道元禅師が好まれた茶粥_臘八攝心六日目

焼豆腐の味噌煮_精進料理レシピ調理手順

○道元禅師が好まれた永平寺の茶粥

昨日、コーン粥を高祖大師のお粥と勘違いした修行仲間のお話を載せました。実は永平寺ではほんとうに高祖大師、つまり道元禅師にちなんだお粥があります。

道元禅師様は9月29日がご命日です。そのため、毎月29日は月命日となり、必ず法要が行われます。
28日の夕方に高祖大師月忌献湯(こうそだいしがっきけんとう)29日の早朝に高祖大師月忌献粥(こうそだいしがっきけんしゅく)29日の昼前に高祖大師月忌献供(こうそだいしがっきけんぐ)という三つの法要がいわゆるセットとなっていて、道元禅師がお休みになっておられる祖廟、承陽殿(じょうようでん)の前に僧たちが集まって丁寧な法要が毎月行われます。
この29日の朝に必ず出されるのが「茶粥」(永平寺ではちゃがゆと呼ばず、ちゃじゅくと呼びます)です。
29日朝の高祖大師月忌献粥法要は文字通り、お粥を献ずる法要で、道元禅師にちなんだ特別なお粥を承陽殿に供して追慕のお経を挙げて礼拝するのです。

なぜ茶粥かというと、これはいろいろ調べましたが文献に載っているわけではないのですが、参学した典座老師にお聞きしたところによると以下のようです。
道元禅師が中国での修行を終えて日本に戻り、間もなくして建てたお寺は京都、宇治の「興聖寺(こうしょうじ)」です。典座ネットでも大切にしている『典座教訓』はこのお寺で記されました。その後に、道元禅師は福井県に移り、永平寺を建立なさるのです。
ご存じの通り宇治はお茶で有名です。すでにお茶は奈良時代には飲まれていたようですが、道元禅師の時代には同じ禅宗である、臨済宗の栄西禅師が『喫茶養生記』を記してお茶を奨めたこともあり、道元禅師も宇治の興聖寺でお茶を好まれたというのです。
そこで道元禅師が好きだったというお茶で炊いた茶粥が29日の朝食に出される伝統となった、といいます。

これはネット上には今現在まったく出ていない情報で、当ブログが初出だと思います。あくまでも私が、指示した典座老師からお聞きしたものです。そして責任は典座老師には一切ありません。確証がないあいまいなものを出すことに御批判もあるとは思いますが、論文や外部への発表前提のブログ記事ではございませんのでそれを承知して頂き、了解の上でお読み頂ければと思います。

いわゆる緑茶ではなく、ほうじ茶であることにご注目下さい。修行中の身で高級な緑茶を頻繁に頂くことを遠慮し、永平寺では特別な時を除き、日常的にほうじ茶を飲みます。一概には言えませんが、緑茶にはちょっと適さないような質の落ちるお茶葉や、古くなったお茶葉をほうじ茶とすることが多く、一般的にはほうじ茶は緑茶より安価です。また少量の茶葉で、充分な色と香りを出すことができます。200人以上の僧が同居するわけですから、これは当然の倹約なのかもしれません。
茶色のお茶で炊いた茶粥もありますが、これはまた別の機会に紹介し、今回は攝心のお粥特集ですから修行道場と同じほうじ茶でのお粥を紹介します。

永平寺ではほうじ茶と呼ばず、「焼き茶」または「香湯」と称します。その香ばしく、茶黒色の香湯で炊いた少し渋みを感じるお粥は、想い出深い修行中の味なのです。ほうじ茶の香気と渋みが早朝坐禅の眠気を覚ましてくれるありがたい味です。

自分で炒る場合は炒りすぎると苦みが強く出てしまうので焦げないように注意して下さい。

そして29日の朝食には、ふだんはおかずは付きませんが、特別な日なので、漬物と胡麻塩の他に朝からおかずが一品つきます。そのおかずには味噌を使った料理を使う伝統となっており、これまた道元禅師がお好みだったからということでした。

味噌を使った料理は諸々ありますが、今回は典座老師がよく出しておられた焼き豆腐の味噌煮を紹介します。

茶粥が少し渋いので、甘みのある味噌煮がとてもよくマッチします。

なおいつもは永平寺と總持寺の両本山を同じく尊ぶ観点からなるべく両山紋(永平寺の寺紋と總持寺の寺紋がふたつ揃った曹洞宗公式の紋)のうつわ等を用いるように心がけておりますが、今回は永平寺のお話なので、あえて冒頭のお膳で永平寺寺紋のお盆を使いました。

