お堂の床をDIY_その2

さて、ビフォーアフターのBGMを流したいところですが、予算節約で実用本位がテーマなので驚きのギミックや仕掛けはありません。


(ビフォー) 昔はおそらくこの部屋で祭礼で出す料理を作っていたと思われますが、もはや床板が腐っており上に乗れないので事実上使用していませんでした。写真だと頑丈そうな床に見えますが実際はボロボロのガタガタです。


(アフター)「なんということでしょう~」予想以上にきれいになりました。畳を新たに入れる予算はないので、おしゃれなフローリング式にしました。といってもこれはフローリング用の板ではなく、コンクリート型枠用のウレタン塗装合板(カラーコンパネ)です。これが意外と性能が高く、表面はツルツルで汚れを拭き取りやすく、掃除しやすい素材です。一般住宅の室内には使えませんがお堂なので大丈夫です。


全体的に細かい部分も手を入れてきれいになりました。実際に祭礼の時には薄べりという畳の上側だけをつなげた和風のカーペットのようなものがあるのでそれを敷いてさらに座布団を敷くのでお尻も痛くありません。床はネジで留めてあるので、もしいずれまた床下に異常が発生した場合は簡単に床板を外して補修することができます。何よりも掃除がしやすくなってありがたいです。

何よりも、今まで床が落ちそうで歩くのもやっとだった床がしっかりしたため、天井や棚などの壁から上の部分も踏み台にのってきちんと掃除ができるようになり、お堂内部全体がきれいになりました。やはり何ごとも足元がしっかりしていることは重要だとあらためて気が付きました。


(ビフォー)


(アフター)
いやあ、自分で言うのもなんですが見違えるような出来映えとなりました。苦労したかいがあります。プロの大工さんがみたら呆れるかもしれませんが実用的には問題ありません。
祭壇の前だけはカラーコンパネではなく杉の板張りです。フローリングの板を張る場合、畳一畳分で最安品で4000円~なのでここは4畳ですから16000円かかりますが、この杉板は一畳分で1000円なので4000円で済みました。その上に手持ちのカシュー漆を塗ってしあげ、段差部分には床下と通気させるためのメッシュパネルを左右に取り付けました。これで職の体重が0.2トンほどまで増えてもびくともしない床になりました。


いままで床や畳が異常に腐っていたのは、普段は戸が閉まっているお堂に湿気がこもるためです。
そこでふつうは基礎のコンクリートにはめて使うステンレスの換気口をお堂の上部に向かい合わせになるように壁をくりぬいて数カ所取り付け、ふだんから風が通りぬけていくようにしました。ふつうは丸い形の、フードがついた換気口を使うのですがあれは換気扇と併用しないと今ひとつ風が通りにくいため数カ所だけ取り付けて、この角形の基礎用通気口をたくさん使いました。プロの大工さんはここに使うことはおそらくないのですが予算と実用優先です。

また写真だとわかりにくいかもしれませんが、今までは桁の上と屋根の野地板との間に隙間があいており、そこからコウモリやネズミなどが入ってフン害に悩まされていました。この隙間に面戸板と呼ばれる角材を入れて隙間をふさぎました。垂木の間の寸法が各所違うのでいちいち合わせてカットし、お堂の周囲ぐるりと囲むように差し込んでいく作業はかなり苦労しましたがとりあえずその後何度か事後処理に行きましたがコウモリは入っていないようです。

はじめに引き受けた時は、正直いうと自分でちゃんとできるか少し心配でした。物置や犬小屋ではなく、大切なお堂ですから、やっぱり失敗しました!ではすみませんから。
預かったカギを役員さんに無事返した時はホッと安心しました。

いやーしかしこれだけの作業だとホームセンターから資材を軽トラックいっぱいに積んで運びこむだけで半日かかる重労働です。材料運搬の重さと工具の振動で夜になっても手の震えが止まらなくなり、作業がおわるまでは包丁も持てず精進料理活動は完全に休止していました。
お堂には一日に何人かの方がお参りに来るのですが、作業服+マスク+ヘルメットの私がお堂で作業しているのを見ても誰も和尚とは気づかず、マスクを取って挨拶してはじめて「え?和尚さん?なにやってんの?」と驚く様子がなにげに楽しかったです。

