのは何をするにしても共通の重要事項です。

たとえば太くてごつい出刃包丁は魚を骨ごと立ちきってまるごとさばくには大変便利ですが、出刃包丁でリンゴやオレンジをむくとしたらやりにくくて苦労するでしょう。逆に果物の細工切りに便利なペティナイフで大きな魚をまるごとさばくとしたら、できなくはありませんが無駄が多くて能率が悪すぎます。

除雪作業も同様で、自分の作業にあった道具を選んで買うことが能率的な除雪のポイントです。

1 スコップタイプ

まず最もお薦めするのはこうしたプラスチックタイプのスコップです。
あまり雪が降らない地域などで、とりあえずの備えとして一つだけ買うなら間違いなくこれで、オールマイティに使えます。


メーカーによりいろいろですが、この青い製品のように先端がプラスチックのままのものと、上の黄色のように先端が金具で補強してあるタイプがあります。
少し凍って硬くなった雪には、金具で補強したタイプが割れにくくて良いのですが、金具がついていない方がプラスチックの先に角度がついていて鋭角になっており、地面のコンクリートギリギリまで雪を削ってきれいに取り除くことができます。金具タイプは鋭角にすると危険なので、金具自体が少し丸まっているため地面付近の雪はうまく削れません。
それほど寒くない地域で、降った翌日には溶け始めることが多いなら先端に金具がない方がお薦めです。


ちなみによく都市部で売っている、幅が広くてメッシュになっているタイプは、10センチ程度の雪をちりとりで取るような感じで地面をすべらせ、すくい取って除雪するためのものです。
メッシュになっていて耐久性は低いので、このタイプで30センチ以上積もった雪を持ち上げようとするとすぐに割れてしまいますので要注意。あくまでも降ったばかりの柔らかい少量の雪を押し出してはじに寄せるためのもので、重い雪を持ち上げたり硬い雪に突き刺そうとしてはいけません。


スコップタイプは、地面をすべらせて雪を押し出して寄せたり、量が多ければすくって持ち上げ、別の場所に放り投げたり、時間が経って硬くなった雪を砕いたりと、ほぼ万能に使えます。

特に今回のように50センチ以上積もった場合、まず自分が歩く道を作らなくては始まらないわけですが、深い雪を掘って道を作るにはこのスコップタイプでないと難しいです。
スコップタイプで雪を掘り、腰の上まで持ち上げて脇に放りなげ、それを繰り返して道を作ります。降ってすぐならまだ雪が柔らかいのでそのまますくい掘れば良いのですが、陽が差して表面が溶け、一晩経つと夜間の冷気で溶けた部分が凍って硬くなります。


その場合はまず上の写真のように硬くなった表面の部分をプラスコップの先でグサグサ突き刺して割れ目を複数つけ、雪をほぐしてからスコップを深く突き刺して掘るようにします。このひと手間を略していきなり掘るとプラスチック部分が欠けて壊れてしまいます。

1 表面を突き刺しほぐす
→2 掘って雪を持ち上げ、脇などに放り投げる
→3 地面近くまで掘り下げたらまた1に戻る

この繰り返しです。


そうすればこうして人が歩く分の道を確保できます。当然ですが、この作業は雪の深さが深くなるほど大変です。今回は腰くらいまでで70~80センチありました。

腰の上まで雪をスコップで持ち上げて脇に放るのはかなりの労力です。手首や腕だけの力で上げようとせず、肩と腰を一体化させて身体全体で持ち上げるようにするとだいぶ楽です。
道の幅をどれくらい取るかについては、スコップ二本分の幅でかき進めていくと能率が良いです。一本分では進むスピードは速くなりますが狭くて身体が動きにくい上に途中で崩れやすく、実用的で
はありません。もちろん体力があって雪をどけるすぺーすがあればできるだけ広く掘り進む方が良いに決まってますが。

