○栗の木の実り方
栗は1万3千年前の縄文時代竪穴住居の遺跡からも出るほど、古くから大事にされています。特徴的なのは栗の花で、早い地域では5月末頃、当地のような寒冷地では6月末から7月頃に咲きます。いわゆるお花という形ではなく、このモジャモジャビローンとした白い花が雄花で、雌花は根元の方にすごく小さい丸い形でひっそりとついています。
栗は自家受粉はできず、独特の香りを出して虫を誘いて受精して栗の実が育ちます。この香りはかなり離れていてもわかるくらい強く、またこの花の見た目からもとても目立つ木です。
丹波地方の栗が参勤交代で全国に広まったという説がありますが、栗の木は堅さもあり濡れても腐りにくいため、線路の下に敷く枕木として活用されました。今でも栗の木の幅広テーブルはとても貴重で高級品です。
この花もしばらくすると縮んで茶色っぽくなり、落ちてしまいます。
これを漢字で「栗花落」と書いて「つゆり」と読みます。高難度読みがなクイズに出そうですね。知らなかったらまず答えられないでしょう。今人気の作品「鬼滅の刃」にも栗花落という名字のキャラクターが登場しますのでファンの方なら読めるでしょう。全国に60人ほどおられる超レアな名字だそうです。
これは梅雨入りする時期になると栗の花が落ちることから、つゆいり→つゆりと読んでこの字をあてたという説が有力です。
そして9月末から9月ごろにはおなじみの栗のイガイガの実が結実します。花は見たことがない方でも、この栗の実はご存じでしょう。うっかり素手で触ると予想以上に鋭いトゲが指の柔らかい部分に刺さって大変な事になります。虫や鳥から実を守る自然の仕組みなのだと思いますが、本当によくできているなあと感心します。
9月中旬~10月ごろにこの緑色のイガが茶色くなり、自然に割れて中の栗の実が露出し、イガごとポトリと落ちます。普通の果物とは違い、もいだりせず、落ちてから拾います。
落ちた衝撃で実が外に出ることがおおく、1週間ほど拾わないで置くと虫がついたり傷んでしまいます。これだけすごいトゲの中に、さらに硬い皮があり、その上その中にも渋皮で包まれているという完全防備、やはり自然の造形はすごいものです。逆に言えば、ここまでガードしなければ動物などがすぐに食べてしまうほど、中が美味しく栄養豊富という証拠なのだと思います。
○栗の実の下処理
皮ごと料理する場合もありますが、多くの料理では皮をむいてから使います。他の食材に比べて皮をむくのにだいぶ苦労します。
まず栗を多めの水に3時間ほど浸けておきます。これにより皮がむきやすくなり、また万が一虫が付いていた場合の対策となります。ぬるま湯ならば1時間ほどで良いのですが、できれば水の方が良いと私は思います。
次の手順ははいろいろあるのですが、最も手際よくできるのは、栗のお尻の方の少しザラザラした部分をなるべく少しだけ(実が切れないように)包丁で切り落とします。栗の実は硬く、小さくコロコロ転がりやすいので充分気を付けて下さい。
今切った部分を差し込み口として、硬くて薄い金属などを差し込み、広げるようにすると外の硬い皮が破けるような感じで外れるのでむいていきます。
小さくて先が尖った薄いスプーンや、キッチンハサミの先端、マイナスドライバーなど、使う道具は何でも良いのですが、こうした専門道具が売っています。これは握りやすいし危なくないのでたくさんむく場合はおすすめです。
以前栗の外皮をむくには典座ネットで紹介した際は缶切りの尖った部分を推薦していました。しかしこれ、今の缶詰はパカッと開ける方式が増えてきたのでご家庭に無い場合が多くなってきましたね。売り場でも徐々に見かけなくなってしまいました。
これを先ほどの切り落とした部分に差し込んでちょっと外側に力を入れるとすぐに外すことができます。これは水に長い時間浸けていた効果です。
なお、この方法は初心者向けですが、どうしても切断した部分の実が少しではありますが無駄になってしまうことと、渋皮をまるごと残した渋皮煮にする場合には一部の渋皮が切れてしまい不都合です。
その場合は栗用のハサミのような器具も販売されています。
むいたら渋皮の状態で再度水に30分ほど浸けてアクを抜きます。あまり長く浸けておくと風味まで抜けてしまうのでご注意下さい。
渋皮煮を作る場合はこの状態から進めます。
過去に典座ネットで紹介した栗の渋皮煮はこちら 渋皮煮の下準備はこちら
皮をむく場合は良く研いだ包丁やペティナイフで薄ーく皮をむいていきます。
特別見栄えを気にする料理でなければ、渋皮が厚くなってへこんでいる部分は無理に渋皮を削らず、写真のように少し残ってしまっても問題ない場合が多いです。水に浸け、加熱している過程で自然にはがれるものも多いです。個人的には、少しくらい皮が残っている方が風合いも良いのではないかと思います。
特別な来客に出す場合や、蜜煮など長期間保存するもの、八寸の先付けに使う場合などは、実の部分が多少無駄になってしまうのは覚悟してきっちり削ると良いでしょう。