◇「そら豆と筍の春のおかゆ」の概要と魅力
お供えにおかゆですか?と不思議に思う方もおられるでしょう。しかし禅宗では朝のお供え膳は必ずおかゆが主食と決まっています。やむを得ない事情で朝にご飯をお供えする場合は、これは朝食ではなくてお昼ご飯を早めてそなえているのですよ、とわざわざキッチリと注釈して供える儀式を行うほどです。
一般家庭ではわざわざお供えのためだけにおかゆを用意する必要はありませんが、いっそのこと家族全員がおかゆをいただいてはどうでしょうか。おかゆというと病気になった時の療養食というマイナスイメージを持つ方も多いようですが、それは大きな誤解です。今回紹介するようなとてもおいしいおかゆもたくさんあるのです。消化も良く、カロリーも低くて健康的なおかゆを、春の息吹溢れる風味に仕上げましょう。
そろそろ早穫りのタケノコが出回り始めます。初物は高価ですが、だからこそお彼岸のお供えものにも最適です。生のタケノコならば、ぬかでアク抜きしたあとは、下味をつけずにそのまま使う方が良いでしょう。タケノコの風味をダイレクトに味わうことができます。今回は、安価な水煮を使う前提で、下味をつける方法を紹介しています。
そら豆は繊細な甘みと鮮やかな緑色が春らしい旬の食材です。むく手間がかかりますが、是非この時期にご先祖様にお供えしたい食材です。高価なため、外皮も無駄にせず使い切りたいですよね。フードミルでピューレ状にしておかゆに混ぜれば無駄が出ません。ただしレシピ写真を見ればわかるとおり、皮の部分は豆本体に比べると色と味は落ちてしまいます。そこで、皮だけを使わず、剝くときに割れてしまって形が崩れたそら豆や、小さくて見栄えが今ひとつのものを皮とともにピューレにし、良い形のものは別の料理や、見た目重視のところで使うようにすると良いでしょう。
皮も使えるならば使い切るという禅の妙技を是非お試し下さい。
◇「そら豆と筍の春のおかゆ」のレシピと調理手順
1 お米70mlを研ぎ、水500mlに20分以上浸けておきます。
2 タケノコ100gを細めのくし形に切り、昆布ダシ200ml、酒大さじ2、みりん大さじ1、しょうゆ大さじ1で15分ほど下ゆでし、自然に冷まして味をなじませます。
3 1のおかゆを火にかけ、沸騰したら可能な限りもっとも弱い火加減に落としてフタをします。フタは、ふきこぼれを防ぐために少しだけずらすか、割り箸を挟むなどして空気が抜けるようにします。
4 フタをしたら20分弱火で炊きます。火が強いと焦げてしまうおそれがあるため、最も弱い火加減を守って下さい。
5 そら豆200g(5本分)の大皮をむきます。
6 豆の外皮側面に1センチほどの切れ込みを入れます。
7 短めに塩ゆでし、崩れないように注意して切れ込みからめくるようにして外皮をむきます。煮汁はほんの少し捨てずに残しておきます。
8 そら豆を数粒残して、フードプロセッサーやミキサー、フードミルなどに入れ、5の煮汁大さじ2~3と塩少々を加えてトロトロのソースにします。
なおむいた外皮も捨てずに、豆本体は別にフードミルにかけると、豆自体に比べたら少々色や味は落ちますが、充分美味しいそら豆ペーストになります。豆本体を別の料理にして、皮を今回のおかゆに使っても良いでしょう。
下の写真をみてわかるとおり、右がそら豆本体のみで作ったソース、左が皮のみで作ったソースです。右の方が色が鮮やかな緑で、左は少しくすんでいます。口当たりもやはり右の方がきめ細やかでなめらかです。比較してしまうとはっきりわかりますが、左だけを出されれば特に大きく劣らずにいただくことができます。用途に応じて、適材を適所に使い分けるのが良いでしょう。
9 4で20分炊いたおかゆの鍋のフタをあけ、2のタケノコを加えてサッと軽く混ぜ、もう一度フタをして5分同じく最も弱い火力で炊いてから火を消し、10分ほど蒸らします。タケノコの煮汁を少し混ぜておかゆ全体に味を足しても良いですし、煮汁をしっかり切ってタケノコだけの味を強調しても良いですし、そこはお好みです。
10 うつわに盛り、8で作ったソースをかけ、よけておいたそら豆を数粒載せていただきます。