令和2年2月、新潟県某市の地域青年会にて、曹洞宗の寺族様を対象とした精進料理研修会が行われ、講師を務めてまいりました。
前日から現地入りするか迷っていましたが、今冬はずっと雪が降らず、おそらくこのまま雪なしだろうという楽観的観測により当日の移動としたのが大外れ。なんとこの日に限ってこの冬一番のものすごい大雪となってしまい、慌てて未明に寺を出ました。雪に埋もれるような新雪の高速道路をノロノロ走ってなんとか現地に到着しました。40センチの長くつを履いてきて大正解でありました。
会場は子育て支援を前面に出した施設で、小さいお子さんと大人が楽しく遊ぶための数々の工夫がなされた素晴らしい建物でした。いったん中に入れば外の猛吹雪をすっかり忘れてしまうほどの心地よい環境の中、最新のIH厨房で衛生的な調理実習を行うことができました。
料理教室がうまくいくかどうかの要因として、調理場の広さと、参加者の人数のバランスはとても重要です。狭すぎるとのびのびとした調理はできませんし、手持無沙汰な方が出てしまう上に危険です。今回は非常によいバランスの中で、非常に良い調理ができました。
ご本山の修行ではなじみ深いごま豆腐ですが、実際に作った経験がない寺族さんも多いようです。今回のメインはごま豆腐。時間内に仕上げることができるよう工夫して、交代しながら皆でごま豆腐練り体験を行いました。ごま豆腐だけはIHコンロではなく、ガスコンロと銅鍋、特大の木へらでの練り込み作業です。このちょうどいい高さの、ぐらぐらしないしっかりした台座は、この料理教室を企画してくださった幹事の和尚様の手作り品です。ごま豆腐がうまく出来上がったのはこの台座のおかげであります。
小さいお子様がおられる寺族さまは、連れ合いの和尚様方が遊びスペースであやしてくださいました。何を作っているのかな~、と時折廊下から台所をのぞき込むほほえましい姿を何度も見ることができました。
ごま豆腐の成型作業では、私がお伝えした手順を寺族様たちが独自にその場でアレンジして、さらに手際よく、上手に仕上げることができるやり方をその場で開発して進めていました。さすが!ふだんからお寺で精進料理を出す機会が多い、新潟のお寺のご寺族様だなあ~、と私のほうが勉強させていただきました。
チラシ寿司の具を混ぜ込む作業では、お子さんも楽しそうにうちわであおいで余分な熱を飛ばすのを手伝ってくれました。みんなで楽しく作るとおいしくなりますよね。
あっというまに一汁三菜の精進料理ができあがりました。
五観の偈をおとなえし、皆で出来上がった料理をいただきました。うまくいった点、反省点などをあれこれ話しながら感謝していただきます。お味は・・それはもうご寺族様方のやさしさがギュッと凝縮された、暖かい味でありました。
とてもよい研修ができたと思います。教区長老師はじめ役員の皆様、半年にわたって企画調整してくださった幹事役の老師さま、そして何よりも豪雪の中、ご参加くださったご寺族様各位に対して深く御礼申し上げます。
後日、ご寺族様方から、個別にとても丁寧な礼状が届きました。こうした細やかな気遣いが、お寺の布教には大切なんだよなあ、と改めて感じました。
皆様ありがとうございました。