焼豆腐の味噌煮_精進料理レシピ調理手順

茶粥

○焼き豆腐の味噌煮の調理手順とレシピ

1 焼き豆腐1丁を1/4に切ります。

焼豆腐の味噌煮_精進料理レシピ調理手順

2 昆布ダシ300mlに酒大さじ2、みりん大さじ1,砂糖小さじ1~2を加えて加熱します。

昆布ダシは当ブログ愛読者はご承知のことと思いますが300mlの水に昆布3gほどを一晩浸けて水出し式で自然抽出させます。

焼豆腐の味噌煮_精進料理レシピ調理手順

3 暖まってきたら弱火に落とし、味噌大さじ2程度を加えます。使う味噌はなるべく塩気が少なくうまみが濃厚な甘口のものを使います。味噌を多めに入れた方が風味も濃くなりこの料理には向いていますが、しょっぱい味噌の場合はあまり加えすぎないように加える量を調整します。2で加える砂糖の量も、味噌によって調整します。

焼豆腐の味噌煮_精進料理レシピ調理手順

4 1の豆腐を入れ、あまり強く沸騰しない火加減で20分以上コトコト煮込みます。

焼豆腐の味噌煮_精進料理レシピ調理手順

5 その間にほうれん草をゆでます。
強く沸騰したお湯に、ほうれん草50g程度を入れます。
この時、葉の先端をつかんで、根の方の固い部分を先にお湯に入れ、20~30秒位したら手を離して全体をゆでるようにします。葉の部分はすぐに煮えますが、茎に合わせて長時間加熱してしまうと葉の部分がドロドロになってしまうからです。

焼豆腐の味噌煮_精進料理レシピ調理手順

6 全体をゆではじめて1分くらいで多めの水にさらし、急冷します。

焼豆腐の味噌煮_精進料理レシピ調理手順

7 根の方を揃えて両手で握るようにして水気を絞り、束ねたまま食べやすい長さに切っておきます。

焼豆腐の味噌煮_精進料理レシピ調理手順

8 煮汁が良い感じに蒸発して減ってきて、内部に味が染みたら火を止めます。

時間がある場合はここで自然に冷ますと、味が深く染みます。それから再度温めるとなお美味しく頂けます。

崩れないように気を付けて豆腐を盛り、ほうれん草を添えて、煮汁を注ぎます。

焼豆腐の味噌煮_精進料理レシピ調理手順

焼豆腐の味噌煮_精進料理レシピ調理手順

○茶粥の調理手順とレシピ

1 煎茶大さじ3を油気のないフライパンか鍋などで炒ります。ガスの場合は、フライパンが暖まったらお茶を入れ、ガス台のゴトクに載せず、フライパンを少し離した状態で炒ると焦げずにうまく炒れます。
遠火でじわじわ炒るのがコツです。強火で一気に炒ると焦げてしまい、苦いおかゆになってしまうのでご注意下さい。
自信がなければはじめからほうじ茶の茶葉を使うと良いでしょう。

茶粥_精進料理レシピ調理手順

2 茶葉がある程度冷めたら急須に移し、お湯400mlを注いでほうじ茶を点てます。一度に400ml入らなければ数回に分けてかまいません。
点てたほうじ茶をボールなどに移して、冷まします。

茶粥_精進料理レシピ調理手順

3 初日に紹介した白かゆの手順と同様に、お米60mlを研いで30分ほど水に浸けます。

4 お米を鍋に移し、2で冷ましたほうじ茶を加えて強火で加熱します。

茶粥_精進料理レシピ調理手順

5 沸騰したらごく弱火に落とし、軽く一度だけお米を混ぜて張り付いたお米をさっとほぐし、ふたをして25分炊きます。茶粥_精進料理レシピ調理手順

茶粥_精進料理レシピ調理手順

6 基本的に水の代わりに冷ましたほうじ茶を使う以外は白かゆとまったく同じ手順です。25分炊いたら火を止め、5分以上蒸らしてできあがりです。

なお茶粥は、お茶の成分が鉄と化学反応して、きれいな色が出ます。アルミ鍋で炊くともう少し薄い色になると思います。

焼き豆腐の味噌煮と合わせて召し上がって下さい。

茶粥

茶粥

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