遠方からきた観光の方などはそもそも私の顔を知らないため、最後まで大工さんだと思って帰っていった人もたくさんいました。そのおかげで?意外な発見がありました。
このお堂の周辺は大変風光明媚で自然豊かな景勝地です。お堂にお参りするための駐車場やトイレ、近くには川も流れているので観光客が少なからずやってきます。
住職や役員さんがいる祭礼の時は、当然のことですがお行儀が悪い参拝者はいません。
ところが監視されていない=大工さんしかいない、となると遠方からきた地元住民ではない一部の観光客はとんでもないことをしでかします。私が見ている前で吸い殻や空き缶を投げ捨てる人、賽銭や供物を持ち帰ろうとする人。中には駐車場にテントを張ってキャンプをはじめ、焚き火をしてなんとその焚き火をしっかり消さずに煙を出したまま帰った馬鹿者もいました。

いうまでもなく、そんなマナー違反の人は全体からみればごくわずかで、多くの方は真摯に参拝するためにお堂を訪れています。信心深く参拝するなら、コーヒーの空き缶をお堂の脇に捨てるはずないですよね。キャンプしていた方は、厳密にいえば私有地である駐車場に無断でキャンプをして焚き火したわけですから明らかに法律違反だと思いますが常時見張るわけにもいきません。たまたま私が毎日通っていたので残り火を消火できて良かったですが、気づかずに風が吹いて山火事にでもなったらと思うとヒヤッとします。

役員さんと相談し、余った合板を利用してとりあえず注意喚起する看板を立てましたが効果はどうでしょうね。
こうした不届き者対策も地方のお堂がかかえる今後の課題です。

記事が気に入ったら是非SNSでアクションをお願いします☆

コメント

  1. 同期の某布教師 より:

    え、これ自分一人で?
    さすが器用ですね。
    さらっと記事にしてますがこれってものすごいことだと思いますけど?補修前と補修後、別物に見えます (^^)/

    住職が自分でやると言いだすのもある意味すごいですが、それを了承する総代さんもすごいです。一体どんな関係なのだ?理解不能です。

    自分は鋸で板をまっすぐ切ることもできず中学の技術家庭で通信簿2だったので尊敬します。
    うちにも古い6畳ほどの稲荷堂があるので今度お願いしようかな。

    しばらくブログ更新が止まっていたようなので、ちょっと心配していましたがこれだけの大工事を請け負っていたのが理由だとわかり安心しました。再開後のご活躍をお祈りしています。

  2. 典座和尚(管理者) より:

    おっと、同期だけでは今ひとつ誰なのか特定できないので残念ですがお顔が思い浮かびません。

     確かにふつうの住職だったら自分でやろうとしないでしょうね。中学生の頃から、必要な箱やら本棚、下駄箱などをDIYしていたので経験値が多少はあるつもりです。今は電動丸ノコやらインパクトドライバーなどを中古で揃えたので昔のように手ノコとクギではない分楽で正確になりました。
     梅干しをしまっておく蔵や食材蔵なども自作したのである程度作れます。大工仕事も料理の手順と似ている部分があり、段取りが大切ですね。

     冗談でしょうが、大切な貴寺の稲荷堂はとても無理ですからどうぞ宮大工さんにお願いなさって下さい。

     おっしゃるとおり5月は大工仕事でつぶれました。これからその分ブログ更新しようと思いますので何卒御指導の程、よろしくお願い申し上げます。

     って、ほんとに誰だろう?

  3. 小林信一 より:

    世の中には心ないことをする人たちがいるんですね。
    同じ日本人として恥ずかしい!

    ところで、コンパネとは考えましたね。
    囲炉裏の枠も芋継ぎじゃなくて45度の木口で継いで綺麗に納めてますね。
    今度大物作るときは声かけてくださいね。
    インパクトドライバーもって手伝いますから。

  4. 典座和尚(管理者) より:

    信一さま
    コメントありがとうございます。

    昨年度でそちらを退職なさった、フ□オさんがお堂の会計役員さんで、たいへんよくして下さいました。数十枚の畳を運び出してくれてとても助かりました。

    いずれ信一さまが退職した年には、今度はお寺本体を改修することにしますので、インパクト持参でお越し下さいm(_ _)m