涅槃団子のレシピ_お釈迦様のご命日に

涅槃図にお供えの涅槃団子

涅槃図にお供えの涅槃団子

○涅槃団子とは

お釈迦様がご入滅(お亡くなりになった)された2月15日を「涅槃会」(ねはんえ)と言います。曹洞宗ではお釈迦様がお生まれになった「降誕会」(ごうたんえ)、悟りを得た「成道会」(じょうどうえ)とあわせて「三仏忌(さんぶっき)」と呼び、丁寧な法要を行い、お釈迦様への報恩追慕を表します。

涅槃会ではお釈迦様がお亡くなりになった際の様子が描れた大きな掛け軸、「涅槃図」(ねはんず)を掲げ、「涅槃団子(ねはんだんご)」をお供えします。お寺によって涅槃会の法要の後、この涅槃団子を参詣者に放り投げ、拾ってもらう習儀があります。北陸地方に多い風習です。

涅槃会についてはお話ししたい点がたくさんありますが、今回はこの「涅槃団子」の作り方についてご紹介します。さまざまな作り方がありますが、私が今まで永平寺の台所、および永平寺東京別院で作ってきた製法です。色々な作り方があり、どれが正しいということはありません。特に、こねた後にはゆでて冷水で冷やして固めるという方法も根強く、大量に作る場合は便利だと思いますが、やはり私としては手間がかかっても蒸らした方が色つや、食感が良く仕上がると思います。

ぜひ、お釈迦様の涅槃会に合わせてご家庭でもお作りになって、お仏壇にお供えしていただきたいと思います。一般家庭では、13日あるいは14日の午後にお供えし、15日の夕方に下げて頂くのが良いと思います。固くなっていたらオーブンなどでお餅のように焼くと良いでしょう。

○法事団子にも応用できます

色を付けず真っ白に作れば、四十九日忌、一周忌、三回忌などの法事団子になります。世代間継承が断絶しつつある現在、作り方がわからないという方が増えてきました。ぜひ一度試して欲しいと思います。なお地域やお寺によっては、49個作る、とか49個を一対=98個作る、というような数の指定がある場合も多いようです。これはまあ曹洞宗の作法というよりも、いわゆるローカルルールですので臨機応変となりますが、だいたい500gの米粉で、小型49個作れます。1個10g計算ですね。ピンポン球サイズの大型を作るなら、800g~1kgで49個です。大きさも地域、またはお寺によって異なります。

まあこれは私個人の考え方ですが、昔と違って、法事の団子は何個作ればいいか、どのくらいの大きさに丸めれば良いかというような、かなり細部の話は、ばあちゃんや近所の人に気軽に聞ける時代ではないため困ってしまう場合が増えています。一番良いのは、いざという時に慌てないように平常時からそういう細かい点にまで気をつけて見ておき、地域の伝統を把握しておくことがベストですけど、なかなかそうもいかないですよね。

その場合、一番良いのはその法事を行う寺の住職、それが難しければお葬式でお世話になった葬儀社さんに直接聞くことです。経験上、トラブルになりやすいのは、「その地域に住んでいない遠方在住の親族」に聞くことですね。法事の団子の大きさや数などの作法は、先ほどもお話ししたとおり、宗派として統一されているわけでもなく、地域ごと、寺ごとに異なるローカルルールなので、たとえば群馬に住むお施主さんが、東北に住む親族に作り方を確認して群馬の寺に持っていったら、「何これ!」となる可能性は高いですね。味噌汁の作り方と同じですよ。ですから、遠い地方の方法を聞くのではなく、あくまでも地元の方、同じお寺で法事をした方に聞いてみるのが最良です。ちなみに当日よくあるもめ事として、遠方から来た親族が、「なんだこの団子は!おかしいじゃないか!」などと言い出すことがまれにありますが、慌てずに「いやあおじさん、これがうちの地域の(うちのお寺の)作法なんですよ」と返せば問題ありません。

○米粉は今はもう上新粉とは違います

涅槃団子には「米粉」を使います。つまり、白米をすりつぶした粉です。フードミルでお米を粉状にすりつぶして使えば良いのですが、今は袋入りの米粉も市販されています。

涅槃団子 調理手順 レシピ

ちなみに「上新粉」はうるち米(普段ご飯として炊いているお米)をすりつぶしたもので、粘り気がある餅米を使ったのが「白玉粉」です。その他にも「餅粉」などいろいろあり、製造方法も異なりますが、昔はそれら全てをまとめて「米粉」と呼んでいました。

