八丁味噌のみそ汁_基礎から_令和2年秋彼岸お供え精進料理膳

豆腐の八丁みそ汁

八丁味噌とは

「手前味噌」の語が示す通り、かつて味噌は各家で作る自家製が当たり前でした。そのため育った地域によって、味噌の好みは大きく変わります。現在は市販のものを使う家が増えたためそれほど地域差はなくなってはきましたが、それでも味噌の風味にこだわる方は少なくありません。

↓ 八丁味噌

豆腐の八丁みそ汁調理手順

今回味噌汁に使う「八丁味噌」は中でもかなり特殊です。
いわゆる赤味噌ともまた違う、真っ黒で硬く締まった状態の味噌です。愛知県の岡崎市で伝承されている味噌で、かつて岡崎城から西へ八町(800m)進んだ八帖村で作られていたことに由来します(諸説あり)
多くの味噌は、米麹や麦麹を使いますが、大豆で作った豆麹で、巨大な石を2年近く載せて作られる独特の味噌です。この味噌の独特で個性的な風味は一度口にするとやみつきになる(あるいは拒否反応を示す人もいるようですが・・・)

曹洞宗寺院が多い愛知県には典座名人が数多くおられますが、そうした影響があってか、基本的に関西系の味付けが主流な永平寺でも、この味噌を使った味噌汁が時折作られます。
この味噌の味わいばかりは、実際に食べて頂かないとなんとも説明できません。是非お試し下さい。
なお八丁味噌が手に入らない場合は普通の味噌で作って下さい。

八丁味噌の味噌汁の調理手順とレシピ

1 初日に用意した椎茸と昆布のダシから、椎茸を取りだして細切りにします。
軸の部分がある場合、写真の左側のように軸が短かくければそのまま細切りにしてかまいません。もし軸が長い場合は、根元から切り離して、軸だけを細切りにします。またもし軸の先が黒ずんでいてとても硬い場合は、その部分だけは切り離します。

これはダシを取った後の干椎茸を無駄に捨てず、使い切るための作業です。
この段階では自然抽出しただけの状態なので、汁を作る過程で加熱することによってさらに椎茸のダシが出切る効果があります。

豆腐の八丁みそ汁調理手順

豆腐の八丁みそ汁調理手順

2 鍋に水500ml、ダシに使った昆布、カボチャの煮物で出た面取りのかけらをみじん切りにしたカボチャの皮、1の椎茸を入れます。
もし、水出ししたダシがまだ充分に残っていれば、水ではなくダシを使います。残っていない場合は、水を使い、自然抽出に使った昆布を丸ごと入れて加熱することで、昆布に残っているダシの成分が全て出切って、最後まで使い切ることができます。

一番ダシは自然抽出で
二番ダシは加熱して出し切る

豆腐の八丁みそ汁調理手順

3 中火で3~5分ほど加熱して、ダシが出たら昆布を引き上げます。具が張り付いていないか確認しながら取り除きます。
取り除いた昆布は捨てずに別の用途に使います。
昆布と椎茸は加熱するとアクが出るため、ざっと取り除きます。
一度火を止めておきます。

豆腐の八丁みそ汁調理手順

4 豆腐200gをさいの目切りにします。
木綿豆腐でも絹ごし豆腐でも、お好みでかまいません。
お供え膳の汁椀は小さいため、さいの目切りが適していますが、自分で食べるならばざっくりとした形のそぎ切りでもかまいません。

また、豆腐が新しい場合は豆腐を加熱せず、汁に味噌を加えて仕上げた後、盛り付ける時点で豆腐をお椀に入れる方法もあります。その場合は、生の豆腐の食感が楽しめます。
今回は鍋で豆腐を加熱する方法です。この場合、豆腐が少し生よりもしっかりした食感になり、また八丁味噌の色と風味が豆腐に染みて、独特の風味を楽しむことができます。

豆腐の八丁みそ汁調理手順

5 彩りに青み野菜を加えます。今回はオクラを使いましたが、無理して揃えず、いんげん、絹さや、三つ葉、ほうれん草など、冷蔵庫にある野菜でかまいません。
三つ葉のように柔らかい食材は、良く洗って食べやすい長さに切り、そのまま上載せすれば良いのですが、多くの青み野菜の場合は一度火を通して、食べやすい大きさに切り、味噌汁を盛り付けてから最後に添えます。
家庭料理では汁の鍋に青みを直接入れて煮ることが多いのですが、せっかくの青みに味噌汁の色が着いてしまうため、お供え精進料理膳の場合は見栄えを重視して別鍋で加熱し、最後に添えるようにします。
オクラ2~3本を塩ゆでし、縦半分に切り、長い場合は1/2または1/3に切ります。

豆腐の八丁みそ汁調理手順

豆腐の八丁みそ汁調理手順

6 精進料理では薬味のネギは五葷(ごくん)といい、臭いの強い野菜として避けます。他にも玉ネギ、にんにく、にら、のびるなども使いません。
そのためこの時期ならみょうがを刻んで薬味とします。

みょうが数本を輪切りにし、土臭さを抜くために多めの水に3分ほど浸けてあく抜きし、ザルにあげて水を切っておきます。

豆腐の八丁みそ汁調理手順

豆腐の八丁みそ汁調理手順

7 3の鍋を再加熱し、4の豆腐を入れます。冷たい豆腐を入れることで鍋の温度が下がってポコポコがおさまるので、そのまま弱火に落とし、味噌を加えます。
今回は八丁味噌を使います。八丁味噌はそれほど塩辛くないので、大さじ2杯ほど加えて濃い目にする方が風味を楽しめますが、苦手な方や薄味が好きな方は減らして下さい。
八丁味噌がなければ普通味噌でもかまいませんが、その場合大さじ1杯弱ほどに減らします。

豆腐の八丁みそ汁調理手順

味噌汁に味噌を溶く際は、鍋の火加減を弱火に落とし、軽くポコポコするくらいの状態で味噌を加えます。強火だと味噌の風味が一気に飛んでしまうからです。そして味噌を入れたら、味噌の風味が残るように、早めに火を止めるのが基本です。ただ中には煮詰まった味が好きな方もいますのでお好みによってはしばらく加熱を続けてもかまいません。

味噌を直接鍋に入れると、味噌が溶けずに塊が鍋の中に残ってしまいます。特に八丁味噌は堅くて溶けにくいため、「味噌こし」を使います。
味噌こしを鍋の端に入れ、この中に味噌を入れて箸や木へらで混ぜ溶かします。溶き終わった後、豆のすり残しが味噌溶きの網に引っかかって残った場合、捨てずに鍋の中に加えます。

豆腐の八丁みそ汁調理手順

8 うつわに汁を盛り、5のオクラと6のみょうがを載せます。

味噌汁は出来上がってすぐの暖かいままでうつわに盛るのが理想的です。一度冷めた汁を再度温めるとやはり味噌の風味が落ちてしまうからです。
しっかりと取ったダシで作った味噌汁は最高のごちそうです。
朝忙しい方は、前日に味噌を入れる前の状態まで進めて鍋ごと冷蔵庫に入れておき、朝は加熱して味噌を溶くだけにしておけば5分ほどで仕上げることができます。

豆腐の八丁みそ汁

豆腐の八丁みそ汁

記事が気に入ったら是非SNSでアクションをお願いします☆