料理の向き

 某寺から毎月刊行されている機関誌が今月も届きました。
毎号その寺のできごとや法要の様子、またためになる記事などが多く掲載されており、多くの読者が楽しみにしている機関誌です。

 今月号で9月に行われた法要の様子が多くのカラー写真を用いて紹介されていました。
その中で、実際に作られた精進料理の写真を発見しました。

 今までは法要の写真などが中心で、あまりこうした料理の写真は掲載されていませんでした。ですから、今号で精進料理の写真を見つけたときは少しうれしくなりました。
 法要といえば本堂で行われる読経ばかりが強調されがちです。私たちは本堂で行われていることだけが法要ではない、ということを忘れてはなりません。

 法要をかげで支える台所、受付、案内係、そのほか諸々の係、どれも法要には欠かせない重要な役割です。さらにいえば、本堂内でもその中心はいうまでもなく導師ですが、片隅で鐘を叩く者も焼香の炭を用意する者も香炉の灰を調える者も、誰もが等しく欠かせない主役なのです。
 もちろん、限られた誌面の上では、全ての役にスポットを当てることはできません。必然的に、導師を中心とした本堂での一コマが誌面を大きく飾ることになるのもやむをえないことです。だからこそ、そうした事情の中で精進料理のカットが掲載されていたことに対しうれしさを感じたのです。いわば「影の主役」にもっとスポットをあてていくことが大事だと思います。

 ただ一つ残念だったのは、その精進料理の写真、非常にキレイに撮影されていたのですが、写真を撮る向きが逆さまでした。普通は、料理というのは食べる人の側から見てきれいに見えるように盛りつけがされますから、写真も食べる人の方向から撮影するのが一般的です。
 そうしないと、煮物などの盛りつけが逆さまになってしまい、写らない具が出てきたりするのです。
 ちなみに、法事の際などに、ご仏前にお供えしているお膳の向きが逆さまなのを良く見ます。これも、ほとけ様が食べるのですからほとけ様の方に箸が来るように向けないといけません。

 もちろん、拙僧は永平寺別院時代に「別院だより」編集および撮影係を担当していましたから、多忙な中での編集や撮影の大変さは少しはわかっているつもりです。限られた時間内に精進料理を撮影しようとしたセンスは大いにすばらしいと思いますし、かくいう私も大ミスを何度も犯しましたので偉そうなことはいえないんですけど、今度は料理の向き・うつわの柄の向きにも気をつけて撮影したらもっと良くなるのになあと思い、あくまでひとりごととしてつぶやいた次第です。
 ともあれ、色々な機関誌や会報などで、もっともっと精進料理を紹介する記事が増えることを願っております。

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