しかしグルテンフリー、アレルギー対策、余剰米対策などでお米をすりつぶした粉の需要が高まってきた昨今は当時とは事情が異なり、現在は「米粉」というのはうるち米を非常に細かい粒にすりつぶした製品を呼ぶようになりました。つまり、上新粉をもっと細かい粉粒にしたものが「米粉」です。当然ながら、料理として使う際に仕上がりや食感が全く異なります。

つまり、昔はお米の粉類全般を総称して「米粉」と呼んでいましたが、今は上新粉をさらに細かくした「米粉」という独自の製品が定着している、ということです。この団子は、上新粉でも白玉粉でも作ることができますが、米粉のなめらかでツヤのある仕上がりは別格です。

○涅槃団子を作る際のポイント

第一に、正確に計量します。涅槃団子に関しては目分量が失敗の最大原因です。涅槃団子歴30年の私でも、キッチリ計量して作ります。

第二に、水ではなく沸騰した熱湯を加えることです。

第三に、ゆでるのではなく蒸すことです。

その三つを守れば、誰でも上手に仕上げることができます。

あとは好みで色付けを行うわけですが、今回は色粉3色+白を含めた4色で作ってみます。

白用200g、各色用を100g×3色で計500gで作ると色合いのバランス良く仕上がります。色つきの団子が多いとドギツイ印象になりやすいため、白を多めにすると良い(と私は思います)

慣れてきたら配分は自由に変えてください。

涅槃団子 調理手順 レシピ

色粉を用意します。食用色素という名称で、1本150円程度です。ケーキなどの製菓コーナーか、スパイスなどの調味料コーナーに売っていることが多いです。

白だけでも良いのですが、涅槃団子の場合「赤、緑、黄」を使うことが多いです。これは昔からこの3色の食用色素が入手しやすかったからではないかと私は思っています。

現在は、紫や茶色などの今まではなかった色粉も売られています。そのため今回は仏教信仰の象徴である仏旗の色になぞらえて、紫の粉も使い、計5色の涅槃団子を作っています。特に紫色は、あまり濃くすると黒っぽい仕上がりになってしまうため、入れすぎない方が良いと思います。紫色の色素がなければ、赤、黄、緑だけでも充分キレイに仕上がります。

○涅槃団子の調理手順とレシピ

1 米粉を計量します。基本的には白用が200g、各色用を100g×3色にします。紫を加える場合はさらに100g増やします。

涅槃団子 調理手順 レシピ

2 お湯を沸騰させます。くどいようですが熱湯でないとうまくいきません。

涅槃団子 調理手順 レシピ

3 200gの米粉に対し、沸騰した熱湯160mlを加えます。水分の入れすぎは失敗のもとです。一度に全て加えずに、1割ほど熱湯を残して一度混ぜ、どうしてもまとまらずパサパサしてしまったら追加で加えるようにします。

ただし米粉の状態によって10~20mlほど増やさないとうまくまとまらない場合もありますので様子をみながら調整します。

涅槃団子 調理手順 レシピ

熱湯を加えたら、冷めないうちに早く混ぜます。熱くてどうしても手で混ぜられない方は、木へらなりを使います。特に米粉300g以内の少量を作る場合は混ぜているうちにすぐ熱湯が冷めてしまいますので手早くまとめます。

涅槃団子 調理手順 レシピ

こんな感じで塊になったら、両手で全体を揉み、向きを変えてこねるようにして3~5分程練り上げます。この練り練り行程が仕上がりと食感に大きく影響するため、手が疲れますが入念にこね上げます。

涅槃団子 調理手順 レシピ

手のひらで押して向きを変えてまた押して、こねてこねて練り上げます。

涅槃団子 調理手順 レシピ

4 色を付ける場合は、色粉をまず熱湯で溶いて色のお湯を作ってから粉に混ぜます。粉の状態で混ぜてもできますが、均等に粉を混ぜるのが大変なので、熱湯に溶いてから混ぜる方が容易です。

米粉100gに対して、色の粉を1g程度加えます。

そして米粉100gに対しての熱湯は80ml、余裕を見て10ml足しますので、米粉100gに熱湯を80~90ml、色粉1gが基本です。

1gといっても微妙な重さは計量しにくいので、私はインスタントコーヒーに付属してくる、粉を混ぜる際に良く使う、プラスチック製の小スプーン?マドラー?の超小型さじを使っています。色にもよりますが、だいたいこのコーヒー用さじ1杯が目安です。

