おかゆの炊き方~臘八摂心一日目

○臘八攝心が始まる朝

私が永平寺で修行していた当時の記憶ですが、午前9時すぎくらいから摂心が始まったと思います。毎月1日と15日は朝の勤行を特別丁寧に長く行うのですが、摂心開始日だからといって一切省略はせず、いつも通りにキッチリと勤行を行った上で、朝の掃除を終えてほとんど空き時間も無いままに最初の坐禅が始まるのです。
そこで略さないのが修行のありがたさであり、また厳しさなのだと思っています。

最初の坐禅は、法要を統括する維那(いの)和尚による「この坐より攝心」という低く重い声から始まります。いつも以上に張り詰めた12月の凜とした寒気の中、一週間ぶっ通しの坐禅が始まるのです。

同時に、台所ではいつも以上に忙しい一週間が始まり、坐禅をする者、料理をする者、本当に体力的にも精神的にも厳しい修行です。

○白粥の炊き方

皆さんにはまず初日は、もっともキホンとなる「白いおかゆ」すなわち「白粥」の炊き方をご紹介します。
白粥はしろかゆ、ではなく「しろしゅく」または「しろじゅく」と呼びます。

まず出来上がりは昨日載せた、修行僧が食べる応量器の写真と同じ、白粥、漬物(たくあん、梅干)、胡麻塩です。これが禅道場の朝食の基本献立となります。

おかゆの炊き方_基本レシピ

1 お米を研ぎます。

ほぼ同じ大きさのボールとザルを重ねます。

1/3合(60ml)程度で、小さめのお茶碗でおかわりなしとしておよそ2人前です。大事な点はきちんとカップで計量することです。目分量ではうまくいきません。

和の計量基準、1合は180mlですが、洋式の計量カップだと1カップは200mlで、1/3カップと1/3合は量が異なりますのでご注意下さい。

計量カップがなければ、プッチンプリンの空容器くらいの湯飲みに一杯でも良いです。

おかゆの量が一食にどれくらいがちょうど良いかは人によって大きく異なります。まず上記の分量で作り、足りなければ次には増やせば良いのです。その際、きちんとカップで計量しておかないとどのくらい増やせば良いかわからなくなってしまいます。

おかゆの炊き方_基本レシピ

2 お米を研ぎます。

ご飯に比べて少量なので、それほど苦労せず研げますが、まず最初に浸水させる場合は大量の水を一度に加えます。そしてはじめはササッと軽く三度ほど混ぜる程度で真っ白な研ぎ汁が出るので一度取り替え、それを2回ほど繰り返します。
まずはじめに出る濃厚な研ぎ汁は、少々ぬか臭いため、あまりゆっくりしているとお米に臭いが染みこんでしまいます。そのため最初は大量の水で薄めながら手早く研ぐのです。

おかゆの炊き方_基本レシピ

3 多めの水で急ぎの研ぎを2回ほど終えた後は、研ぎ汁もそれほど白くならなくなるので、ゆっくりと研ぎます。その際も、おかゆの場合はそれほどギシギシと研がず、お米の粒が割れないように優しく丁寧に研ぎます。

おかゆの炊き方_基本レシピ

4 ここが特に大事です。研ぎ終えて水がきれいになったら、そのまま最低20分、できれば30分以上、水に浸けておきます。その際の水の分量は適当でかまいません。
この浸水工程を省くと、ふっくら柔らかに仕上げることはできなくなります。

おかゆの炊き方_基本レシピ

5 おかゆを炊く鍋で最も望ましいのは、肉厚の素材の鍋です。要するになるべく重いものです。私はいつも本来ご飯を炊くための鉄鍋を使います。薄い鍋でもできますが、厚みがある方がより弱い火力でふっくらと炊きあげることができ、また火を止めた後も余熱が長く保てるため炊き上がりの良い状態を長くもたせることができます。

またなるべくならフタがあった方が良いです。
無い場合はフライパン+フタ、または片手鍋にアルミホイルでも作ることはできます。

おかゆの炊き方_基本レシピ

6 4の浸けたお米の水を全て切り、鍋に移します。カップできちんと計量し、水を加えます。
この加える水の量で仕上がり状態が激しく変わります。お米の量と水の量をきちんと量るのがおかゆの仕上がりの七割を占めます。
今回は、緩すぎず、重すぎない適度な仕上がりの六分粥にしますので、60mlのお米に対して六倍の360mlの水を加えます。