なお、もし雪の深さが30センチ以内であれば、わざわざ掘り進めずに、スノーダンプなどを使って雪を脇に逃がすなど、もっと楽なやり方もあります。


今回は隣宅までの約50mを掘り進めました。所要時間は約1時間、かなりの重労働です。
隣宅が途中まで掘ってくれていたので接続開通までもう少し。この辺は雪国のご近所どおし阿吽の呼吸で、お互いその日の都合などによってできる側が頑張る暗黙のルールです。ゴールが見えてくるとなんだかパワーが出ます。


隣宅までの50mが開通しました。これで回覧板を届けることができます。

2 ラッセルタイプ

さて、次の道具はラッセル式の雪かきスコップです。さきほどのタイプよりも横幅が広く、その分前後の長さが短くなっています。また根元の部分が上にせり出していて、除雪車のバケットのように雪を押し出すことに特化しています。


ラッセルタイプは、雪が20~30センチ程度以下の場合に有効です。このように下が平らに圧雪されてツルツルの状態か、アスファルトやコンクリートの上に積もった場合に便利です。
駐車場などある程度広くて平らな範囲の雪を押し出す場合に向いており、それほど広い範囲でなければスコップタイプで充分です。
あるいは一度きれいに除雪してツルツルになった上に、再度降り積もった少しの雪を除去する際などにも便利です。

なおスコップタイプと同じように雪を掘ったりすくったりすることも多少はできますが、柔らかい雪や少量なら耐えられるものの、スコップタイプと同じような感覚でバケット一杯に無理して持ち上げると破損してしまうので注意が必要です。あくまでラッセル主体の道具です。

3 ダンプタイプ

次はダンプタイプです。ママさんダンプとか呼んだりもします。
これは先ほどのラッセルタイプをさらに大型にして特化したもので、全体を持ち上げることはできず、雪の上をソリのようにすべらせて別の場所に運ぶための道具です。
逆に言えば1のスコップタイプとこの3のダンプタイプの中間が2のラッセルタイプということができます。

両手でバーをつかんで雪のある部分に先端を突き刺し、そのまま雪を載せて運びます。
当然ですが、下が平らな雪でないとうまく滑らせることができません。30センチくらいの積雪なら、自分の足は少し埋まりますが、雪の上をスーッと滑らせることができます。しかし50センチを越えると自分の身体が沈みすぎ、ダンプが腰のあたりの高さになるためうまく使えません。
ですから今回のような深い雪にいきなりこのダンプを使うのは難しいでしょう。


ダンプの先を雪に突っ込ませたらバーを押し下げて先端を上に上げれば適量の雪が上に乗ります。
あまり欲張ってたくさんの雪をすくおうとしてもこぼれますし、硬い雪を無理に押し上げようとすると破損しますので注意します。

ここまでをまとめると深い雪の場合はまず1の雪かきで掘り進んで人間が通れる最低限の道を作り、必要があればその道に2のラッセルタイプかこのダンプタイプを滑らせて進み、雪を載せて移動して車が通れるように道を広げるのが賢い使い方です。


1のスコップタイプでとりあえず左側に人が通れる道を確保し、このあと中央から右側にかけて積もった深さ80センチの雪をダンプで除去します。


こういう広い範囲で、ダンプを滑らせるための除雪した道が隣接している場所はダンプタイプの独壇場です。ただしすでに表面が硬くなりはじめていたため、1の場合と同様にまずスコップタイプで雪の表面を突き刺して割れ目を入れほぐしてからダンプの先を突っ込むようにしないと壊れてしまいます。また壁際を垂直に揃えてまっすぐに仕上げるためにもスコップタイプを併用します。


良い感じで雪が取り除かれ、車が進入するスペースができました。同じ除雪作業でも、この場合は「雪かき」というより「雪どかし」的な作業で、雪をどこか別の邪魔にならない場所に移動する作業です。作業時間約1時間30分、もしダンプがなくスコップタイプだけだったら5時間くらいかかるでしょう。

