銚子市寶満寺さま報恩講のお供え精進料理紹介

浄土真宗寶満寺さま報恩講の精進料理

今年の六月に出張精進料理教室と講演を行った千葉県銚子市の浄土真宗寶満寺さまから、報恩講でお供えした精進料理のお写真が送られてきました。

・ゆかりのせご飯
・精進筑前煮 (蓮根・干椎茸・人参・ごぼう・里芋・絹さや・境内で収穫したぎんなん)
・酢の物(玉葱・蓮根・きゅうり・プチトマト)
・胡麻豆腐
・こんにゃくの味噌おでん
・大根と昆布の梅あえ(出汁昆布とお寺の梅で作った梅干しで)
・精進天麩羅(さつまいも・ピーマン・人参・蓮根・椎茸)
・別皿 りんごの赤ワイン煮
・味噌汁(冬瓜・油揚げ・しめじ)
・だんごのお汁粉(親鸞聖人はあずきがお好きだったという伝説にちなんで)

写真から、すごく丁寧に調理し、心をこめて盛り付けた様子が伝わってきます。

寶満寺さまでの出張料理教室の記事はこちら とこちらから

「報恩講」とは「浄土真宗の宗祖、親鸞聖人のご命日に営まれる法要」で、名称のごとく、親鸞聖人に対する報恩感謝を旨とし、単なる法要だけでなく、法話など一連の関連行事を含めて行われ、浄土真宗のお寺にとってはとても重要で、かなりの意気込みで迎える大行事だそうです。

ご本山では、「御正忌報恩講」と呼び、祥月命日を最終日として一週間にわたり行われ、僧侶や門徒はその間に本山を参拝することになっているのだそうです。そのため地方寺院では本山とかぶらないように少しずらして各寺で日程を設定することになっていて、一日で済ませるお寺もあれば、五日間かけて行うお寺もあるそうです。また親鸞聖人は十一月二十八日にお亡くなりになったとされるようですが、旧暦・新暦どちらをとるかや解釈等の関係で、派によって報恩講の日も異なるのだとか。

ちなみに曹洞宗では、永平寺の開祖・道元禅師、そして總持寺の開祖瑩山禅師、ともに九月二十九日に遷化しているため九月二十九日を「両祖忌」と呼び、永平寺では九月二十三日から二十九日までの一週間、總持寺では十月十二日から十五日までの四日間、「御征忌」(ごしょうき)の大法要を行います。(曹洞宗では「征」、浄土真宗は「正」で、おなじ御征忌でも文字が違いますね)そして例えば私が典座を務めていた永平寺東京別院では、同じく永平寺の禅師さまが導師をつとめる都合等もあり、一ヶ月あとの十月末に御征忌の法要を行っていましたので、諸事情で日程をずらすというのも宗派が異なっても同様だなあ、と感じました。

ただ曹洞宗の場合、本山同様に数日間かけて御征忌の法要を大きく行う一般地方寺院例はそれほど多くなく、もちろん大きく営むお寺も中にはありますが、供養のお供えと読経を比較的小規模に行う寺院、あるいは秋の彼岸とほぼ重なっているのでお彼岸法要中に併せて行うお寺がほとんどだと思います。浄土真宗さんのように、地方各寺院で大規模な行事を行う伝統が伝えられてきたのは、歴史的に門徒さん中心の活動をさかんに行ってきた宗派だからという観方ができるのではないでしょうか。

宗派が異なれば作法や伝統も大きく異なるため、とても勉強になります。寶満寺さんでは、お寺の台所で門徒さん手作りの振るまい料理が用意され、報恩講にお参りした方々にお出しするのだそうです。料理教室に伺った際に立派な台所ぶりに感心しましたが、そのための充実した設備なのだそうです。

「門徒さんが力を合わせて協力し、心をこめて、お供えの精進料理を作り、皆でいただく」と文字にすれば「おおー、それは素晴らしい!」と思うでしょうが、共同作業で料理をした経験がある人なら、それがどれほど大変なことなのかよ~~くわかることでしょう(苦笑)

段取りをつける坊守さん(ご住職婦人)のご苦労はいかばかりかと存じます。

まあ、おそらく自分で全部作っちゃった方が遥かに気が楽でしょうね。しかし、それでは供養の精進料理にはなりません。面倒でも、気遣いに疲れ果てても、門徒さんたちが皆で協力して作った精進料理を仕上げることができるよう、あれこれ配慮しなくてはいけないのです。やっぱり「おおー、それは素晴らしい!」のです。

今年も、あれこれトラブルが発生しながらもなんとか仕上がったのだとか。部外者が他人事っぽく評価するなら、そうしたトラブルもまた、門徒さんどうしが交流でき結束するための良いチャンスなのだと思います。もちろん、それをわかった上で、苦労を承知で毎年続けておられるのでしょうし、できあがった際の喜びもまた大きいのでしょう。

浄土真宗寶満寺さま報恩講の精進料理

寶満寺さまの報恩講は十一月一日~三日の三日間だそうです。法要だけでなく、参集した門徒さんに、わかりやすく教えを説く法話なども随時行われます。今年は特に、ご本山の門首が代替わりなさる関係で、いつも以上に充実した日程だったようです。

二日の夜に行われた逮夜法要後の食事は、近くのホテルにお願いした特製精進料理の折詰です。これは、いわゆる葬儀後などにいただく業者さんのお料理とはまったく雰囲気が違いますね。見てすぐに気が付くのは、通常の業者さん料理で多用されている、冷凍もの・できあいもののおかずがほとんどみられないことから、ホテル製とはいえ、公的に販売されているものではなく、おそらく特別に作られた、お手製感あふれる暖かみがある折詰だと思います。曹洞宗の僧侶による手作り精進料理も、容器に詰めたらこんな感じになりますのでよくわかります。

浄土真宗寶満寺さま報恩講の精進料理

夜の食事を外注するのは、すでに十一月二日から門徒さんによる翌日の料理の準備が始まっていて台所がおおわらわだからだそうです。まあ、無理して二日分だそうとしたら共倒れになる危険がありますからね、できる範囲で工夫するのは大切なことです。

なお報恩講期間中、ご本尊さまにお供えしていた西本願寺さまゆかりの「松風」とい
うお菓子をおさげして、お斎の食事に添えて皆で分けていただくのだそうです。さすが京都のご本山、雅で美味しそうなお菓子ですねー。どんな味がするのか興味津々です。

浄土真宗寶満寺さま報恩講の精進料理

胡麻豆腐は市販のものを使用しているそうですが、いずれは皆の手作りにも挑戦したいと願っているそうで、坊守さんはすでに密かに胡麻豆腐用の大鍋を用意してあるのだとか。少しずつ、目標を高く設定していくことこそ「精進」料理ですね。手作り胡麻豆腐ができあがったら、またお写真を拝見したく楽しみにお待ちしております。

今回は寶満寺様の素晴らしい報恩講の精進料理、ご紹介させていただきました。ご縁に感謝申し上げます。ありがとうございました。

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コメント

  1. 凡夫の浅知恵 より:

    ご紹介ありがとうございます。
    お供えの「松風」は石山本願寺が織田信長相手に戦をしていたときに食べられていた兵糧食をもとにしているそうで、小麦粉・白味噌・みりん・罌粟の実などが原料です。今のものは小麦粉を発酵させてすこしふわふわとした歯触りとほのかな甘さに仕上がったお菓子になっています。
    お供えをおさげしたものは若干固くなっていますが、みなさん「仏さまのおさがり」と言って喜んでくださいます。