大本山永平寺参拝 細部の見どころH30版

大本山永平寺

永平寺をお参りしてきました。

最近永平寺にも待望の公式サイトが設けられ、また諸々の観光情報誌等で頻繁に紹介されているため永平寺を訪れる方にとっての情報が増えておりますが、今回はあまり他では載せられていない、知らずにいたらつい気が付かず通りすぎてしまいがちな小ネタ的情報をいくつかお伝えしたいと思います。お参りに行く方の参考になれば幸いです。

永平寺唐門

まずは境内の入口となる1枚目の写真を直進すると、左手に参拝者用の玄関である「通用門」があります。早く参拝したくて、すぐに通用門の階段に進んでしまいたくなるのが人情ですが、ちょっとお待ち下さい。

その通用門の階段を上らずに、右手をご覧下さい。永平寺を象徴する画像としてさまざまな場所で目にする、「唐門」が老杉の木立に囲まれて佇んでおります。

一通り永平寺内部をお参りして、再び外に出てからで良いのでは、と思うかもしれません。しかし、この唐門前は定番の記念写真ポイントとなっており、時間帯によっては非常に混雑します。個人参拝者も順々に交替しながら、譲り合って撮るわけで多少の時間がかかります。時には、お寺さん主催の参拝旅行の檀家さんたちが、永平寺御用達の写真館さんが唐門前に用意した雛壇に並んで、交替交代で記念写真を撮っていることもあります。たまたま自分が帰ろうとするときに、バス何台分もの団体参拝者の記念写真にあたってしまうと、長ければ20分くらい待たないと唐門前が空かないこともあるのです。

ですから、帰る際に唐門前が都合良く空いているとは限りませんので、もし門をくぐる前に空いていれば、先に唐門前をよく眺めてカメラに納めることをお薦めしておきます。

永平寺承陽殿

永平寺の長い階段を最も上に登って左奥にあるのが、道元禅師様や歴代の住職方等をお祀りする霊廟、「承陽殿(じょうようでん)」です。道元禅師の諡号(しごう)が「承陽大師」であることからこの名がついております。

承陽殿には、全国の高僧のお位牌も安置されています。地元のお寺の先代御住職のお位牌も祀られているかもしれません。あらかじめ、お檀家になっている寺の御住職に訊ねてみるのも良いでしょう。

この承陽殿について語るとそれだけで原稿用紙百枚を超えてしまうほどですが、今回紹介するのは承陽殿の正面に獅子が乗った大きな香炉です。その中には真っ平らに均された灰の上に、抹香がジグザグに配置され、はじっこの方から火が少しづつ進み、誰もいなくても常に良い香りに満ちています。

渦巻きの蚊取り線香のように少しずつ火が進んでいくわけですが、これを毎日用意する修行僧は本当に大変で、まさに職人技です。途中で消えることも無く、一定のペースで進むように抹香を押しつけず、フワッと、しかも崩れないように抹香をに配置するのです。
これは「常香盤」「時香盤」ともよばれ、常に香の煙が絶えること無く続くことで、何番目の角まで燃え進んだら2時間経過、といった具合におよその現在時刻を知らせていたのです。

電波時計で一秒もずれることない正確な時に追われる現代、便利ではありますがある意味がんじがらめの窮屈さを感じる時もありますよね。ぜひこの香炉の煙を全身に浴びて、こうしたのんびりしたアナログな時報を今も続ける永平寺でゆったりした時の流れに想いを馳せてみてはいかがでしょうか。

永平寺の台所、大庫院(だいくいん)です。

修行時代、汗と涙がたくさん(包丁で切った指の血も多少は)染みこんだ私にとっての聖地です。

永平寺台所大庫院

ただし、「永平寺の台所」とは言いますが、実際には、いわゆる鍋や釜が並んだ厨房の風景を参拝者が見ることはできません。まあ実際に料理をしているわけですから、衛生的にも部外者がむやみに入ることができないのは当然です。しかし一般の方の中には、「台所がどこかにあるって聞いてたけど、永平寺を一回りしたけどどこにも台所らしい場所はなかったなあ?」と最後まで気づかずに出口に着いてしまう方もおられます。台所内部に入るのではなく、台所の外側の廊下を通るのだ、とまずはご理解下さい。

そして台所がある「大庫院」の廊下に面しているのがこの韋駄天様です。上の額は「法喜禅悦」永平寺の六十七世住職、北野元峰禅師の筆です。食事の尊さやその意義、作法を記した道元禅師の著、『赴粥飯法』(ふしゅくはんぽう)にもある語です。文字通りに法の喜び、禅の悦びと解しますが、料理に限らず、辛く苦しい修行でも、そこに仏法や禅の教えがあればそれは必ず喜びをもたらすものなのです。料理を作っていて、面倒臭いなあと思いながら嫌々やるか、その貴重な役割と意義深さに気付いて、喜びをもって取り組むか、そこには大きな差があるでしょう。日々のささやかな出来事や今日の健康など、何ごとにも喜びを見いだせるように心がけたいと思っています。

永平寺台所の韋駄天

この韋駄天様の前には広くとられた板の間があります。ここで、「僧食九拝」(そうじききゅうはい)という、台所で作った料理を食事場所である「僧堂」へ送り出す儀式が行われるのです。

その広い場所の脇に、でっかいすりこぎ棒がぶら下がってます。

いつのころからか、このすりこぎ棒をスリスリすると料理が上達する!という言い伝え?!が広まり、私など毎朝みんなの数倍は熱心に磨いておりました?!

最近の参拝者は皆さんこの話をよく知っているようで・・・数年ぶりに現地確認したところ、あまりにも多くの方がスリスリ触りすぎたためか、ちょうど触りやすい高さの下の部分が以前よりも色が剥げて木目が出ているような??
このペースだと百年後にはすり減って無くなってしまうかもしれません、スリスリしたい方はどうぞお早めにお参り下さい(o^^o)

ところで料理上達の御利益を求めてか、すりこぎ棒の木の割れ目にお賽銭を無理矢理突っ込んでいく方の多いこと!とりはずす修行僧も大変ですし、すりこぎ棒が傷みますので、棒のすぐ横に賽銭箱がありますのでそちらにお賽銭を喜捨なさった方が良いかと思います。

永平寺すりこぎ棒

さらに永平寺の参拝を終えて出口に至る前に注目して欲しいのは「ひといき坐禅」の小部屋です。永平寺にお参りしてただ順路を進んだだけでは、歴史や伽藍についてはよく見聞できるものの、教えの根本である坐禅について触れる機会が少ないのでは、という観点からつい最近試みに設けられたと、本山にゆかりある布教師の先輩からお聞きしました。

場所は「祠堂殿(しどうでん)」を過ぎ、傘松閣参拝帰路一階の廊下付近、少し廊下から奥まった部屋です。

坐禅専用に誂えられた設備ではなく、普通の小部屋ではありますが、人員に余裕がある日は僧による指導もあるとのことです。せっかく永平寺に来たのですから、お時間のある方はぜひ坐禅を経験してみてはいかがでしょう。(ただし常に準備されているわけではなく、あくまでも試験的な不定期開設のようです。私は永平寺内部の者ではありませんのでこれ以上の情報はわかりません。また永平寺の本分は修行です。参拝に関する過度な問い合わせ等は、修行の妨げとなる場合もあります。当記事を根拠にしての永平寺側への各種問い合わせは御遠慮下さいますよう、どうぞ御了承下さい。)

永平寺ひといき坐禅 永平寺ひといき坐禅

みどころ図

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