はじめてのデジカメ 調理写真その3

(前回の続きです)~

さて、いよいよ永平寺の台所で調理した献立を撮影することが許されました。

私は群馬の寺から、学生時代に使っていたコンパクトカメラとフィルムを送ってもらい、料理をするたびにせっせと写真を撮りました。
それが平成七年のことですから、早いものでもう12年も前のことになります。

永平寺にお参りしたことがある方はご存じだと思いますが、受付入口の階段下あたりに、参拝者の希望により記念写真を撮ってくれるカメラマンさんがおられます。この方は永平寺御用達(指定)の写真館に所属するプロカメラマンさんで、参拝者の撮影の他にも、永平寺内で法要や記念行事などがあった場合に修行僧の撮影をしてくれる方です。

修行僧は境内の外に出ることはできないため、私が台所で撮影を終えたフィルムは、このカメラマンさんに渡して現像してもらい、出来上がりの写真と一緒に、次に使うための新しいフィルムも持ってきてもらいました。私の希望で行っている撮影なので、現像費・フィルム代は当然自費です。
幸い、永平寺では、わずかですが毎月衣服代が支給されます。修行僧はそのお金で、タビや下着などを買うのですが、調理係に配属されていた間、そのお金はほとんど現像・フィルム代に費やしました。

永平寺時代のフィルムネガ  永平寺時代の調理写真

ちなみに上掲の画像はその頃撮り貯めたネガフィルムと写真の束です。その量の多さがわかると思います。これだけ撮ればあたりまえなのですが、とにかく写真代がかさんで困っていました。

さて、そうしているうちに月日は流れ、私は長くつとめた台所係から離れることになりました。永平寺では、会社で言うところの人事異動のように、一定期間経つと配役替えが行われます。あまり長く同じ係にいると慣れてしまうため、ちょうど仕事を覚えた頃、別の部署に配置換えとなるのです。
それによって、また新しい気持ちで緊張感を持って修行に励むことができます。その配置換えのことを「転役(てんやく)」といいますが、本人の希望を一切聞くことなく、修行僧を統括する老師(まあ人事部長みたいなもんでしょうか)によって采配されます。

私は台所係の後、禅師様にお仕えする係や、法要係、参禅者の応対をする係などいくつかの配役を経験した後、永平寺3年目の春に再び台所係に配属されました。先日お話しした係長にあたる役を拝命したのです。私はふたたび典座老師のもとで調理写真を撮り始めましたが、やはりかさむ現像費に悩んでおりました。

ちょうどその頃、デジタルカメラなる機械が登場しました。今からもう10年以上前のことです。今の便利なデジカメと違い、当時のデジカメはいろいろと不便だったのですが、とにかく現像費がかからないということで、貯金をはたいて初期型のデジカメを購入しました。エプソンのCP-500というデジカメで、当時6万円くらいした記憶があります。

はじめて買ったエプソンのデジカメ

今も大切に保管してありますが、あらためて見てみると今のデジカメの数倍もある大きさと重さなのに、画素数はたったの81万画素しかありません。携帯電話のカメラにも負けてしまいます。

メモリーカードの容量も今とは比べられないほど少なく、エプソン純正の15メガで十分でした。15メガっていうのは今主流の1ギガのメモリーカードの約70分の1の容量しかないのですが、それでも低画質モードだと200枚以上、最高画質でも30枚撮影できました。そして驚くことになんとカードだけで3万円以上もしたのです。合計10万円近くです。今なら一眼レフの中級機が買えてしまいます。

いくら現像代がかかっても、そこまでデジカメにかけるよりはまだフィルムの方が安いのでは?と思うことでしょう。いや、全くその通りなのですが、私には別の野望?があったのです。

なんだか話が長くなってしまい恐縮ですが、好評のようなので??まだまだ続きます。調理写真はもうちょっと待ってください。(つづく)

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