誤解されているみょうが尊者の故事

みょうがの味噌汁

◇みょうがの味噌汁の魅力と特徴

みょうがの旬は秋ですが、そろそろ寺の一角から今年の初物が出はじめました。私は初物のみょうがを味噌汁にたっぷり入れて贅沢にいただくのが大好きです。そしてこの暑い夏には味噌をちょっと多めに入れた濃い味の味噌汁を朝一番にいただくことで塩分補給もでき、一日頑張る活力が湧いてきます。

みょうが畑

野生のみょうが

前晩に鍋の中に昆布と水を入れてダシを仕込んでおけば、ほとんど手間はかかりません。味噌汁を丁寧に作って、朝お味噌の香りでほっとするひととき、これこそ忙しいお盆前の時期を乗り切る私の秘訣です。

ダシに使った昆布以外は何も入れずに、みょうがだけをたくさん入れていただきます。みょうがを料理する場合は水に浸けてアク抜きをして土臭さを抜きますが、味噌汁の場合はアク抜きをあえてしない方が味噌汁にみょうがの風味が強く出ます。

◇みょうがを食べると物忘れするというひどい誤解

ところでみょうがを食べると忘れ物をするとか、テストの点が悪くなるとか言いますね。

これはひどい誤解であります。

昔、周利槃特(チューダパンタカ・周利槃陀迦・修利槃特・須梨槃特などとも書きます)という出家者がお釈迦様の弟子になりました。彼はものすごく記憶力が悪く、自分の名前も覚えられないために名札を首から下げていたそうです。説法も理解できずに苦しんでいましたが、お釈迦様は彼に「塵を払い、垢を落とさん」と唱えながら「皆の履き物を掃除する修行」の課題を与えました。履き物の泥や汚れをきれいにするのはとても大変でしたが、彼は嫌がらずに一生懸命それをこなし、やがては自らの心の塵や垢、つまり煩悩まできれいに落ちて悟りの境地に達し、阿羅漢の位を得たのです。

そして槃特尊者の死後、埋葬されたお墓から生えてきたのがミョウガです。

尊者が昔自分の名前を荷なっていたため、「茗荷」と呼ぶようになった・・・という話が日本で「ミョウガ宿」という昔話でおもしろおかしく広まったためにミョウガ=物忘れという不名誉な誤解を定着させることになりました。(ちなみにミョウガ宿というのは欲の深い宿の主人が、金持ちの客にみょうがをたくさん食べさせて財布を忘れていかせようとたくらんだものの、自分が宿代をもらうのを忘れてしまって損をしたという広島県に伝わる昔話です)

しかしですね、私はその昔話に惑わされることなく、本来の槃特尊者の故事の方を重んじるべきだと思います。どう考えても、みょうがを食べて物忘れだの、覚えが悪くなるということが話の主旨ではないでしょう?かんじんの話の主体がそっちのけで、オマケの部分だけをおもしろがっていてはナンセンスです。実際に、科学的な見地からみてもみょうがに物忘れの成分は全くなく、むしろ香りが脳を刺激して記憶力が上がるという説もあるほどです。

難しい仏教理論がわからなくても、お経が覚えられなくても、みんなが嫌がる辛い仕事を挫けることなく地道に続けて悟りを得た、これはもう私たちにとって最高の修行の見本ではありませんか。

またミョウガは「仏のご加護」を示す「冥加」の字も充てられるありがたい食材です。薬味としても独特の香りと食感がたまりません。

少なくとも私は、ミョウガを食べることで槃特尊者にあやかって、毎日のなすべきことを嫌がらず、コツコツと真面目に続けようと思います。だって私なんかこどもの頃からミョウガ大好きでたっぷり食べてますけど試験の成績はいつも良かったですよ?

「ミョウガ=物忘れ」どころか、「ミョウガ=まじめな努力」、のイメージを広めていきたいと思います。

◇みょうがの味噌汁のレシピ

1 水500mlに昆布3~5gを5時間以上浸けて昆布ダシをとります。

2 みょうが4~6本を良く洗い、細切りにします。

3 1の昆布を細切りにします。

4 鍋に1のダシと3の昆布、酒大さじ2を入れて弱火で5分ほど加熱し、アクをとります。

昆布が柔らかくなったらみょうがを加え、すぐに味噌大さじ1程度を溶いて火を止め、余熱でみょうがに火を加えます。

みょうがの味噌汁

みょうがの味噌汁

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