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御寺族さまから、お盆とお彼岸のお供え膳の実例報告が届きました

御寺族様の投稿_お盆とお彼岸のお供え膳実例

とある寺族様から、今年のお盆のお供え膳の実例報告写真と献立書きが届き、「典座ネット_お供え膳をつくろう」のページで紹介させていただきました。
素晴らしい実例ですので、ぜひご参考になさって下さい。

8月盆の際、三日間とも献立を変え、三日目の15日にはおかずを1品増やしてさらに丁寧にお供えなさいました。
さらに、お寺がとても忙しいお盆中にもかかわらずご実家にも足を運び、ご実家の仏前にもまた別の料理を作ってお供えしたとのこと。
秋彼岸には手間のかかる品数豊富な煮物や栗ご飯を作り、秋の味覚をほとけさまにお供えすることでねんごろに御供養なさっておられます。

お盆1日目(8月13日)
麦ごはん
お麩とわかめのお味噌汁
じゃがいもと人参、いんげんの煮物
茄子の揚げ浸し
いちじく

お盆2日目(14日)
玄米ごはん
豆腐、薄揚げ、オクラのお味噌汁
かぼちゃの煮物
ししとうの煮浸し
ぶどう

お盆3日目(15日・一品増やして)
白ごはん
餅、いんげん、しめじのおすましお雑煮風
茄子とかぼちゃの炒め物
がんもどき、厚揚げ、人参、オクラの煮物
揚げ出し豆腐
お漬け物

実家のお盆のお参りで供えたお膳
白ごはん
にゅうめん
じゃがいもと枝豆の煮物
茗荷の味噌酢和え
いちじく

栗ごはん
しめじのおすまし
ごぼうと人参のきんぴら
煮物6種(じゃがいも、椎茸、人参、糸こんにゃく、オクラ、さつまいもの甘煮)
長芋の短冊、アオサをふりかけて
お漬け物

「寺族って?」と思う一般の方も少なくないでしょう。宗派によって定義は異なりますが、曹洞宗では現在「曹洞宗の宗旨を信奉し、寺院に在住する寺族簿に登録された者」となっています。ああ、こう書くと余計わかりにくいですね。いろいろな経緯があって上記の文言が定められたため、あまり簡単に表現すると誤解を招く恐れがあるため危険なのですが、まあそれを承知で一般の方にわかりやすく言えば、「今回の場合は」寺族とはお寺の若奥様のことです。

その若奥様は私とだいたい同世代で、関西の真言宗のお寺に嫁がれて寺族となったそうです。
慣れない環境の中、覚えなくてはいけないことが山積みで、それまでの常識とは別次元のはじめての経験の連続の中、大変なご苦労をなさったようです。お話をお聞きしたところ、先代のご住職はすでに他界なさっており、夫であるご住職と、先代住職の大奥様とともに、歴史ある寺の伝統の中で、現代に合わせて試行錯誤しながら住職を助け、お寺の運営に尽力なさっておられる立派な方です。
小規模なお寺を維持するために、若奥様はいまも会社に勤務なさっているようです。
毎日の家事に加えて、寺の掃除や接客、事務等をこなした上で出勤し、さらにお盆にはこうして立派なお供え膳を手を抜かずにご用意なさる。誠に頭が下がります。
(誤解ないように補足しますと、ご自分でそのように自慢めいたことを言っているのではありません。当方がいろいろと確認のやりとりをした中で感じた私の感想です。ご本人は、「いやー、そんな立派なことはしていないので、そこまで誉めて書かれると困りますからほどほどに書き直して下さい・・」と謙遜していました)

それまでお寺とは百八十度逆の分野でバリバリお仕事をなさっていた独身時代、忙しくて料理をする間もなかったため、ほとけさまへのお供えのお膳をしっかり務めなくては!と料理勉強を始め、いろいろと御研究なさったそうです。

ここから先は書かない方がいいのかもしれませんが、せっかくなのでご本人の意向を確認せず私の独断で書きます。
世間ではお寺というと裕福でなんの不自由もないイメージが強いようです。実際に「生臭」と批判されるような豪奢な暮らしを送る僧侶もいます。しかしそれはごく少数の話で、ほとんお9割の僧侶は一般世間なみにお金に苦労して慎ましく暮らしています。
特に小規模のお寺は、お寺としての活動でいただくお布施などの収入ではお寺を維持することができず、大きなお寺にお手伝いに出たり、あるいは世俗の仕事で収入を得てそれをお寺の運営にあてている方も少なくありません。今回の御寺族さんも、一般の会社に勤務なさっておられます。いうまでもなく、二足のわらじはとても大変で、普通だったら疲れてしまって仏さまのお膳や細かい掃除はやむを得ず略してしまう場合が少なくないと思います。先代住職の時代は、今よりもなお苦労なさった時代です。そのためでしょう、嫁いだ際、先代住職の大奥様はあまり仏膳をお供えしなかったようです。若奥様が嫁いだ際、今までしていなかったのだからと自分も略することもできたはずですが、そこであえて、「いや、私はお供えもやります!」と新たにはじめたところが私はすごいと思うのです。
もしかしたら、心が狭い大奥様だったら、「今まで略してきた私に対するイヤミですか!」と受け取られてしまう危険もあった中で、すべきことをきちんとしようとする姿勢に感銘を受けました。幸いにも、大奥様の暖かい理解によりそうした外野の心配は杞憂ですみ、今は慎ましいながらもうまくお寺の運営が良い方向に進んでいるようです。
実際、忙しくて身体的に辛い時もあるようですが、ほとけさまに対してきっちりつとめる、というやりがいが心の満足を与えてくれるのだそうです。

やはり仏さまはみておられるのでしょう。
お寺に対する世間の間違った認識が少しでも改まれば・・目立たなくてもこうして地道な努力を続けているお寺がたくさんあるのです。そうした意味で、あえて余計なことを書いてしまいました。もしお寺の奥様なんて楽なんでしょ、と誤解なさっている一般の方がいたらぜひ考えをあらためて頂きたいと思います。

うーん、しかしそれにしてもこれほど素晴らしいお供え料理、つい最近料理を始めた方が作ったとはとても思えない仕上がりです。
丁寧に撮られた写真から、ほとけさまや霊位を供養しようとする尊い気持ちがひしひしと伝わってきます。

ほとけさまは文句を言いません。忙しさを理由に、手を抜く気になればいくらでもいい加減にできます。しかしこうしてせいいっぱい「精進」なさっておられる方をお手本にし、私も頑張ろうと思います。
曹洞宗ではこうしてまごころをこめてお供えをすることが尊い修行だと説きますが、今回は他宗派である真言宗の御寺族さまに学ばせていただきました。

秋のお彼岸が終わってすぐにメールをいただいたのですが、多忙に追われ掲載が遅くなってしまったことをお詫び申し上げます。
ぜひ、来年以降のみなさまのお盆・お彼岸のお供え膳の参考になさっていただきたいと思います。

☆☆☆当サイトではお供え膳の実例報告を募集しております。失敗例・反省例も大歓迎です。ぜひご投稿ください。☆☆☆

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