コロナ禍の秋彼岸をどう過ごすか

令和2年秋彼岸日程

本日から秋のお彼岸に入ります。お彼岸の日付は春分の日・秋分の日を中心にして前後3日間、通して七日間となりますが、春分・秋分の日はその年によって異なるため、お盆のように毎年決まった日付というわけではなく少しだけ変わります。
23日が秋分の日となる場合もありますが、今年は22日が秋分の日となるため入りの日も一日早まって19日となります。

今年は土曜日から始まって、21日が敬老の日、22日が秋分の日と、週末から続く四連休となる方も多く、もしこれが通常の年であればお彼岸として親族が集まり、お墓参りをするには最高の移動日程だったことでしょう。
しかしながら本年は新型コロナウイルスの影響により、まだまだ移動に注意が必要な地域がほとんどです。そのため長距離移動ができなかったり、あるいは職場の方針で帰省に制限がある方などもおられ、お墓参りがなかなかできない方も少なくないでしょう。例年通りお墓参りができずに困っている方や、残念に思う方も多いのではないでしょうか。
しかしながらそれほど心配する必要はありません。日本では一般的にお彼岸=お墓参り、という認識が定着していますが、本来のお彼岸はお墓参りが必須というわけではないからです。

では、本来のお彼岸とはなんでしょうか。
コロナ禍で移動しにくくなってしまった秋彼岸、せっかくですからじっくりと学んでみましょう。

お彼岸の起源には諸説ありますが、奈良時代に若くして出家し、仏教を深く信仰した早良親王(のちの崇道天皇)は、政争に巻き込まれて流刑に処され、志半ばで無念の死をとげたと伝えられます。その後皇族の病死や疫病、天災などが相次いだため、春と秋それぞれ季節の節目の七日間にその魂を鎮めるために全国の僧侶に読経させたという記録が『日本後紀』に記されています。
春分秋分の時期は季節の変わり目にあたるため、強い風が吹いたり荒れた天候になることが多く、僧侶が天災が起きぬよう祈る期間として選ばれたのでしょう。
それがやがて一般世間に広まり、各宗派の布教の流れにも乗り、春と秋には死者を供養し善行を行う期間としてお彼岸が定着したといわれます。そのため、仏教国の中でも主として日本で行われている仏教行事です。

春分の日と秋分の日には太陽が真東から昇って真西に沈むため、西のかなたにある極楽浄土を願う気持ちと重なることからこの期間となったという説もあります。

「お彼岸」は仏教語ですが、意味は「向こう岸」です。対してこちら側は「此岸(しがん)」とよびます。
一般的には現世を此岸、極楽を彼岸にたとえて、苦しみの多いこの世から、荒波を乗り越えて安らかな向こう岸にたどりつく、と解釈されます。

そして彼岸にわたるために、仏教の基本的な修行法である「六波羅蜜」を実践しましょう、と説かれます。

「六波羅蜜」とは
1 布施(ふせ)   他人にわけ与えることを惜しまない
2 持戒(じかい)  戒律を保ち、してはいけない悪い行いをしない
3 忍辱(にんにく) 困難に堪え忍び、怒りや恨みに流されず、辛抱強くやりとげる
4 精進(しょうじん)怠け心をおこさず、何ごとにも精一杯努力を続ける
5 禅定(ぜんじょう)坐禅により、おだやかで動じない集中した心を持つ
6 智慧(ちえ)   ものごとの道理を正しく深く理解しようとする

地域によっては、中日はお寺にお参りして先祖供養をおこない、他の前後6日間は自分の修行のために上記の6種類の善行を一日一つづつ積む、と説かれることもあります。
「波羅蜜」は「パーラミーター」というインドの言葉を漢字にあてたもので、意味は「修行の完成」です。つまりお彼岸の期間中にはこれら6種の修行法をはじめとして、特に良い行いを積み、その修行によって自分も「彼岸=向こう岸」、つまり極楽浄土へ近づきたい、と願うのです。
そのためにお寺にお参りして仏の教えを聴き、またすでに彼岸に渡っている御先祖様や亡き人の墓参をして供養し、報恩感謝の念を捧げるのです。

お盆もお彼岸もお墓参りをしてお寺に足を運ぶのは同じなのですが、わかりやすくいえば、どちらかというとお盆は亡き人のためにお参りするのが主であることに対し、お彼岸は生きている私たちのための期間、と理解しても良いでしょう。
私たちが仏の教えにより深く触れて学び、彼岸(向こう岸)に渡れるように努力する期間なのです。

このように、お墓参りをすることは命に感謝し、ご先祖様を尊ぶ行いとして大切ですが、どうしても行けない状況なのに無理してまで断行する必要はありません。上記の六波羅蜜を実践しようと心がけ、自宅のお仏壇に向かって手を合わせればそれでよいのです。
それぞれのお寺でも、地域の状況やお寺の事情を考慮して、例年通りのお彼岸行事を行うのか、あるいは変則的に対応して行うのか、さまざまでしょう。法要参列や、付け届け、お供え物などは事前にお寺からの通知をよく確認しましょう。

また霊園や寺院墓地など、管理が行き届いたお墓ならば心配は不要ですが、田舎などに多い私有墓地の場合は、墓参しないでひと夏放置してしまうと、驚くほど早く雑草が伸びてお墓を覆い尽くしてしまうこともあります。そうした立地の場合は、近所の方に除草や清掃をお願いする、遠隔掃除サービスを利用する、または時期をずらして訪れ作業を行うなどの配慮も必要となるでしょう。

このコロナ禍の秋彼岸、四連休は確かに残念に感じると思うのですが、無理にお墓参りせず、在宅でできるお彼岸の過ごし方、すなわち坐禅や読経、写経などを試みてみるのも良いと思います。また当サイトで常日頃薦めているように、手作りの精進料理を作り仏壇にお供えする修行が最適です。コロナ禍ならではのお彼岸の過ごし方をぜひ考えてみましょう。

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