昨日列記した調理酒の効果について解説します。
1 素材の味を引き出す。
→日本酒に含まれる成分により、野菜の味が引き出されます。
例えば大根を適当な大きさに切って2つの鍋に入れ、
片方は水を300ml、塩少々で炊き、
もう片方は水200ml、酒100ml、塩を同じ量いれて炊いたとします。
つまり日本酒を加えるか加えないか以外は同じ条件にするわけです。
明らかに差が出ます。大根の味が引き立つのです。
また、残った煮汁の量を見ればわかりますが、同じ火力で炊いたとして
も酒を加えた方が煮汁が少なくなっていると思います。
それは酒の方が水よりも蒸発性が高いためで、煮汁が少ないという
ことはせっかくの大根の味がしみ出にくいことになるため、
その分大根の味が濃くなるわけです。
2 味にコクが出る。
→これも上記の実験を行ってみればすぐわかります。
酒に含まれる成分が大根に染みこんでコクになるわけです。
4 香りがよくなる。
→酒の芳醇な香りが、特に煮物や汁物には欠かせません。
ただし、吟醸酒は香りが強すぎてかえってバランスを崩してしまう
こともあるため、注意が必要です。
5 素材が柔らかくなる。
6 味が素材に染みこみやすくなる。
→これも酒に含まれる成分による効果です。
特に堅い根菜などを煮る時には欠かせません。
7 素材の臭みを消す。
8 殺菌作用により、保存性が良くなる。
→これは酒のアルコール成分による効果です。
特に和食では魚の臭みを消すために酒が重視されます。
精進料理でも、たとえばごぼうやレンコンなどのように泥臭い
食材の臭みを消す役割を果たします。
また、まな板や鍋などをアルコールスプレーで殺菌することから
もわかるように、バイ菌を殺す効果があります。
さて、調理酒の効果の中で一番重要なのが、
3 酒に含まれるうま味成分のおかげで味が良くなる。
です。
実は日本酒には、アミノ酸などのうま味成分が含まれているのです。昆布のダシの項目で解説したように、うま味成分はそれ自体ではダイレクトにはわかりにくいのですが、塩気などの味を加えると一気に差が出ます。日本酒をそのまま飲んでも、うま味成分が含まれているなんて言わなければわからないと思いますが、それを調理に用いると非常に効果的なのです。
ましてや、昆布の項目で、たとえば昆布のダシと椎茸のダシのように、種類が違ううま味成分を混ぜて使うとうま味成分の効果が倍増することを解説しましたが、それと同様に、昆布や椎茸のダシに加えてさらに酒を用いれば、うま味成分の相乗効果がより一層期待できるのです。
酒を調理に用いる理由の8割方が、酒に含まれるうま味成分のためといっても過言ではありません。
では本当に酒を使うと上記のような効果が得られるのか、明日は実際に実験をしてみたいと思います。