珍味!青梅の酒かす漬け

ようやくお盆期間が終わり、一年で最高に忙しい時期が過ぎました。
「和尚さんもこれでようやくひと休みできるね。まあゆっくり休んでくださいよ」とお檀家さんによく言われるのですが、なかなかひと休みというわけにはいきません。

うちの地域では7月のはじめから8月16日までがお経回りや塔婆の準備などで忙しいのですが、こうして長期間にわたって忙しい毎日が続くと、どうしても時間が足りずに後回しになってしまう用事ができてしまいます。たとえば日々の書類の整理や届いた手紙などの仕分け、そしてお盆期間中の会計処理などなど・・・。結局、お経が一段落ついたとはいえ、しなくてはいけない仕事が山積みです。ひと休みどころか、だいたい毎年8月いっぱいは残務整理に没頭することになります。
まあ、お寺は毎日が修行ですから、休みがないのは仕方ありません。

青梅の酒かす漬

さて、8月9日のブログ記事で、青梅の甘酢漬けを紹介しました。
種を取り除いて果肉を天日干しするまでは同じ手順なのですが、その干して水気を抜いた青梅を、酒かす地に漬け込んだ珍味をご紹介します。

これ、永平寺で修行中に、精進料理の師である赤崎老師に教えていただいた想い出深い料理です。
実は福井県も全国10位に入る梅の生産地です。ある夏、永平寺から車で2時間くらい離れた三方(みかた)という梅の生産地に住む方が、たくさんの梅を永平寺に下さるということで、赤崎老師のお供で梅をいただきに行ったことがあります。
いただいたたくさんの梅をトラックに積み、帰り際にその方の家でいただいたお茶とともに、お茶受けとしてお菓子替わりに出されたのがこの料理です。もちろん、その家の方が手作りで作った、梅農家ならではの逸品です。

梅と酒かすの組み合わせなんてそれまで見たこともなかったので、正直言ってどんな味がするのかとおそるおそる口に運びましたが、これがまさに珍味というべき絶妙な味で驚いたことを覚えています。
いわゆる梅干しのイメージとはまったくの別物で、ほどよく酸味が利いたフルーツのような若い香りの青梅に、まろやかな味の酒かすが良く染みこみ、シャリっとした食感が涼しさを感じさせます。

あまりご飯のおかずとしてはそれほど合わないような気がしますが、会席料理の先付けなどにはピッタリだと思います。またその時はお茶でしたが、ワインや焼酎、日本酒なんかに良く合います。

その味に衝撃を受けた私は、帰りの車中で赤崎老師に「さっきの梅料理、どうやって作るんでしょうか?」とさっそく聞きました。

赤崎老師は、「お前も修行を終えて自分の寺に帰れば、お檀家さんの家にお経に行くじゃろ。そうすればいろいろなお茶菓子や料理が出てくるぞ。精進料理の修行を続ける気なら、ただボーッと食べてはあかん。これは!と思う料理に出会ったら、遠慮なく本人に作り方を聞くようにせい。それができるのは若いうちだけじゃ。若いうちは、何でも人に聞くことじゃ。年がいけば立場上聞きずらくなる。まあ、素直に教えてくれない人もいるが、うまい料理を出すような人は、自分の味を相手に味わって欲しいという気があるからな、聞けばたいていは親切に教えてくれるもんじゃ。ただ、あまり根掘り葉掘りしつこく聞いては無粋じゃから、もてなしの雰囲気を壊さないようにうまく聞くんじゃぞ。だいたいの作り方を聞いてあとは自分で分量を工夫せにゃあかん。それと、商売で店で料理を出す人に作り方を聞くのはいかんぞ。ともかく、いろんな料理に興味を持つことじゃ。」
とおっしゃり、料理法に興味を持ち、その場で聞くことの大切さを教えてくださいました。
永平寺に帰ったあと、作り方を丁寧に教えてくれたことを覚えています。

もちろん、聞くことができない場面も多いので、その辺の空気感を読むことは大事なのですが、赤崎老師の言うとおり、今でも珍しい料理に出会うとできるだけ作り方を教えてもらうようにしています。それがきっかけで相手と話がはずむことも多く、本当に赤崎老師には感謝しています。
そして教えてもらった調理法を参考にして自分なりにレシピを工夫すれば、まさしくそれが精進料理人としての自分の財産になるわけです。

酒かすは冬の時期に出回るものなのですが、冷蔵庫で保存しておけば夏まで持ちます。ただし新ものの頃とは風味が変わり、だいぶまろやかな落ち着いた味になっています。それがおそらくこの料理に良く合うのでしょう。冬が旬の酒かすと、夏の青梅を取り合わせた先人のアイディアに脱帽です。

この時期、もう青梅は入手できないので詳しい分量は今回は書きません。もしご要望が多ければまた来年青梅の時期にでもご紹介しようと思います。
暖めた酒かすをすり鉢に入れ、煮きったみりん、酒、砂糖、塩、白味噌を加えてよくすりあげます。

青梅の酒かす漬 漬け方

青梅の酒かす漬 漬け方

柔らかい酒かす地ができたらパットやタッパに移し、そこに種を取ってかわかした青梅を漬けます。冷蔵庫に入れて10日~2週間ほどで漬かります。

青梅の酒かす漬 漬け方
↑まず半分酒かす地をパットに入れ、青梅を並べます

青梅の酒かす漬 漬け方
↑その上に残りの酒かす地を載せてほぼ埋めます

青梅の酒かす漬 漬け方
↑1週間経って色が変われば漬け上がりです。なるべく早めに食べきります。

この料理、酒かすをたくさん使うのはコストがかかりすぎるために、一度に少量しか漬けることができません。しかも漬かったら1~2週間くらいで食べきらないと、こんどは漬かりすぎておいしくなくなってしまいます。
だからこそ珍味なのです。一年のうちにこの時期にしか口にできない貴重な料理。
手間ひまかかったオトナの味で、来客をおもてなしするのもまた風流なものですよ。

赤崎老師に教わった想い出の味、今年もよくよく想い出とともにかみしめながら味わいました。

青梅の酒かす漬
ちなみに敷いてあるのは梅の葉です。
多めの飲み物と共に出す場合は、酒かすを少々周囲に付けて出すと良いと思います。
飲み物が少ない場合や、酒かすが苦手な方へは、酒かすをよく取り除いてお出しください。

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コメント

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