火の用心!消防団と消防署の違いとは

就任時にも少し書きましたが、昨年4月から地元消防団の責任者を務めています。

よく誤解されるのが「消防署」と「消防団」の違いです。テレビなどでもときおり混同している例をよく見かけるので、そもそも違うということさえ知らない方もおられるかもしれません。

大まかに言うと「消防署員」「消防隊員」は消火や救急の専門職で、24時間体制で勤務している公務員です。誤解している人の多くは、火事の際に消火活動をしているのはぜんぶ「消防署員」だと思っているのですが、それは大きな誤解です。

対して「消防団」「消防団員」は、ふだんはそれぞれ自分の仕事をしている一般人で、いざ火事や災害などの有事には現場に駆け付けて消火活動にあたります。身分上は「非常勤特別職の地方公務員」ということになっていますが、ふだんは普通の住民です。

都市部では、だいたい街中に一つは消防署がありますが、当地のような田舎だと、消防署はおもだった地域に一つか二つある程度で、過疎地域によっては消防署からかなり遠く、火災を通報してもすぐには消防車が到着できない場合もあり得ます。
そのため、消防団は各自治体が地域の事情に応じて設置するもので、自治体によって異なりますが、たいがいは各地域、または各集落ごとに設置されていて、公民館の隣などに詰所があり消防車がそれぞれ配備されています。
もし近所で火災が発生したら、地元の消防団員が自分の仕事を中断して詰め所に駆け付け、消防団用の消防車に乗って現場に急行し、本職の消防署員さんと協同で消火活動を行うのです。

すぐに現場に駆け付けるということが火災では大変重要です。火がまだそれほど大きくないうちに消火活動をはじめれば被害も少なく済みますが、建物の大半に火が燃え広がってからでは、もういくらホースで大量に水をかけてもすぐには消すことができません。
実際私も寺の境内を掃除していたらすぐ近所で火災が発生したことがあり、すぐに現場に駆け付けることができました。他にも近所の畑で農作業をしている農家や、商店の従業員、大工さんや会社員など、地元で働く団員ならすぐに対応でき、実際本職の消防車より速く現場に着くことも少なくありません。

もちろん全くの素人が火災現場に行っても、なんの役にも立たないどころかむしろ危険なので、ふだんから本職の消防署員さんからポンプ操作の訓練や救命講習を受けたり、自主訓練を積んでいます。また各団に配備された消防車やホースなどの備品の維持管理も必要です。

また火災の他にも、行方不明者の捜索や災害救助、地元のお祭りや盆踊りなどの交通整理や警備など、地域行事への参加も行います。

住職が消防団に入っているなんて、とよく驚かれるのですが、当地のように若者人口が少ない地域では、それぞれが仕事の理由を言いだしたらとても定員を確保することはできません。
どんな仕事の人でも分け隔て無く、何とかそれぞれの仕事を調整して参加協力しています。

団員は報酬もいただけるのですが、それはほんのわずかで、当地では個人で受け取ることはなく、詰所の維持管理や消耗品、訓練や火事などで集合した際の食事代などに使うため、実質は無償奉仕のボランティアです。
全国で約90万人の消防団員が活躍していますが、自分の仕事をもちながら消防団活動を行うというのは正直なところ非常に忙しく、体力的にも時間的にも厳しいものがありますが、自分の地域を自分たちで守るという精神で、皆がんばっているのが現状です。

この赤と黒のはっぴは、背中の○の中の文字は地区により変わりますが、ほとんど全国的に似たデザインが多いと思います。昨年の大震災の直後にも、この赤と黒のはっぴをまとった地元の消防団員が避難者の誘導や行方不明者の捜索などを行うようすが何度も報道されましたし、おそらく皆さんもどこかで目にしたことがあると思います。

このはっぴを羽織る時は、自分の都合は全て後回しにし、公のために奉仕する精神を忘れてはなりません。震災時の地元消防団の方々も、自分の家が倒壊しかけているのを後回しにして、道路の復旧や避難所での公共活動に励まれたとお聞きしました。
もともと黒だったはっぴも、何代にもわたって受け継がれる中で色がかすんでしまっています。それだけ何人もの責任者に受け継がれてきた証明でもあります。
このはっぴは消防団員としての誇り、伝統、責任を背負っている象徴のようにいつも感じています。

今年度、私は地元消防団の責任者を務めており、行事や訓練、会議など多くの公務が課せられ、またいつ緊急出動があるかわからないため、数日間留守になるような遠方からの精進料理関係の依頼はすべてお断りし、役職に専念してきました。
また震災後は現地へのボランティアに行きたくても行けないジレンマに悩みましたが、対象は違っても同じボランティアであることには変わりません。与えられた責務をしっかり果たすことが今の自分の責任だと反省し、一年間自分なりに頑張ってたつもりです。

就任してまもなくの昨年の4月に行われた当寺の大般若法要では、震災直後だったこともあり、例年の祈祷文に加えて無火災無災害の祈りを色濃く加えて導師を務めさせていただきました。
最近発表されたデータによると、昨年の前半、群馬県の出火率(人口1万人当たりの出火件数は2・96件で全国ワースト8位という残念な結果が出てしまいましたが、ご祈祷の御利益あってか幸いにも地元での火災は一件も発生しておりません。
自分の地域だけは、とか自分が役員をしているうちだけはなんとか火災が起きないように、という狭い考えではいけないのは充分理解しておりますが、それでもやはり本音としてはなんとかあと1ヶ月半、管轄範囲内で無火災であって欲しいと願う気持ちが正直なところです。責任者になってからというもの、万一の火事に備えて常に緊張して気が休まる間がなく、気が小さい私は夜もぐっすり眠れないほどですので。
ともかく残りわずか、与えられた任期を最後までしっかり務めたいと思っております。

火の用心 カチカチ!

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コメント

  1. ジョウコウIN より:

    消防団員ご苦労様です。私は消防団員は経験していませんが、昔勤めていたT病院で避難訓練の担当を任され、病院チームとして、町で行われた屋内消火栓操法競技大会に出た思い出があります。確か5人一組で力を合わせ規定時間内に的確に火点の標的を倒す規律と時間を競ったような記憶があります。大震災以降、絆という言葉を目にするようになり、この言葉の意味を考えさせられる一年でした。人一人の力は小さな力でしかありませんが、消防団員のように地元の仲間たちと日夜訓練に励み絆を深め力を合わせれば、大きな力が生まれると思います。どうかこれからも自分の生まれ育った大切な地区を守るため、団員同士絆の輪を広げながらがんばってください。