そうするとだいたいの仕上がりが、一人ぶんで180ml弱=1合弱程度になるわけです。ご飯1合とは量が異なるので、だいたいおかゆの場合は1人計算このくらいが適量で、後は個人差となります。
計量カップがなく湯飲みやプリンの容器でお米を量った方は、お米と同じラインまでの水を6杯加えれば6倍の水が入ったことになります。

なおもっとシャビシャビの緩いおかゆがよければ水を8倍くらいにし、もっと重いのが良ければ水を4倍くらいまで減らします。
具合が悪い時などは緩めのおかゆの方が良いですしね。

おかゆの炊き方_基本レシピ

7 塩を小さじ1/4くらい加えます。仕上がった時にお、しょっぱいな、と気付くほど入れたのでは多すぎます。塩分はおかずや、胡麻塩で加えますので、この時加えるのはお米の甘さを引き立てるためです。そのためとても少量で良いのです。

おかゆの炊き方_基本レシピ

8 フタをせず、強火で点火します。

おかゆの炊き方_基本レシピ

9 沸騰してきたら、すぐに火加減をごく弱火に落とします。

こういう肉厚の鍋は、火が回って温かくなるまでに時間がかかります。しかし一度暖まると一気に吹き出す可能性があり、また弱火にしてもすぐには反応せずしばらくは加熱状態が続きます。ですからフタをせず、よーく見ていて、湧き始めたらすぐに弱火に落とすことを忘れないで下さい。
薄手の鍋ならばそこまで気にしなくても問題ないです。

おかゆの炊き方_基本レシピ

もうこれ以上落とせないほど弱く落とします。ガスをこれくらい弱くすると、ガス台の前で大きな動きをすると風でガスが消えてガス漏れの危険があるので注意して下さい。

IHコンロの場合、最弱にしてもそれほど弱くならないことがあります。その場合は、無駄に蒸発する分が出てしまい、狙いよりも水分が少ない仕上がりになるため、270mlではなく300mlくらいに増やした方が良い場合もあります。IHの機種によって変わるため次回以降に調整するとよいでしょう。

おかゆの炊き方_基本レシピ

最小限の弱火にしたら、フタをしめ、タイマーをかけます。

おかゆの炊き方_基本レシピ

フタをすると、隙間からこのようにあぶくが染み出てきます。これは火の量が適正な証拠です。もし、最も弱くしても、あぶくがあふれ出るほど多い場合は、フタの隙間を作るために、細い割り箸を挟みます。割り箸は熱で曲がることがあるため不要なものを使いましょう。これもまたガスコンロの機種によっては、一番弱くしてもあまり弱くならない場合もあるのです。

おかゆの炊き方_基本レシピ

おかゆの炊き方_基本レシピ

10 お米60mlで炊く場合、タイマーが25分になったら、火を止めます。その際、割り箸を挟んでいたらここで抜き、フタの隙間を無くします。そのままタイマーをすすめて、蒸らしに入ります。

おかゆの炊き方_基本レシピ

この蒸らし時間が重要で、これによりおかゆの粘りが増します。
最低でも5分は蒸らし、15分以上は蒸らさないようにします。
つまりおかゆの場合、火を止めたら5分から15分の間に食べるのがもっとも良い状態で頂くことができます。
あまり長くなってしまうと、おかゆが冷めて水分を吸い、ボテッとしてしまいます。

今回のような肉厚の鍋だと、保温時間が長くできます。この鍋の場合は30分は可能です。また、大量に作る場合はさらに長くなります。

さあではフタを開けましょう。どうですか、この最高の状態のおかゆ。

おかゆの炊き方_基本レシピ 暖かいうちにお玉ですくい、椀によそります。
その際、あまりかき混ぜてはいけません。おかゆの米粒はとても柔らかいため、かき混ぜるとドロドロの糊になってしまい、混ぜれば混ぜるほど粘って粒がなくなり味が落ちてしまいます。最小限のお玉さばきで盛り付けるようにします。

おかゆの炊き方_基本レシピ

なお、フタをあけてそのまま置くと5分くらいでもう冷め始め、下の写真のように、水分を吸ってボッテリしてしまいます。
そのためなるべくフタを外さないようにします。

おかゆの炊き方_基本レシピ

このちょうどよい粘り気で、サラッとした食感の透明感あるおかゆ、これが禅寺の朝食のおかゆです。
お米の甘さが口中に広がります。

おかゆの炊き方_基本レシピ

たくあんと胡麻塩がアクセントとなり、これでもう充分なごちそうです。

おかゆの炊き方_基本レシピ

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