手打ちソバ その5 ついに完成


手打ちソバ その5 ついに完成

いよいよ手打ちソバ完結編です。

のし棒でのしたソバを切りやすいように折りたたみ、打ち粉をまぶしたまな板に移します。

移動せずにのし台の上で切っても良いのですが、包丁の跡がついてしまうので、面倒でも移動したほうが良いでしょう。

そして包丁でソバを切っていきます。ソバ切り用の包丁も売っていますが、ふつうの包丁でもかまいません。あまり短い包丁の場合は切りにくくなるので、その場合はソバの折りたたみ幅を狭くしてください。のしたソバの厚みよりも狭い幅で切るのを「切りベラ」といい、ソバの厚みよりも広い幅で切るのを「のしベラ」と呼びます。私の場合はソバをのす時点で少し厚めにし、それに合わせて麺も多少太めに切ります。細い麺の方が食感が良いという方もいますが、私は少し太めの方が歯触りが良いように思います。その辺は個人の好みの問題なので、自由に調整して作れば良いのです。自分の好きなように作ることができるのが手作りの良さなのです。

なお、、プロは「コマ板」という押さえの板をソバの上に載せて、それを少しづつずらしながら切っていきますが、特別細く切る場合以外は、なくてもかまいません。


手打ちソバ その5 ついに完成

切ったソバは、小分けにして「生船(きふね)」というフタ付きの箱にいれて10分~20分くらい放置します。これは、切ってすぐにゆでると鍋の中で浮いてきてしまうので、しばらく休ませる意味があります。その間にのし台などの道具を洗ったりして片づけておき、ゆでる準備をすると良いでしょう。生船は漆塗りの豪華なものも売っていますが、お皿やバットに載せて軽くラップをかければ十分です。なお、ゆでるまでに間が空きすぎると、ブツブツ切れるソバになってしまうので、その場合はタッパなどに入れて密閉します。

ゆでる際の注意点は、なるべく大きな鍋で、お湯をたっぷり使ってゆでることです。1人分のソバをゆでるのにお湯を5リットルくらい使います。一度にたくさんのソバをゆでるとうまくいかないのでその場合は数度に分けた方が良いでしょう。沸騰したお湯にソバを散らしながら入れ、菜箸でかきまぜます。細いソバなら1分弱、太くても2分以内にはでゆであがるので、干しソバの感覚で長くゆでるとドロドロになってしまいますので要注意。すぐにゆであがるので、差し水はしない方がうまくいきます。吹きこぼれないように、大きめの鍋で水位に余裕をもってゆでてください。もし吹きこぼれそうな時は火力を弱めます。干し麺のように長時間ゆでる場合は差し水が有効ですが、短時間勝負の生そばゆでの場合、差し水で湯温を冷ますのは経験上あまりよろしくありません。

箸でソバを1本つまんで食べてみて、ゆであがっているようならソバを網ですくってザルに移します。または、鍋ごと持ち上げて、ザルの上にまけても良いのですが、その場合食後のそば湯まで捨ててしまわないようにあらかじめそば湯の分はゆで湯をすくっておきます。

どちらにしろザルに移したら冷水をかけてあら熱を取り、湯気が収まったらザルごとボールに入れて水をひたし、ザルをゆすって一気に冷やします。ソバのぬめりを取るために、水を2,3度取り替えてそのたびにザルをゆすります。できれば直接触らないようにして、ザルを揺すってぬめりを取る方が良いのですが、慣れないうちは手でほぐすようにしてぬめりを取ると良いでしょう。これを「洗い」といいます。

洗ったあとは、氷水に10秒くらいつけます。ソバを引き締めるためです。ちなみに氷水で締めるのはざるそばまたは冷たいかけそばの場合で、暖かいかけそばの場合は行いません。


手打ちソバ その5 ついに完成

洗いと氷シメが終わったら、ザルやセイロの上に小分けにして盛りつけます。ちなみに、ソバ通の間で良く議論になるのが「もりそば」と「ざるそば」の違いについて。

これも諸説あって、どれが正しいという結論はないのですが、一つの基準として、「もりそばはセイロにもられ、ざるそばはザルに盛られている」という区別があります。もりそばを別名「セイロ」とよぶことからもわかります。

かつてソバをちぎれることなく打つのが難しかったころ、打ったソバを蒸して食べる「蒸しソバ」が流行しました。のちにつなぎが開発されてゆでてもちぎれなくなると、味の面ではゆでた方が格段に良いため蒸しソバはすたれてゆでソバが主流となりました。そのころのなごりで、「もりそばはセイロに盛られている」のだそうです。そして「ゆでソバはゆでて水を切るザルに盛られている」というわけです。
他にも、「もりそばは盛ったままで、ざるそばには刻み海苔がまぶしてある」という違いの店や、「そば粉の割合」や「汁の味」、「セイロやザルが四角いか丸いか」「セイロは上げ底になっているので量が少ないが、ザルそばのザルはあげ底していないので量が多い」と区別するお店もあります。どちらにしろ、味や量が同じで、海苔のあるなしやセイロが丸いか四角いかだけで値段が大きく違うのであれば私は迷わず安い方のもりそばを選びますが。

なお、セイロの形について余談を申せば、江戸時代の天保年間に、飢饉による原価の高騰から江戸のソバ屋の経営が悪化し、組合は幕府に対して値上げの許可を申し出たのだそうです。値上げの申請は認められず、代わりに底が盛り上がったセイロを使うことが認められ、実際はソバを減らして量があるように見せる上げ底のセイロが使われるようになったといわれます。

明治の頃にははじっこの空間を多くとることができ、多く見えるために四角いセイロが開発されたとも言われます。ソバ屋の経営も苦労が多いようです。

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