本堂など、薄暗い場所でお供えするには、ある程度濃い仕上がりでないときれいに見えません。しかしご家庭のように明るい照明下では、あまり色を濃くするとドぎつく見えてしまうこともあります。初めて作る際は濃すぎないように気をつける方が良いと思います。涅槃団子 調理手順 レシピ

インスタントコーヒー用の小さじ1杯に、熱湯90mlを注いで溶かします。今回は色が見やすいように豆腐の空きパックを使っています。

涅槃団子 調理手順 レシピ

白の粉と同様に、米粉100gに対し色の熱湯を様子を見ながら少し残して加え、練り上がりをみながら増量します。

涅槃団子 調理手順 レシピ

涅槃団子 調理手順 レシピ

涅槃団子 調理手順 レシピ

白と同様に各色こね上げます。あまり時間があくと先にこねた分が乾いてしまうため、先にこねた分はラップや濡らして絞ったふきんをかぶせるなどしておきましょう。

涅槃団子 調理手順 レシピ

5 蒸し器に、張り付き防止のためのくっつかないツルツルペーパーを敷きます。まあ敷かなくてもできますが、敷いた方が確実にキレイに仕上がります。適時、蒸気が通るように金串などで穴を開けて、鍋を沸騰状態にしておきます。

涅槃団子 調理手順 レシピ

6 練り上げた4の団子を、細長く成形します。握ってだいたい細長い形にしたら、調理台やまな板の上でゴロゴロ転がして、丸い棒状にします。この時ボロボロと崩れてしまうようなら、練り足りないか、熱湯が不足しています。

なぜ細長くするかというと、上記のように練り不足を確認する意味もありますが、団子を均等な大きさにするために、こうして棒状にして、同じ厚み分だけちぎるなり、包丁で切るなりしてから丸めると、同じ大きさに仕上げ安いからです。

ですから、大きな塊状態から適宜ちぎって丸めても同じ大きさにできる慣れた方ならこの作業は不要です。

涅槃団子 調理手順 レシピ

各色細長くして、大体1センチ8ミリ~2センチくらいの厚みで切るなりちぎるなりして、手のひらに挟んでコロコロ丸めて丸くします。

涅槃団子 調理手順 レシピ

7 100gで小型で約10個、大きめで7個くらいできます。蒸し器にいれ、中火で約15分蒸らします。蒸し器の中で隣同士貼り付かないようにします。

涅槃団子 調理手順 レシピ

涅槃団子 調理手順 レシピ

8 お盆やトレーなどにくっつかないシートを敷き、蒸し上がったらすぐに並べ、(この際も隣とくっつかないように並べます)うちわで扇いで冷まします。

3分ほどしたら、団子をひっくり返して今までお盆側になっていた接地面を上にし、同様にうちわで扇いで冷まします。 涅槃団子 調理手順 レシピ

一日冷所に置くと、カチカチになり、ツヤが出てきます。すぐに積むとくっついてしまうため、一日置いてから山積みした方が下げて食べる際には便利です。

涅槃団子

涅槃団子

9 なお永平寺では単色を各色作るのではなく各色を混ぜてまだらにして作っていました。(現行の保証はできません、私が雲水及び永平寺別院の典座だった際の方法です)

手順6で細長くした各色の棒を、互いにくっつけて太い1本にします。

涅槃団子 調理手順 レシピ

涅槃団子 調理手順 レシピ

10 1本にまとめたものを単色の際と同様に2センチほどでちぎり、しっかり圧着させるようにして手のひらでコロコロ丸め込みます。

涅槃団子 調理手順 レシピ

この際、ちぎった粒を指でさらにもみこみ、練るようにすると模様が細かく複雑ままだら模様になります。あまり練らずにそのまま丸めれば、各色があまり混ざらずシンプルなまだら模様になります。どの程度練り込むかはお好みです。

涅槃団子 調理手順 レシピ

11 単色と同様、15分ほど蒸します。加熱すると、色の感じがだいぶ濃くなります。

涅槃団子 調理手順 レシピ

涅槃団子 調理手順 レシピ

涅槃団子 調理手順 レシピ

12 同様にうちわで扇いで冷やし、ひっくり返して底面も扇ぎます。

涅槃団子 調理手順 レシピ

なおお供えする際には長方形の紙を以下のように折って敷き紙とします。お寺では「奉書紙」を使いますが、コピー用紙や半紙でも良いでしょう。

涅槃団子 調理手順 レシピ

涅槃団子 調理手順 レシピ

涅槃団子

涅槃団子

涅槃団子涅槃図

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