なお人間が通れるだけの道を作るだけなら、掘った雪を持ち上げて横に放れば良いのですが、このようにさらに広げる場合にはその雪をどこに運ぶか、という問題を考えなくてはいけません。

運良くたった一回だけドカぶりしてその後は晴天が続いて全て溶けてしまえば、狭い道を掘っただけで済みますが、多くの場合その後も春になるまで雪は降りますからそのうち道の両脇によけた雪が高くなりすぎてそれ以上雪を持ち上げることができなくなって行き詰まってしまいます。
となるといずれ雪の持って行き場所を考えなくてはいけなくなります。
日当たりが良い空いた場所に集めて山にしておくとか、なければトラックなどに乗せて河原や空き地など問題のない場所に捨てに行くしかありません。当然ですが、他人の土地に無断で放置してはいけません。

また関連して、せっかくきれいに除雪した道路に自分の家の雪を投げ捨てる人がいます。
まあ状況によってはやむを得ないこともあるでしょうけれど、法律的にも禁じられているとても危ない行為で、毎年冬になる前に回覧板でもそういうことをしないように注意喚起されていますが、それでもそうしている人を見かけます。
もしどうしてもするならよほど天気の良い日のお昼ごろまでに、日当たりの良い場所にうまく散らばせてすぐに溶けてしまうようにしなければいけません。寒い日や夕方に道路に雪を撒くとそれを車が踏んで固まり、アイスバーンになってしまいとても危ないです。また雪の塊が車にぶつかって破損させてしまうことにもなりかねません。


そこでうちの寺の場合は防火用水池に投げ込んでいます。一度に入れすぎると溶けずに固まってしまうので雪の溶け具合をみながら投入します。

4 その他の道具

まず上の写真は金属製の角スコップ、通称角スコです。
降ってから日数が経過すると日中に溶けた雪が夜間に冷えて凍り、かなり硬くなります。
それをプラスチックの除雪用具で掘ろうとするとすぐに壊れてしまいますのでこうした金属製のスコップを使います。
雪の時期以外にも土木作業に使えてとても便利です。

ごく狭い範囲しかないのなら1ではなくこの金属角スコでも充分です。
ただ金属製は重量があるので疲れやすいのと、気温によっては雪がスコップに張り付いてしまう場合があります。その場合はシリコンスプレーを吹きつければ雪離れがよくなります。


さらに硬い雪、あるいは完全に氷状態になった場合は先の尖ったシャベルを使います。
(シャベルとスコップの使い分けは地域によって違うとか?私の感覚だと先が尖っていたらシャベルですね)もちろんこれも冬期以外に地面を掘ったりする際にも使えます。


もっと硬い氷を砕きたいときのためのクワのような道具もあります。


それから意外と便利なのが竹ぼうきです。コンクリートやアスファルトに10センチくらい降雪してもその後気温がある程度上がりそうならば、竹ぼうきでざっと掃いておけばすぐに溶けてしまいます。一度きれいにかいた上に少しの雪が積もった場合にも有効です。


なお自動車に積んでおくための小型のプラ製スコップというのもあり、私は降雪時には必ず荷台に載せています。万一半どけのシャブシャブ雪にタイヤが取られてスタックした際も、このスコップでタイヤ周辺を除雪すればなんとか脱出することができます。

以上が私が常用している除雪用品です。その他、今回の大雪ではちりとりで玄関前を雪かきした強者もいるとか。それぞれの地域の事情や降雪量に応じて、用途に合った道具を使って効率的に雪かきすることが大切だと思います。
たかが雪かきスコップですが、使い方を間違えると能率が悪いばかりかすぐに壊れてしまいますのでご注意を。なおシーズンオフには直射日光が当たるとプラスチックが劣化してしまうため、小屋や日陰で保管するようにします。

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