春の恒期法要で典座和尚の食育説法 

群馬県内の曹洞宗寺院では、各寺ごとに多くの檀家さんや近隣の住職方が集まって「恒規(恒期)法要(ごうきほうよう)」と呼ばれる大法要が行われます。法要の時期は各寺ごとに異なりますが、農業県群馬らしく、畑仕事がはじまる春先と、収穫が終わってひと段落する晩秋に集中しています。

そして春先といっても幅が広く、中央部や南部の暖かい地域では、4月になると畑仕事が本格化してお檀家さんが忙しくなるため、3月に恒期法要を行うお寺が多く、私の寺が所属する北東部の教区(お寺組織の地区区分)は3月はまだ雪が多く、寒すぎて人が集まるには都合が悪いため、4月に各寺の恒期法要が続きます。

和尚仲間の間では、毎年○日は○○寺さん、□日は□□寺さん・・という風に決められた日にちにはお互いに法要のお手伝いのために行き来し合うのです。4月に入りましたのでうちのお寺ではお盆についでとても忙しい時期に突入しました。

恒規法要の内容は各寺ごとに異なり、ご先祖さまを供養する「施食会(せじきえ)」、お寺の初代住職を偲び讃える「開山忌(かいさんき)」、一年の無事や平和などの願い事を祈る「大般若会(だいはんにゃえ)」などが多いようです。またお寺によっては、せっかく多くのお檀家さんが集まる機会ですから、仏法に親しみ、教義をより深く理解してもらうために、法要の前や後に法話の時間を設けています。当日、住職は法要の導師を務めたり、お檀家さんからのちょっとした相談を受けたりと、諸々忙しくて自らが法話を行うことは難しいため、他のお寺の住職にお願いする場合がほとんどです。お檀家さんにとっては、いつも聞いている自分の寺の住職とは違う和尚の話を聞くというのは新鮮ですし、また同じ教えに対しても別の角度や別の話し方で聞くことで新しい発見もあるのです。

曹洞宗には「布教師」という宗派内の資格が設けられており、よりよい法話をお届けするために日夜研鑽を積んでおります。人前でお話するのは本当に難しいものですが、いつまでも机上で布教法を学んでいたのでは成長することはできません。法話の現場を重ね、反省点を克服していくことで少しづつ布教師として成長していくのだと思っています。

去る3月、群馬県内真ん中あたりの2つのお寺で、法話の依頼を受けました。

1つめは大本山總持寺で役寮をなさっておられるご住職のお寺です。すごく立派な伽藍と、整った設備に感銘しました。

精進料理を題材にして、命とは、そしてお寺に集まってご先祖さまの供養をするというのはどういうことなのかをお話し致しました。

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このお寺では書道教室が行われており、境内には使った筆を供養する「筆塚」がありました。道具を大切にし、愛用した後は感謝の気持ちを持ってお別れするのは料理でも同じです。やはりその道を究めると、分野は違っても同じ境涯に達するのだと思いました。

典座和尚の食育説法

そしてもう1ヶ寺はこれまた立派な名刹での法話でした。伽藍も立派ですが、「内陣」と呼ばれる、ご本尊さま正面部分の畳の縁がご本山くらいでしか見ない特製の誂えで、その他もろもろの気配りからも住職のこだわりを感じます。
ありがたいことに、このお寺での法話は2回目、つまり再登板です。二回目の御指名を受けるというのは、布教師としては1回目の法話が好評だったしるしでもあるため大変嬉しいことです。もちろん1回目とは話の内容を変えて、今回は施食供養の意義と、お盆の仏事の準備についてお話ししました。群馬でも都市部ではだんだんとお盆の準備が簡略化しつつあり、それとともに亡き人を供養する気持ちまでもが薄れてしまってはいないか、その点をみんなで考えていきましょうという内容です。

そしてなんと、法話前に爆弾発表があり、まだかなりお若いご住職がまもなく引退することとなり、今回の法要が最後だと!つまり私の法話が現住職にとって最後ということです。あらかじめ言えない事情もあったのでしょう。
急遽話を少し変えて、差し支えない範囲で、住職と力を合わせてお寺を維持していくことについてもお話しいたしました。
実はこうしてこの法要を最後に、突然住職が替わると法話前に伝えられたのはこれが2回目です。1回目のお寺のときはほんの少ししか内容変更ができなくて、こういうときはどう話をしたらお檀家さんのお役にたてるかなあ、と自分なりにあれこれ考えてはいたのですが、まさか今回それが役立つとは思いませんでした。何ごとも経験ですね。
もちろん、この2ヶ寺でのお話し内容を反省し、またどこかのお寺でご縁があればお話しさせていただく際に役立てたいと思います。

ご住職方、そしてご静聴下さったお檀家さん、ありがとうございました。

典座和尚の食育説法

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