続・化学だし使用の是非

 昨日は大変長くなってしまいましたが、もうしばらく続けます。

 昨日申し上げたように、わたしの持論は
「天然だしの方が良いのはわかっているが、修行者や本格的に料理を志す者ならまだしも、一般初心者ははじめのうちは化学合成だしでも良いから、まずは調理をやってみることが大事」
という意見です。
 誤解しないで欲しいのは、天然だしを否定しているわけではありません。予算的に可能であれば、当然天然だしをお勧めします。良い昆布を使うと味に格段の差が出ます。

 いやいや、最初から良い物を使った方が上達が早い、という反対意見もあるでしょう。
 それは確かにその通りなのです。ただし、それは予算に余裕があれば、という限定付きの話です。
 例えば、包丁。今は百円ショップでもそれなりの包丁が売っており、意外と使えますが、すぐに切れ味が悪くなってしまいます。きちんとした職人が作った包丁の方が料理の上達が早いという意見は私も賛成で、いずれ当ブログでも良い包丁を持つ大切さを解説するつもりでおります。しかし良い包丁はウン万円するので、誰もがすぐに買えるわけではありません。
 最初から本物を使った方が上達するのが早いというのは真理ですが、私としては買えない人を対象から外したくないのです。はじめは百円ショップの包丁とまな板でも良いから、とにかく精進料理をやってみて欲しいと思うのです。

 わたしは球技がずば抜けて下手なのですが、もし地元のレクレーションでサッカーをすることになったとき、サッカーの先生に「このシューズは2万円するのだが、上達には必要だよ。微妙なボールコントロールもできるしね。そんなズックじゃあ上手にボールを蹴ることはできないよ」といわれたら・・・多分この先サッカーをやるかどうかもわからないのに、へたくそな私が2万円もするシューズは買いません。もうこの時点でサッカーをやめてしまうのは確実です。でも、「ズックでも長靴でもいいからまずサッカーをやってみて!」といわれたら・・・。意外と楽しくてはまってしまうこともあるでしょう。のめり込むうちに、やっぱり良いシューズでないとうまく蹴れないな、と思ったときにはもはや2万円は惜しくないと思うのです。

 ともかく、だしが天然かどうかという些細なことにこだわっていても何も進みません。とにかく実践することによって得られるものの方が大きいのです。

 しかし逆に言えば、ここまでくどいほどにだしにこだわる必要性があるのも確かです。次回から当「典座への道~精進料理基礎指南~」では、化学だしを使う時の注意点と、天然だしについて詳しく解説していきます。

 「良い材料があるときも、あるいは粗末な材料しかないときも、上等な味が出せるように工夫せよ」 『典座教訓』

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