手作り梅干しと市販品の違いとは

手作り梅干しの記事を全て読んで下さった方は、だいたいの手順を理解して下さったと思います。
では市販の梅干しも同じ作り方かというと、答えはNOです。

正確に言えば、同じ作り方ではないものが多い、というべきでしょうか。

もちろん市販の梅全てがそうだとはいいませんし、中には昔ながらの手作りを売りにしている梅干しもあります。また工場での製造方法も、メーカーによってそれぞれ大きな違いがあります。
ただざっくばらんに言うと多いのはこういう方法です。

1 まず梅と塩を混ぜて重しをかけるなどして梅酢を出します。
このとき、塩をだいぶ多めにし、短時間でかびる心配なく梅酢を出す場合が多いようです。

かびさせることなく確実に漬けるには、塩が多い方が良いのですが、手作りの場合はこのとき抽出させた梅酢をそのまま漬け酢として使うため、あまり塩を多くするとしょっぱくて食べられなくなるので15~20%程度にします。

2 塩を大量に使って漬けた梅を、水にひたすなどして塩抜きします。
つまり生産性向上のために増量した塩けを、水で流すのです。

3 塩を抜いた梅を、別途作っておいた調味液にひたして味をつけます。
この調味液はそれこそメーカーによって違うわけですが、1で出たしょっぱい梅酢をベースにして、甘味料やうまみ成分、クエン酸や保存料などを配合したものです。

要するにこの液の味が、市販の梅干しの仕上がりの味になるのです。

4 味が染みた梅を乾燥させます。天日干しもありますが、工場内で機械乾燥する場合もあります。
また、2の段階で水に漬けて塩抜きした後に乾燥させてから3で味をつける場合もあるようです。

最も違和感を感じるのは、せっかくの梅の成分を2で水に流してしまっていることです。
(まあ無駄に捨てずになんらかの加工を経て利用するのだとは思いますが)
そして梅本来の成分とは大きく異なる別の調味液でわざわざ味を漬け直すのです。
なお中には1で塩にすら漬けず、煮るか蒸すなどして柔らかく加工する場合もあるようです。

また梅に限りませんが、安くするために海外で採れた梅を使い、保存するために薬品を使っていたり、色つけに着色料を使ったりという例も当然考えられます。

昔から梅干しは健康に良いと言われていますが、これではせっかくの体に良い梅本来の成分をそのまま食べることにはなりません。
現代の市販の梅干しの多くは、味がまろやかで甘みが強く、まるでお菓子のような味のものが主流です。確かに食べやすいのですが、これは梅に似ていますが昔の梅とは別物の人工加工物だと思った方が良いでしょう。中には昔ながらの酸っぱい本物の梅干しは偽物で、お菓子的甘さの梅が本物だと誤解している子供もいるほどです。

もちろん、メーカーを批判するつもりはありません。
商売として成り立たせる以上は、採算は大切です。

もし伝統方式で漬けて、万一カビが生えて失敗したらものすごい大損害になってしまいます。
安全確実で衛生的、大量に効率よく作るためには仕方ないことだと思いますし、何よりもただでさえ原材料の梅が高い上に、手間をかけて昔ながらの方法で漬けたとしたら売値が高くなりすぎて買ってもらえないわけで、梅干しとして流通するにふさわしいレベルの売価に抑え、なおかつ一年を通じて梅干しを安定して市場に流通させているのはまさにメーカーの努力の賜です。

繰り返しますが、メーカー製の市販梅干しを悪くいうつもりはありません。
実際私も市販品を食べますし、料理にも使います。

ただ、やはり昔ながらの伝統梅干しでなくては困る精進料理があるのです。
そしてまた体に良い栄養面でも、やはり手作りの昔ながらの梅干しを私は大切にしたいと思っています。
お盆前で、お寺が最も忙しい時期に私が梅干しを手作りするのはそういう理由なのです。
まあはっきり言うと伝統製法で作られた梅干しは非常に高価なので、自分でまとめて作った方が遥かにリーズナブルです。

なお市場にも、昔ながらの手作り製法での梅干しも探せばあります。
それこそ製法から素材もお値段によってまちまちです。

全ての方が梅干しを自分で手作りするわけにはいきません。だからこそ、今の時代消費者自身が、どの梅干しがどういうものなのかよく理解した上で選んで購入するような賢さを身につける必要があるのではないでしょうか。

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