苦い薬

さて先生から「ものすごく苦い」と言われた薬をおそるおそる飲んで(食べて)見ました。

これがもう、たいして苦くなくて拍子抜け。

さんざん脅かされていたため、自分の頭の中ではむしろどんなくらい苦いのか好奇心すら湧いていただけに、「え?この程度?」と肩をスカされた感じです。
栽培もののたらの芽とか無糖コーヒーくらいの苦さでしょうか。
こんなので苦いとか言ってたらゴーヤー食べれないよ!

次の診察の際に、先生から「どうでした、苦い薬ちゃんと飲みました?」と聞かれ、
「それが、あまり苦くなかったです。むしろ一緒に処方されたホルモン錠剤の方が苦かったくらいで、特に困りませんでした」と正直に答えると「え?あれは相当苦い薬でみんな嫌がるんですよ?おかしいなあ」と不思議がっていました。
味覚の中では渋みも苦みのうちに含まれますが、これらはちょっと特殊な味覚です。
もともと人間にとって苦みというのは「口にすると危険な成分」であることが多かったようで、食べたら毒になるような食べ物には苦みを感じるような自然界の不思議メカニズムがあると何かの本で読んだことがあります。腐り始めの食べ物が酸っぱくなることから酸味も同様に危険信号なのだそうですが、酸っぱさよりもより上位の危険を示すのが苦みなのです。

ところが長い歴史の中で自然界の苦みを減らす調理法や、毒=アクを抜く方法を開発してきた人間は、その苦みすら嗜好品として好んで口にするようになりました。甘味、塩気、酸味などとは異なり、苦みについては経験を積むことでおいしく感じるようになると言われます。
たとえば若者がはじめてビールを飲んだら大体「にが!何これ!」と思うわけですが、だんだんとその苦みがおいしくなってくるわけです。山菜なども子供はあまり好みませんが、年を取るとその苦みがたまらなく好きになったりします。
甘味は、赤ちゃんのころから人間にとって好まれる味つけであり、苦みは学習を通じて味わうことができる味覚なのです。

つまり料理の味つけで、塩かげんや甘味はある程度の標準的な基準があって、まあこれくらいの塩加減なら普通のお客さんは嫌がらないだろう、というプロの味つけ判断が通用するのですが、苦みについてはそうはいかず、人によってものすごく許容範囲にばらつきがあるため、苦い料理を出す際は特に注意が必要です。まあ塩や砂糖と違って、苦みを加える調味料というのは一般的でないのもそういう理由からでしょう。

ですからこの難聴の薬の苦みも、人によってはとんでもなく苦くて飲みにくいものであり、苦みに慣れた人=普段からコーヒーなどを好む(私がビールを好んでいるというわけではありませんが)人にとっては特に驚くほどではないということになるので。

なお現在も通院中で、快方に向かってはいると思うのですがまだまだ耳の調子が悪いです。
今年の夏は耳の不調とつきあいながら頑張るしかないようです。

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