御本寺の大老師様が大本山永平寺の副貫首となられまして、入寺式に随行させて頂きました。
副貫首という役職は永平寺の禅師さま(貫首。一般の寺でいう住職)に次ぐ第二位の役職で、一般でいえば副住職にあたり、もし禅師さまに万一があった際に貫首の空席期間を防ぐため即時昇任するお立場です。
入寺式はひらたくいえば就任式にあたります。
全国1万5千か寺の曹洞宗寺院住職の中から選ばれた羽仁素道老師が、永平寺に入り籍を移す儀式です。
全国1万5千か寺の曹洞宗寺院住職の中から選ばれた羽仁素道老師が、永平寺に入り籍を移す儀式です。
当寺の御本寺である群馬県沼田市迦葉山様は過去にも永平寺西堂 故清水浩龍老師、永平寺監院 故大島恭龍老師等を輩出なさった名刹です。今般副貫首となられた羽仁素道老師は審事院長、参議等の宗門要職をながく務められた大碩徳であられます。
万全のコロナ対策のもと、新副貫首老師が白銀に彩られた永平寺の山門に御到着なさり、永平寺の幹部高僧方および修行僧がお迎えされました。
一日中雨マークの予報通り、午前中の永平寺はシトシト降る雨でした。
それが副貫首老師が山門にお着きになる頃には突然快晴となり杉の木立からまぶしい陽の光がまるで後光のように射してきて、門内で待つ一同が感嘆の声を上げるほどの天候の変化でした。
そして儀式が終わり夕刻に寺を去る時間は再び前が見えなくなるほどどしゃ降りの雨。
天候を仏菩薩の加護や御利益に安易につなげるつもりはありませんが不思議な力を感じました。
続いて僧堂にて文殊菩薩様の前で入寺の儀式を行い、仏殿でお釈迦さま、並びに承陽殿で道元禅師はじめ歴代祖師方に焼香礼拝し、最後に法堂で読経した後、永平寺中の僧や関係者等と相対して正見の礼拝をなさいました。場所を移して禅師さまよりお言葉を賜り、一連の儀式が滞りなくつとめられました。
本来であれば数百人を超える縁者が集うはずでしたが、コロナの影響により、苦渋の厳選の末行われた入寺式でした。参列が叶わなかった多くの方のためにほんの少しだけ写真を掲載して御報告とさせて頂きます。
誠におめでとうございました。
本寺老師様の益々の法体長養を末寺法類一同、切に祈念申し上げます。
また大切な修行の時間を割いて随行者一団に親切に応対して下さった永平寺様の親切心にただただ感謝合掌するばかりです。ありがとうございました。
今回永平寺に随行拝登してまず眼を惹いたのが、参拝者が永平寺に入る通用門の階段前に新設された「手水舎(ちょうずしゃ)」です。
コロナ対策のため9月から運用されていて、参拝する前にここで手を清めてから門を通ります。
八角形の屋根の下には龍が八体おられ、手をかざすと口から自動で水が出ます。なお水はエコロジカルな観点から永平寺の地下水を利用しているため飲むことはできません。
道元禅師は、正法眼蔵「洗浄」「洗面」の巻にて身を清めることの大切さを説いておられます。単なるコロナ対策としてではなく、教えを永く実践するための施設として非常に重要です。
考えてみるとこれはものすごく迅速な対応です。これだけ立派な建物が9月にはもうできているというのは、こうした伝統的で保守傾向が強い仏教宗派の本山ではたいへん珍しい、スピーディで時代に合った柔軟な対応だと思います。
曹洞宗の現内局が掲げている「竿頭の先に未来をひらく」の公案にも則っていると感じました。
そして階段を上がった入り口の改札所には最新型の検温センサー。これ、よく施設入り口などで見かけるタイプだと、なかなか反応してくれなくて、センサー前で行列ができていて結局測らずに通ったりすること、ありますよね。しかしこの永平寺のセンサーは非常に反応がよく、立ち止まってすぐに顔認識機能で感知されてモニターに表示され、団体でもそう手間をかけずにクリアーすることができるすぐれものでした。
安心して修行を続けるため、そして参拝者を守るためのこまやかな配慮に感服いたしました。
ちょうど入寺式の数日前まで、関越高速道路の越後湯沢~魚沼あたりで大雪のため千台の車が立ち往生する大災害が発生しました。往路は写真のように、ワンボックス車の高さよりも高く積もった雪の壁がそびえたち、前が見えないほど吹きすさぶ雪の中、除雪作業車の後ろを時速30キロほどの徐行運転で時折立ち止まりながら進む悪路でしたが、高速道路関係者の御努力と、仏天のご加護により、入寺式を終えた帰路は高速道路もすっかりスムーズとなり、青空の中晴れやかな気持ちで走行することができました。
(ドライブレコーダーの写真です)
(ドライブレコーダーの写真です)