精進料理のダシについて 2

 さて、間に他のテーマがずいぶん入りましたが、前回の続きで、精進料理のダシの取り方について解説します。使用する素材によって多少方法が違いますが、一番基本となるのが昆布を使ったダシの取り方です。

昆布ダシの取り方にしても、どんな料理に使うのかによって方法が変わるのですが、まずは、だし次第で味が決まるお吸い物用のだしの取り方、すなわち一番だしについて説明します。 まず、昆布の表面についている汚れを落とします。一度濡らしてから良く絞ったふきんで昆布の表面をこすります。・・・伝統的には先輩からそう教わりますし、ほとんどの書物にもそう書いてあるのですが、現在市販されている昆布のほとんどは、非常にキレイな状態で売られていますので、私見では汚れを落とす必要はないと思います。そのまま使ってもゴミや砂などほとんど出ません。  昆布の表面についている白い粉はうま味成分ですので、汚れていないのならばできるだけ拭いたり洗ったりしない方が良いのです。

以前生産者から、あまり状態が良くない昆布をいただいたことがありましたが、それは砂がたくさんついていて、逆にふきんで拭いたくらいでは落とせなかったことがあります。その時は水ですすいで砂を落としました。あまりに汚れていればうま味成分を犠牲にしても洗うしかありません。昆布は透明な包装にパックされている場合が多いので、購入する時点で砂がついていない昆布を選ぶと良いと思います。

つぎに、調理はさみで昆布の両はじに1?くらいの切り込みを入れます。その方がうま味成分が出やすいためです。

ちなみに、標準的には水2リットルに対して昆布20gくらいが目安ですが、濃いだしが必要なときや、だしの出が悪い昆布を使う場合は昆布を適宜増やします。

永平寺の台所で仲間から習ったのは、「前の日に昆布を水につけておき、翌朝点火して沸騰させ、2~3分したら火を止めて昆布を取り出す」、という方法でした。永平寺ではおそらく今でもそうやってだしをとっているのではないかと思いますが、その後の試行錯誤により、現在私はその方法では行っていません。

まず、水に漬けるのは1時間くらいで十分です。1時間くらいすると、乾燥していた昆布がふやけて自然な状態に戻りますので、それで良いのです。全く加熱しない水出しの場合は1時間以上水に漬けますが、加熱する場合は1時間以上漬けておいてもあまり違いがありません。なお漬けておく時間は、季節によって変わります。夏は厨房内が暑く水温が高いため、30分くらいつければ戻りますし、逆に冬は暖房なしの厨房の場合2時間くらいかかることもあります。

点火したら、鍋の大きさによっても違いますが、2~3分くらいで弱火に落とします。そして、沸騰しないように気をつけて温度を調節します。泡が鍋のフチのあたりにポツポツ出てきた状態(おそらく60~80℃)を3~5分くらい保ち、火を止めたあと鍋にフタをして30分くらい蒸らしてから昆布を取り出します。

こうして取ったダシが一番香りが良く、色もキレイなお吸い物向きの上品なダシが取れます。


精進料理のダシについて 2

記事が気に入ったら是非SNSでアクションをお願いします☆