「 典座教訓 」一覧

『禅文化』誌253号発刊_精進料理記事連載

精進料理連載も第5回となり、いよいよ修行道場における台所修行についての話が始まりました。禅寺の精進料理について知りたい方はぜひご一読下さいませ。 他の記事も大変見どころのある名文ばかりですが、私としては特に今号「竹篦子の話」と「民俗学から見る仏教行事上」の2記事がとてもためになりました。

精進ラタトゥイユ_平成三十年秋彼岸のお供え膳

 ラタトゥイユは炒めた野菜を煮込んだフランスの料理です。 主に夏野菜を使うことが多く、特にトマトやズッキーニ、ナスなどを使い、セロリやハーブを加えて風味を出します。鳥肉やベーコンを加えて旨みを出すことが多いですが、今回は干し椎茸を使って肉の食感の替わりとしました。 もともと「ラタ」はいろいろな食材を一度に煮込むこと、「トゥイユ」は混ぜるを意味します。フランス料理といっても高級レストランで出される豪華イメージのおしゃれな料理ではなく、南フランスプロバンスのニースでは郷土料理として親しまれてきた素朴な料理です。日本ではけんちん汁や豚汁のようなものでしょうか。 フランスではかつて軍隊や刑務所などでもよく出されていたようで、日本で懲役に行くことを「くさい飯を食べに行く」というように、ラタトゥイユには粗末であまり美味しくない料理という隠語的な意味合いでも使われてきたようです。 しかし健康ブームの今、日本でもかつて麦ご飯をくさい飯と陰で呼んでいた時代はとうに過ぎ去りました。今や麦ご飯や玄米の方が健康によいとしてもてはやされる時代ですし、きちんとした手順で調理した麦ご飯はくさい飯どころかとても滋味深く美味しいものです。同様に、かつて軍隊や刑務所でありあわせのものを不充分な調理で作るのではなく、きちんと調理すれば野菜たっぷりの健康的で深い味わいの上等な味に仕上がります。 道元禅師は、『典座教訓』で、「粗末な料理、材料だからといって軽んじてはいけない。ありあわせの材料でも、不充分な設備でも、できる範囲で最大の努力と工夫を惜しまず、高級食材を扱う時と同じ態度で精一杯料理するべきだ、そうすればどんな材料でも極上の味わいになるものです」と説いています。 その教えに基づき、飾り切りでむいた皮も捨てずに細かく刻んで加えます。これにより食材を無駄にせず全て使い切る精進料理の心をご家庭で生かすことができるのです。刻んだ皮は加熱時にとろけてしまいますが、それによってスープが濃厚になり、軽いとろみをつけることもでき、かつ味も深くなります。トマトを1/3量刻んで加えるのも同様の理由です。輪切りの前に飾りむきをするのは、固い皮を部分的にむくことで食感を柔らかくするためと、剝いた皮を煮溶かすためです。その上見栄えも良くなるわけですから一石三鳥といえるでしょう。