東京のお盆・仏壇前に設ける本格的お盆棚の作法

東京のお盆準備

昨日紹介した、「5分でできる略式お盆準備ではいくらなんでも自分の気持ちがすまないよ、狭い東京のマンションだけどもう少しきっちり用意したい」と言う方のために、『独立したお盆棚は用意しないが、仏壇前にフルセットのお盆準備をする作法』をお届けします。

仏壇前での略お盆飾り作法

まずお仏壇の前に、仏壇と同じ高さか、少し低いくらいのテーブルか台を用意します。テーブルの広さは、たくさんお供えを置きたいなら大きめが良いでしょう。今回は、テーブルの上に仏壇の横幅90センチサイズの木板を載せて幅をゴザや仏壇土台の引き出しと同じくしました。

仏壇前での略お盆飾り作法

テーブルの上に、花ゴザを敷きます。柄がある一畳サイズのゴザを花ござといい、それを使う場合が多いのですが、なければ無地の畳ゴザでも良いです。ホームセンターや畳屋さんなどで売っています。なければ布やシーツなどをかぶせても良いのですが、まあお盆っぽい感じにするにはここは花ゴザが最適ですね。

仏壇前での略お盆飾り作法

テーブルと仏壇の間にはさむようにして笹を2本立てます。本来、この笹はお盆棚の四隅に立てて縄を上部に張って囲い、ご先祖様の霊が休む結界にするためのものですが、今回の場合はお位牌などは仏壇の中のままで祭壇に出さないスタイルのため、この笹に結界の意味はありません。ですからまあ四隅に立てず2本だけで良いのです。そもそも都会で笹を用意すること自体なかなか難しいでしょうから。

もし4本立てることができるなら、テーブル部分の前方と、仏壇の後方に立てて、仏壇とテーブルのゴザ上をすっかり囲ってしまうように立てて縄で囲えば、意味の上からもバッチリでしょう。なお、笹を立てる場合はペットボトルやビンなどに水を入れて笹の根元を差しておかないと、高温の室内では一日で笹の葉が枯れてしまいますのでご注意下さい。

仏壇前での略お盆飾り作法

次に、笹の葉に真菰の縄を渡したら、そこにほおずきや昆布、花、そうめんなどをぶら下げます。これはお供えものであると同時に、結界に日陰を作って涼しくしてあげる、あるいは亡き人の霊を美しいもの、おいしいものでもてなしてあげたいという供養の心を表した作法です。

仏壇前での略お盆飾り作法

ほおずきは提灯に似ているために供えられるといわれます。昔は提灯は高級品だったため、自然の中で採れるもので工夫してご先祖様の魂をもてなそうとしたのでしょう。今はお盆の時期のほおずきは逆に高級品ですので、このような人造品のほおずきを利用しても良いでしょう。

仏壇前での略お盆飾り作法

模造品のほおずきは、ぶらさげやすいようになっています。この部分を、真菰のひものねじり部分を少しひねって隙間を作り、通してからめます。

そうめん、お花、昆布など、何を吊すかは出身地域の風習や、自分の好みで選んで良いです。あまり重いものはひもがたるんできますし、笹の固定もしっかりしなくてはならなくなり、難易度が上がります。

仏壇前での略お盆飾り作法 仏壇前での略お盆飾り作法

地域によっては「お盆花」「金花」というお盆棚用の飾り花がこの時期店頭に並びます。都内~関東ではスーパーや仏具店などで入手できます。これを笹の支柱に結びつけるか、花瓶にさして供えるか、あるいは仏壇によりかけるなどして飾ります。金をベースに、緑、赤、紺などさまざまな色が売られていますが好みで選んで良いでしょう。

仏壇前での略お盆飾り作法

せっかくテーブルにゴザを敷いて、広いお供えスペースを作りましたので、たくさんのお供えものを用意します。まずは生花ですね。花瓶に季節の美しい花をいけます。暑い時期ですぐに弱ってしまうため、花瓶の中の水はこまめに補充します。花瓶の水の中に10円玉を2枚ほど入れると銅イオン効果で少し長持ちするようです。

仏壇前での略お盆飾り作法

盆提灯があれば組み立てて飾ります。電源を入れ、内部の灯籠が回ると、それだけでだいぶお盆の気分が高まります。なお地域によっては、亡くなってはじめて迎えるお盆(初盆、新盆)の際に、親族やご近所の方から盆提灯がお供えされる風習もあります。供えていただいた場合は、しまいこまずにきちんと飾ってあげるのが礼儀です。ほとんどの盆提灯が、組み立て式で、お盆が終わればまた分解して小さく収納できます。

その他、お墓参りに行く際に持参するご先祖様お迎え用のちょうちんがあればうまくひっかけて吊します。

仏壇前での略お盆飾り作法

お盆の塔婆があれば立てかけるなどしてお供えします。塔婆は檀家になっているお寺(菩提寺)にあらかじめ依頼して書いてもらいます。お寺によっては、お盆の時期にもれなく全檀家の塔婆を用意してくれ、お盆法要の後に配布するところもあります。お盆の塔婆は、一般的にはお盆中はお盆棚に供え、お盆明けにお墓にご先祖様を送る際に持って行き、お墓に立ててきます。

仏壇前での略お盆飾り作法

仏壇内部は基本的にいじらないスタイルですが、お線香立て(香炉)とろうそく立て、りん(鐘)だけはこれだけお供えものスペースが広いと奥の仏壇まで手を伸ばして線香を立てたりろうそくをともすのは難しいため、仏壇から出して最も手前に置きます。笹に火が燃え移らないように、ろうそくの長さに気をつけて下さい。なお、ろうそくが垂れたり、線香の灰が落ちて汚れやすいので、お盆や台などを敷いた方が良いと思います。他にも、いつも仏壇に供えているものと同じもので良いので、お茶、お水などをお供えします。

そして果物、お菓子などのお供え物をお皿や供物台に載せてお供えします。たとえば枝豆やとうもろこしなど、季節の野菜類でもかまいません。故人が好きだったものや、ご先祖様が喜んでくれそうなもので良いのです。お盆棚がいっぱいになるくらいたくさんのお供え物でおもてなししましょう。

仏壇前での略お盆飾り作法

そしてご飯の時間にはお供えのお膳を用意し、お盆棚の正面にお供えしましょう。毎食が無理なら、お盆期間中に何度かだけでもかまいません。作法は典座ネットお供え膳のページでたくさん実例を紹介していますのでご参照ください。

向こう側におられる故人の魂がお召し上がりになるのですから、箸の方が向こう側に向くようにお供えします。

そして昨日説明した「みずのこ」「牛」「馬」も忘れずに用意します。

さて、これらを写真上で図解すると以下の様な感じになります。↓

仏壇前での略お盆飾り作法

いやー、もうこれはかなり本格的なお盆準備です。とはいえ、仏壇からお位牌を出さないで、魂は仏壇の中に入ってもらい、その前にお盆棚を設けて荘厳する略式であることにはかわりありません。これならば仏壇前に90センチ四方のスペースがあれば用意できますので狭い部屋でもなんとか調えることができます。ここまでしっかり用意すれば、僧侶が読経に伺ってもバッチリですし、作法にうるさい親族などがお線香を上げに来てもきっと誉めてもらえると思います。

これなら東京だけでなく、地方でもマンション住まいの方などが応用できる作法なので8月・9月盆の方も是非ご参考になさって下さい。まあ、今は旧家でもない限り、昔ながらの巨大なお盆棚を用意できるような大広間は少なくなっているため、これからの時代はこうしたお盆準備が主流になっていくと思います。

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