十数年の眠りから覚めた漆器

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先日、古い漆器を安く入手することができました。

時折ネットオークションをチェックしていますが、やはり良い状態のものは高額で手が出ません。

しかし良い品なのに安く落札できる場合が非常に稀ですがあるのです。
そういう運が良い出会いは、ずっとチェックしていて、だいたい2年に一度あるかないかですね。
まあ感覚的には、自分の所に来てくれる運命のようにしか思えなかったりします。

どうして良い品が安く落札できるかというと、理由はいくつかあります。
たまたま終了までの期間が短かったりして、偶然入札ライバルがいない場合が一番良いのですがまあそういうことはあまりないです。
他には出品物の写真が良く撮れていなかったり、説明文が簡潔すぎて入札者に警戒され、売れ残る場合があります。しかしこの場合は品物が実はひどい状態で、それを隠すために悪意を持って写真をブレさせたり、写真の枚数を少なくしたり、あえて説明を書かなかったりということもあるのでリスクも大きいです。
今までにも実際品物が届いてガックリきたことも少なくありません。

それを防ぐためには、まず質問をすることです。
回答がこなかったり、不誠実な書き方だった場合は要注意で、逆に隠し事をせずきちんと回答してくれる場合は信頼性が上がります。
さて、今回の話に戻りますが、ちょうど黒い漆器のお盆が何枚か欲しかったところ、低い脚がついた黒漆塗りのお盆が5枚1000円で出品されているのを見つけました。フチには金が塗ってあります。

これはもし今新品で買うと1枚2万円以上の品です。
それが1枚200円とは、100分の一の価格です。常識から言えば、使い古して傷だらけか、漆が剥げてボロボロの状態の値段です。

半ば信じられない中で質問を送り、表面に割れがないか、剥げたりしていないか確認したところ、未使用のまま倉庫に眠っていたデッドストック品だとか。

本当にこんなに安くて良いのかドキドキしながら入札し、競合者も出ずに無事落札できました。
他にも在庫があるとのことで、すべて30枚譲ってもらいました。
出品者は富山県の方で、ちょうど先日永平寺に行く直前だったため、無理にお願いして直接受け取りに立ち寄ることにしました。せっかく安く落札できたので、送料も節約したいですから。
漆器はデリケートなので、充分な包装をして送らないと運送時に破損してしまうおそれがありますし、30枚となると緩衝材も含めると、落札額より送料が高くなってしまいこともあります。

たまたま永平寺に行く直前に落札したのも何かの縁かもしれません。手土産品を用意して、最寄りのインターで降りました。出品者は親切な方で、とてもよく対応してくださりました。途中、高岡大仏など立ち寄りたいスポットがたくさんありましたが、永平寺に遅れては困るのでグッとこらえ、手土産を渡して品物を受け取っただけでUターンしました。

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さて調理場に戻って、さっそく漆器の状態を確認しました。
表面にカビが付着していることは事前に確認済でした。ただ問題はこのカビがどの程度の状態なのかということで、それによって価値が大きく変わります。カビが漆の内部まで侵食してしまっているひどい状況の場合はもうアウトです。

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和紙の袋に入れてあり、和紙は染みだらけでひどいありさまでした。しかしこの厚手の和紙が漆器を守っているのです。もし裸で保存されていたら、カビや湿気で全滅だったと思います。和紙と段ボール箱に守られていたため、数十年を経て蘇ることができたのでしょう。

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ぬるま湯と洗剤で丁寧に洗います。古い漆器を再生させるときには洗い方にもコツがあるのです。

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なんと、本当に新品状態でした。
中身がプラスチックなどの樹脂製のものもあるのですが、これは上質な木で、塗りもウレタンなどの合成塗料ではなく本物の漆です。
いやあ、良い品と出会うことができました。

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鏡のように蛍光灯が写るほどピカピカです。

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出品者に、「こんなに安くて良いんですか」と聞くと、「これは昔はよく売れた品で、うちでも大量に仕入れて扱っていたんだけど、もう今の時代、漆器は買う人はいなくてねえー。このまま無駄にするより、きちんと使ってくれる人がもらってくれた方が品物も喜ぶよ」とのことでした。
数十年の眠りから覚めた漆膳が喜んでくれるように、丁寧に使いたいと思います。

こんなこと書くとネットオークションのライバルが増えてしまって自分の首を絞めますね。

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